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「ソラネ、どうかしたの? 研究旅行では、女の人を買いに行けないから、男同士で抜くのが普通なんだけど……まさか、知らない?」
「――え?」

 僕の口からのでまかせに、ソラネがポカンとしていた。

「休暇が一緒というのは、抜き合いをするという意味だから、キスしたけど、嫌だった?」
「……」
「ソラネが知らなかったんなら、悪いことをしたね。ごめんね」
「い、いや、その……」
「いやぁ、なんてね! 知らないわけないよね! ソラネほどのすごい研究者が!」
「っ」
「家族もみんな研究者なんだから聞いてないはずもないし!」
「!」
「知ってたよね?」
「あ、ああ……」
「そうやって僕を焦らして遊んだんだね。ひどいなぁ。もう完全に僕はその気なんだから、責任とってよ。ソラネが僕を誘ったんだから」
「……」

 ソラネが反論できないように、僕は押した。ソラネは顔を引きつらせていたし、目には恐怖が浮かんでいたが、なにも言えないらしい。――彼が帰りたくないと、なによりも思っていることも、僕は知っていた。研究には、こういう事態が込みだとするならば、断れば帰還させられる可能性があると、ソラネは確信したはずだ。その上、自分が誘ってしまったのだと判断している。ソラネが無知な子供であることと同じくらい、彼が押しに弱いことも僕は知っていた。

「最初はソラネからしてよ」
「……あ、ああ」
「一般的な通り、口で!」

 僕もソラネの前にシャワーを浴びたので、バスローブの前を開けて、下着を下ろした。それから寝台に座った。そして膝を開けて、ソラネを待った。戸惑った様子を見せたあと、空音は床に膝をついて、恐る恐るというように、僕の陰茎に触れた。最初は右手で軽くだ。

「早く」
「わかってる!」

 僕の催促に強気な素振りを見せながらも、瞳は恐怖でいっぱいのソラネ。見ているだけで勃起しそうだったが抑えていると、両手で握られた。たどたどしい手つきだったが、ソラネが僕のものを触っているという事実だけで、立ち上がるには十分だった。

「口も早く」
「っ」

 端正な唇を小さく開き、軽くソラネが舐めた。それから意を決したように咥えた。
 ――これが、手とは異なり、驚くほど上手かった。
 仕込まれているようなものではない。天性のものとしかいえない。
 ただ、非常にうまい。そちらに必死のソラネを思わず無表情で見てしまった。冷や汗が出そうになった。しかし……ソラネには持久力がなかった。すぐに口を離して、辛そうに息をしたのだ。

「……下手で悪いな」
「いや、下手というか……ねぇ、もう一回」
「ああ……」

 こうして数度繰り返し、焦れったくて困ってしまった。しかも僕の方は大きくなるわけで、ソラネはどんどん苦しそうになっていき、疲れが見え始めた。もう、ダメだ。次にソラネが咥えた時、限界だったので頭を強引に引き寄せ、僕は腰を振った。

「歯、立てないでね」

 そのままフェラというよりイマラチオに近い形で、射精した。終わったあと、ソラネの唇の端から、白い精液がわずかに垂れた。涙を浮かべて肩で息をしているソラネは――トルコで見た時を少し彷彿とさせる色気をにじませていた。しかし、まだまだだ。

「次は僕の番だ」
「俺はいい。平気だ」
「それじゃあ不公平だよ。平等にすべきだ」
「いいって言ってるだろ」
「ダメだ」

 僕はそのまま床の上で、軽く突き飛ばすようにして、空音を押し倒し、膝を広げさせて、下着を引き抜いた。絨毯のおかげで衝撃はないだろう。抵抗される前に咥えると、ソラネが背をしならせた。知っている。ソラネは自慰をしていない。多分、どこですればいいのかわからないのだ。風呂でもトイレでもいいだろうに。あるいは、PTSD的なものも関係しているのかもしれないが、夢精のみだ。しかし、ソラネは精力盛りの十代半ばだ。咥えただけで、しっかりと反応を見せた。明らかに快楽を怖がっているソラネの様子を見ながら、かなり手加減して、普通に射精させてあげた。純粋に開放感を味わえたことに、ソラネは非常に安堵している様子だった。――計画通りだ。

「次は、僕からするね」
「――次……?」
「入れなきゃ本当に抜きあったとは言えないよ。今はソラネが先だったから、今度は僕から」
「!」

 僕は、今日から永久的に、とりあえずまずはソラネの体を手に入れると決めていたので、一昨日の夕食から、後ろの中の排せつ物を溶かす、市場に出回っていない新薬をソラネに飲ませていた。そのため浣腸する必要がない。そのうちプレイとしてやるにはいいけど。

