【序章】 - 六話




 誰もいない生徒会室で荷物を手に取り、俺は寮に帰る事にした。
 寮の俺の部屋は、生徒会長という事もあり、特権で大きな一人部屋だ。
 夕食はルームサービスでビーフシチューを頼んだ。
 その後は入浴し、教科書を眺めてから、俺は眠りに就いた。


 ――翌日。
 午前中は生徒会室で仕事をしていた。
 奏が転入生の迎えに出た為、現在の生徒会室には、俺の他、三名がいる。
 書記の孝介と、双子の庶務だ。
 会計は不在である――本日は、親衛隊と一緒に授業に出る約束をしているとかで、教室に行ったらしい。

 勿論、仕事が片付いている時は、教室で授業に出るのが本分だ。

「「会長」」
「ん?」
「転入生が来るんでしょう?」
「転入生は何年生?」

 双子に揃って声をかけられて、俺は机の上の書類を見た。

「転入生は一年だ」
「「楽しみだね!」」

 明るい双子は、いつも元気である。
 見分けが付かないくらい外見も声も瓜二つではあるが、中等部から一緒である事も手伝い、俺には見分けられる。

 書記の江上は、黙々と書類を片付けている。
 いつもながら寡黙だ。

「よし、行きたくねぇが、風紀と話し合いに行ってくる」

 俺は時計を見て立ち上がった。
 本日の場所は、第三小会議室の予定だ。
 風紀委員長と一対一である。

「「いってらっしゃーい!」」
「……」

 双子と書記が俺を見て、送り出してくれた。
 頷き外へと出て、俺は目的地を目指す。
 廊下を進んでいき、会議室の中に入ると、既に紫峰の姿があった。

 窓際に立っていた風紀委員長は、俺の姿を見ると、片目を細めて向き直った。
 ――この表情、だ。
 いつも紫峰は俺を見ると、この、死ぬほど嫌そうな顔をする。
 俺はそこも気に食わない。

 一体俺が何をしたと言うんだ。
 睨まれる覚えは皆無だ。

 その後お互いに座り、打ち合わせが始まった。