<2>生徒会長はドS?(★)
各教室見て回り、最後に風紀委員会室の隣にある、風紀委員長室へと戻った。この学館には、会室のほかに長室があるのだ。全寮制だから、各長は、すごい部屋をあてがわれていたりもする。俺はひとりで、後ろにディルドをぶち込んでよがるために、風紀委員長の座を獲得した。大抵寮で俺は、自分で自分を慰めている……!
バイブ、か。
俺は来客用のソファに座り、紙袋をテーブルに置いた。
そして先程押収したバイブを取り出してみた。俺はまだ、振動するバイブを使ったことがない。それにこんなに太いのも使ったことはない。そう、手に入れる手段に俺は困らないのだ。俺の部屋には、押収品の中の、新品の物のコレクションが存在する。
まじまじと半透明の青色のソレを見据える。
今夜はこれに挑戦してみようか……うーん。
扉が開いたのはその時のことだった。
「高河ァ、さっきのお前の言い分、俺様は――……ッ!!」
入ってきたのは、なぜなのか鏑屋だった。何の用だ?
よくわからないが、ちょくちょく鏑屋はこの部屋にやってはくるのだ。そして俺を罵ってくれるのである。しかし俺は今から、報告書を書かなければならない。相手にしている時間はないのだ。
鏑屋はといえば、俺を見て硬直している。何故だ?
無言で見守っていると、静かに鏑屋が扉を閉めた。そして鍵をかけた。本当にどうしたんだ? そして俺の方に歩み寄ってくると、紙袋の中を一瞥してから、ニヤリと口角を持ち上げた。
「へぇ。大層なご趣味だな、風紀委員長様」
「?」
何の話だ? まさか俺のドM妄想がバレたということはないだろう。
困惑して首をかしげた――その時だった。
「っ……!!」
鏑屋が俺を突き飛ばした。ソファの上で派手に体勢を崩した俺は、思わず目を見開いて鏑屋を見上げる。するとあっという間に乗られ、紙袋から取り出された手錠を右手首にはめられた。ガチャリと音がしたと思ったら、もう一方は、ソファの肘掛にかけられた。
「鏑屋……?」
呆然としてつぶやいてみたら、ネクタイを外されて、今度はそれで、両方の手首を頭上で固定された。固定された!? なんだこの美味しいシチュエーションは……!
いや、冷静に考えろ。せいぜい殴られでもするのだろう。俺は、ドMだが、痛いのは嫌だ。相変わらずニヤリと意地の悪い笑みを浮かべている鏑屋はといえば、俺がとり落としたバイブを床から拾いながら、俺のベルトに手をかけた。
え、おい、嘘だろ? ま、まさか……? 俺の願望がかなっちゃったりするのだろうか!?
「震えてるな。怖くて声も出ねぇか?」
どちらかといえば歓喜で俺は震えているし、嬉しい驚きすぎて声が出ない。
しかし呆気にとられて、表情は変わっていない自信がある。
それにしても楽しそうに笑っている鏑屋は一体何を考えているのか。
まぁ嫌がらせだろうが――……望むところだ! 煽ってやろうではないか!
「離せ。冗談が過ぎる」
「冗談? お前、これから俺様に何をされるかわかってねぇのか?」
「ふざけるな――……!! っ」
抵抗して見せようとした時、シャツを乱暴に引きちぎられて、首筋を強く吸われた。
チクリとした痛みに襲われたあと、今度はそこに噛み付かれた。痛い。ちょっと痛かった。繰り返すが、俺は痛いのは嫌なのだ。しかしこのくらいの痛みならば、我慢できないことはないと発見した。
ただそもそも、俺は妄想著しいわけだが、これまで恋人がいなかった。
だからこんなふうにキスっぽいことをされたことはない。
違う体温に少しだけびくりとしてしまった。
鏑屋はといえば、そうしながら、俺の下衣を剥ぎ取り、下着も取り、直接的に陰茎を触ってきた。握られ、体が硬直する。これこそ初めての体験だ。握られ、親指でカリ首を刺激されるうちに、俺の自身は反応し始めた。これは生理現象だと思う。だが、思わず声が出そうになって唇を噛んだ。――鏑屋は、巧い。直感がそう告げた。
相変わらず現状理解があまり上手く出来ていない俺の太ももを、鏑屋が持ち上げる。そうしながら、拾い上げていたバイブを舌で舐めた。艶かしい。ちょっと見惚れてしまうくらい意地悪そうで格好よかった。
しかし、しかしだ。俺は、バイブは未経験だ。未経験なのだ。ちょっと、流石に……
「お、おい……や、やめ……」
気づけば俺は静止の声を上げていた。望むところではあるのだが、
まだ心の準備ができていない。
「こんなに勃たせて何を今更」
せせら笑う鏑屋にはドキドキしたが、そういう場合ではない。ど、どうなってしまうのだろうか、俺は。どうしよう。絶対気持ちいいと思うのだ。鏑屋の前で泣いてよがり狂ったら、色々と俺の生活は終わる気がする。
「ッう、ぁ」
唾液で濡らしたバイブを何のためらいもなく、俺の入口にあてがった。そして先端の他よりも大きな突起部分まで、ゆっくりと押し込んできた。
「うあ、あ」
これは声を出すなという方が無理だった。俺の背筋が震えた。怖かった。大きい。まずい、理性を失う自信がある――!!