 そして、指先にだらだらとローションをまぶした。これも出回っていない商品だ。直腸からしか吸収されない媚薬が入っている。そして、その熱は、中で射精されないと収まらない。その上、はじめて射精した人間と長時間接触すると、約五日、平均一週間は、必ず体が熱を持つ。さらに最初の二十四時間は、三時間おきに体が熱を持ち、その後三日は五時間から七時間に一度は熱を持つ。どの熱も、射精されないと、おさまらない。我慢すればするほど熱がたまり、気が狂いそうなほど欲情する代物だ。ゴムをつけてすれば、勿論熱は収まらない。また、自慰をしていくら射精しようが後ろを弄ろうがおさまらない。つまり、僕なしではいられない体にする薬だ。

 そのことを全く知らず、フェラが楽だったせいだろう少し安堵しつつも、まだ恐怖が色濃いソラネ。
 僕も知らないふりで指を入れた。
 最初は一本。きついソラネの中が、緊張からさらにしまっている。

「ゆっくり息して」

 必死に頷き、空音が呼吸した。それに合わせて指を進める。そのまま中で馴染むまで待った。指が馴染むという意味でも、薬が馴染むという意味でも。――反応はすぐに現れた。短くソラネが息を飲んだ。一瞥すれば、瞳にチカチカと欲望が宿り始めていた。だからわざとゆっくりと指を動かした。

「ひっ」

 それだけでソラネの前が張り詰めた。ソラネが汗をかき始め、呆然としているのが分かる。驚愕と快楽で目を見開いたソラネが、混乱したように僕を見た。僕は微笑んだ。だけどもう、ソラネの知る笑顔ではなかっただろう。

「ああああああああああああああああ」

 そのまま前立腺を刺激すると、あっけなく果てた。しかし、すぐにまた大きくなった。それはそうだ。収まらない媚薬なのだから。指をもういっぽん増やし、ローションを増量する。

「たまってたんだね、けど、僕がいれていくまで待ってね」

 そう告げ二本の指を動かすと、ソラネが泣きじゃくった。

「やだ、なんだこれ、まって、やだ、たりなっ」
「ごめん、じゃあ指増やすね」

 こうして僕は、指を三本にした。
 もうローションは十分だったが、一応まぶしておいた。
 ソラネは理性をなくしてしまったようで、ただただ泣きじゃくっている。

「あついなにこれもうやめ、助けっ」
「なにって、SEXだよ」
「うあああああああああ」

 僕はそれから、あまり意地悪せずに、挿入して射精した。
 一気に熱が収まった様子で、ぐったりとソラネが絨毯に顔をあずけた。
 僕が見たかった色気が、そして想像以上に色濃い色気が、部屋中に充満した気がした。
 まだ息を整えているソラネは、無抵抗で僕に抱き上げられて、ぼんやりとしたままベッドに横になった。

「ソラネ、大丈夫? もしも君が必要ないなら、僕に入れる必要はないわけだから、このまま休む?」

 僕の声に、ソラネが小さく頷いた。
 そのまま彼は眠ってしまった。

 あとは三時間後からが楽しい時間の本格的な始まりだ。それまでは、少し我慢すべきだろう。きちんと中で出したから、あとは――思う存分意地悪できる。二時間と少ししたとき、ソラネが目を覚ました。最初は困惑していたように僕を見ていたが、僕がいつもどおりの態度をしたところ、平静を装っていた。そして三時間が経過した頃から、瞳が情欲で染まり始めた。四時間目になるころには、完全に欲情しきった顔をしていた。本人はどうしていいのかわからない様子で、必死で呼吸を整えようとしている。無駄なのに。

「もしかして――相当溜まってた?」
「っ」
「もう一回抜いてあげようか?」

 僕の声に、恥ずかしそうに小さくソラネが頷いた。そこまでそそる。
 しかし怯えさせるわけにはいかないので、陰茎を口で咥えて果てさせた。
 ごくごく普通に簡単にだ。だが――それでは単純に体の熱がよりひどくなるだけだと、勿論僕は知っている。

「ぁ……っ……」
「ソラネ? どうかしたの?」
「……」
「ソラネ?」
「っ、ぁ……ぁ……あつい……体が、あつっ……う、ああっ」

 両腕で体を抱き、ソラネが目を潤ませた。

「――中が欲しい?」
「っ」
「ソラネがいいなら、僕はいいけど、どうする? いれる?」

 震えながらも少し迷った顔をしたあと、また小さくソラネが頷いた。
 僕はこの時も、ごく普通のSEXをした。
 そしてソラネの前を果てさせた直後、中に出して熱を収めてあげた。