【序章】 - 三話
その時、勢いよく扉が開いた。
「かいちょぉー、はいコレ」
そこへ入ってきたのは、会計の、高根沢晴真だった。
金色に染めた長めの髪が揺れている。
この学園は服装髪色は自由であるから、洒落た晴真のピアスを責める権利は風紀委員にも無い。
「今日の分だよぉ」
俺の机の上に、晴真が書類を置く。
晴真は時折、寮に持ち帰って書類を片付けてくる。
無論、持ち出し禁止書類は、この生徒会室で行っているのだが。
「ああ」
受け取り、俺は確認のための箱にそれを入れた。
最終チェックは俺の仕事だ。
どこか間延びした晴真の声に頷いた俺は、肩をほぐす。
「じゃあねぇ。今日はチワワちゃん達とお茶会なんだよね」
晴真はそう言い残すと、そのまま出ていった。
チワワ達――と、晴真が言ったのは、会計親衛隊の生徒達の事だ。
この学園では、可愛い容姿の生徒は、チワワと呼ばれがちだ。
なお親衛隊とは、人気者の生徒のファンクラブのような存在である。
俺にも、奏にも、それぞれ生徒会長親衛隊と副会長親衛隊がいる。
それは、書記の、江上孝介も同じだ。
双子の庶務の、一条兄弟も同様である。
孝介は現在、職員室に出かけている。
一条兄弟の兄である、雨唯と、弟の歌唯は、資料を取りに、生徒会室の隣の生徒会資料室に行った。
生徒会のメンバーは全員二年生だ。この春、二年生になった。
この学園では、一年時の秋に引き継ぎが行われる。
時折三年になっても引き受ける生徒もいるが、多くは受験に備えて二年で引退だ。
学園では、今代の生徒会役員は、こんな風に呼ばれている。
俺様生徒会長・腹黒副会長・チャラ男会計・寡黙書記・区別がつかない双子庶務。
……。
俺としては、全員良い奴だと思っているが、あながち否定は出来無いと思う。
王子様風だが奏には腹黒い所があるし、いつも鉄壁の作り笑いだ。
晴真は、下半身がゆるい。チワワと遊んでいるのは、事実だ。
孝介は寡黙というか……無口で滅多に喋らない。
雨唯と歌唯は、愉快犯じみた所もあって、いつも二人で行動している。
しかしこんな生徒会が、俺は嫌いではない。