――はいるところを、間違えた?

それが、伊崎莉央親衛隊の最初の会合で、率直に思ったことだった。
俺以外は、皆、女の子のように可愛らしい少年である。
俗に、彼らはチワワと呼ばれるらしい。
確かにうるんだ大きな目などは似ているかもしれない。
俺はさしずめドーベルマンと言ったところか。
目つきが怖い、体格に威圧感がある等々、言われ慣れてきた。

それまでアメフトをやっていた俺は、身長もあるし、体格も良い。
だが中学三年生の終わりの時に、半月板を故障して、復帰できなくなった。
俺の人生からアメフトを取ったら、何も残らない。
そんな思いで、憂鬱な日々を過ごし、ある日音楽室の前を通りかかったときのことだった。
バイオリンの澄んだ音色が響いてきた。
自然と涙が浮かんできて、ああ、生きていたいなと俺は思った。
この世界にはまだまだ俺の知らないことがあるのだから。

その奏者が伊崎莉央だったから、高校入学を機に部活をきっぱり止めて、親衛隊に入ってみた。
そして思ったのが――はいるところを、間違えた?

「一年生だけど、土方様なら、莉央様のこと絶対守ってくれそうだし、親衛隊長は土方様に任せようよ」

一つ上の学年の夕波先輩の言葉で、俺はそのまま親衛隊長となった。
その上何故なのか、二年生になった現在では、親衛隊総括をしている。
人生はどう転ぶか分からないなと、俺は思った。