【三】





 悩む内に一夜明け……。
 あまりよく眠れなかったが、僕は授業に向かった。
 1-Bクラスの僕は、転入生とはクラスも違う。

 僕の成績は平均的だ。運動は少し苦手。
 部活や委員会には特に所属していない。
 ――(帰宅部だから、名前だけは在籍している)。

 お昼休みになるまでの間、僕はぼんやりと授業を受けていた。
 気にかかっているのは、転入生への制裁の件だ。
 水上達は、昨夜、『明後日』と話していた。
 つまり明日、転入生への制裁が行われるのだ……。

「……」

 放置していて、良いのだろうか……?
 良いはずが無い。
 だけど、家が僕のせいで窮地に立つのは嫌だ。

 気づくと僕の足は――風紀委員会室へと向かっていた。
 特別棟にある風紀委員会室に、僕は人目を忍んで近づく。
 この棟には、生徒会室と風紀委員会室しか存在しない。
 人気が無い中を進んでいく。
 そして、目指す扉の前で立ち止まった。

 僅かに扉が開いていたから中を見る。
 そこでは、咲間風紀委員長が、一人で執務机に向かっていた。
 端正な顔に真剣な色を浮かべて書類にサインをしている。
 それを見ただけで怖くなってしまった。
 ――やはり、止めようか。
 そう思った時だった。

「入れ」
「!」

 気づかれた事に、僕はビクリとした。
 見れば、顔を上げた風紀委員長が、僕を冷ややかな顔で見ている。

「どんな用件だ?」
「……そ、その……」
「中に入って、施錠してくれ。確か、葛西だったな?」
「……はい」

 ここまで来たのだ。
 僕は意を決して頷いた。
言われた通りに室内に入り、扉に鍵をかける。

「昨日……本当は……」

 それから歩み寄って、僕は告げる事にした。

「……明日、転入生の唯出を制裁するって……水上達が……」

 言いたい事が上手くまとまらない。
 それでも僕は、必死で伝えた。
 すると立ち上がり、僕の正面に立った風紀委員長が、小さく顎を持ち上げた。

「よく話してくれたな」
「……」
「――と、言うと思ったか?」