【序章】 - 二話





 生徒会と風紀委員会は、代々、険悪な仲だ。
 それはこの、天隆学園が、生徒の自主性を重んじるという風潮に、起因している。
 生徒会と風紀委員会に、権力が集中しているのだ。

 その辺の教職員よりも、ずっと膨大な権力を持っている。
 これは家柄も理由の一つである。
 日本屈指の名家の子息が集まっているから、迂闊な一言で首が簡単に飛ぶ。
 それもあって、生徒間の自治能力に全てを教職員は任せているのだろう。

 この学園にあって、庶民は明確に、下だ。
 ――それが。
 高等部から外部入学してきた、あの忌々しい風紀委員長には、少し当てはまらない。

 天隆学園で最高権力保持者といえる俺に、堂々と意見をしてくるのだ。
 そして奴には、その実力がある。
 卒業してしまえば、どうという事も無く、もう関わりも消えるのだろう相手。
 だが、現在紫峰は、俺と同等の権力を手にしているに等しい。
 庶民といえど、風紀委員長に指名された以上、それはこの学園では絶対だ。




 ……と、ここまでが、いかにも『俺様生徒会長』が考えていそうな、即ち俺が考えていそうな事柄だろう。

 実際の俺は、別段、庶民だからだとか、旧華族だからだとか、そういった部分を気にしたりはしない。

 ただ、俺は負けず嫌いであるから、実力ある紫峰に、負けたくない。
 それだけだ。

 俺は昔から度々、『俺様だなぁ』と言われて生きてきた。
 果たしてそうなんだろうか?
 自分では分からない。
 ただ、自分にも厳しく、そして他人にも比較的厳しいだけだろう。

「時野は、どうですか?」
「もうすぐ終わる」

 俺の言葉に、チョコレート色の髪を揺らすと、奏が穏やかに微笑した。