「や、やめ……ン……フ……」
俺は自分の体が恐ろしいので、やめてくれるように頼んだ。しかし鏑屋は笑っているだけだ。泣きたくなってきた。その間にもバイブは進み、俺が経験したことないほど奥まで入ってきた。側部についていた突起が、しかもちょうど良く、俺の最も感じる前立腺にあたっている。ど、どうしよう……!
だが――鏑屋は、やっぱり俺の予想通り、Sだった。
「うああああああああ!!」
その時、スイッチを入れられた。振動とともに俺の体は跳ねた。気持ち、いい。どどどどどうしよう! 贅沢を言うならば、もう少し右に動かしてもらえると、もっと気持ちいいと思うのだが……そんなことは口が裂けても言えない。
「随分と気持ちが良さそうだな」
「う、あ、ああっ、や、あ」
「風紀委員長様のこんな姿、誰かに見られたらどうなるだろうな?」
――!! その声に俺は目を瞠った。なんて、なんていいことを言うんだ! 言葉攻め、嫌いじゃない! それにしてもまずい。気持ちよくて、なにせこれまでの長年の願望が叶い、俺は肩で息をしながら、若干泣いてしまった。目尻を涙が伝うのが分かる。
「ひッ」
その時バイブを握り、ゴリゴリと鏑屋が動かした。完全に俺の感じる場所を突き上げられて、俺はもうダメだった。
「や、あ、ぁあ、か、鏑屋、ぁ……っく、あああああ」
「お前にもそんな色っぽい声が出せたんだな」
「フ、ァ、あ」
快楽で頭の中が真っ白に染まっていく。気づけば体をよじって、俺は逃れようとしていた。これ以上気持ちよくされたら、おかしくなってしまう。しかし手錠のせいで動けない。――そう、そうだよ、俺はこういうのを夢見ていたんだよ!! だけど本当に気持ちよすぎて、ちょっとどうしていいかわからない。も、もう出てしまう。うあああ。
俺は射精した。してしまった。
すると飛び散った白液を指ですくい、ニヤリと鏑屋が笑う。
「後ろだけでイけるなんて、随分と風紀委員長様は才能があるみたいだな」
「っ」
一人で開発しまくっていた自分の体を俺は呪った。どうしよう、バレただろうか。俺はドMだが、全校生徒にそんなことを知られたら、さすがに退学する自信がある。バイブの振動がとまった時、俺はソファにぐったりと体をあずけながら、真面目に泣いた。
鏑屋はといえば――まだバイブをつっこまれたままで、制服の前がはだけられ、
手を拘束されている俺を、写メっている。なんということだ。バシャバシャと音がする。終わった。色々と終わった。
「高河、いいざまだな」
「……」
「明日からお前は、俺様の性奴隷な」
「……?」
「ばらされたくなかったら、俺様に従え」
「……!?」
しかし帰ってきた言葉に俺は息をのんだ。ということは、ということは、だ。今すぐばらされることはないのだ。しかも――性奴隷!? それは今後も、またいろいろとしてくれるということだろうか!? なんというか……望むところ過ぎる!
俺の手錠を外した鏑屋は、実に楽しそうに笑うと、俺の上から立ち上がった。
「覚悟しておけ」
そしてそれだけ言うと、風紀委員長室から出て行ったのだった。
その日の夜は、ドキドキしすぎて、俺は眠れなかった。