<4>生徒会長はトナカイ?(★)
それまで毎日風紀委員長室で犯されていた俺は、その日鏑屋に生徒会長室へと呼ばれた。
そう犯されていたのだ。まったく、照れてしまう……。
しかし予想通り鏑屋は大層巧かった。もう俺の体は鏑屋の虜だ。クリスマスまでの恋活計画は頓挫中だが、まぁいい。体は満足している。さてそんなクリスマスイブの今日は、一体何が待ち受けているのだろうか? やっぱり生クリームプレイだろうか……? 期待で胸が高鳴ってしまう。
俺は鏑屋とは違うので、一応ノックをした。すると低い声で、「入れ」と言われた。
中に入ると悠然と微笑む鏑屋がいた。が、俺の視線は、カーテンが締め切られた窓の前に釘付けになった。そこには木馬があったのだ。お、おう……?
「鍵をかけろ」
「……ああ」
言われるがままに鍵をかけた俺は、木馬を二度見してしまった。
生徒会長室になぜ木馬があるのだ? 座る部分には、バイブがついている。頭部には縄がついていた。きっと値が張るぞ。さすがは鏑屋財閥御曹司、指のひとふりでこの程度用意できるのだろう。
「さっさと脱いで乗れ」
「!」
きた。きてしまった。木馬、初体験!!
俺は震えた。もちろん歓喜で。拳をきつく握ってから、おずおずと下衣に手をかける。
そして――……
「フ」
腰を浮かせて、木馬にまたがった。ぎりぎりつま先立ちすれば乗れる高さだ。バイブの先端が、俺の入口に触れる。ゆっくりと腰を下ろそうとした時、強く鏑屋に肩を押された。
「ああっ、うう」
「ちんたらすんじゃねぇよ」
「ひウ――!!」
深々とバイブが中へと突き刺さってくる。中をえぐられる感触――それがどうしようもなく気持ち良い。ゾクゾクと快楽に体を震わせていた俺の手首をとり、鏑屋が綱を握らせた。握った直後、その周囲についていた紐で固定され、俺は手を前に出す形になった。それから木馬の足部についていたハンドルを鏑屋が回すと、木馬の高さが上がった。その上、バイブも中へ中へと伸びてきた。
「あ、あ、あ」
直後、スイッチを入れられる。強い振動が始まり、俺は目を見開いた。容赦なく中をえぐられ、背が仰け反る。逃れ用にも足がつかず、必死で綱を掴むしかない。
「あ、あああっ、鏑屋っ、な、何を……な、なんでこんな……ンあ――!!」
前立腺をゴリゴリと刺激されて、俺は声を上げた。きつく歯を噛むが、直ぐに嬌声が出てしまい、上手くこらえられない。
「クリスマスイブだからな。風紀委員長様には、サンタクロースにでもなってもらおうかと思ってな。練習だ」
「え、あ、ああああ……!!」
「それともトナカイ役の方が良かったか?」
なるほど、この木馬はトナカイ替わりか。納得がいったものの、既に俺の理性は飛びかけていた。強い振動が背骨を伝って全身に響いてくる。強制的に煽られる快楽が怖くなった。
鏑屋はといえば、黒い鞭を持って、楽しそうに笑いながら歩み寄ってきた。そして。
――バシンと音がした。
「うあああああああ」
俺のシャツだけ羽織っている背を、鏑屋が鞭で叩いた。痛みに震えそうになり――……俺は気づいた。痛くないのだ。じわりじわりと熱こそ帯びているが、打たれる箇所から甘い疼きがこみ上げてくる。
やはり我ながらドMだ。それとも鏑屋が手加減してくれているのだろうか? まさかな。
「トナカイに乗った気分はどうだ?」
「……うっ……は、ッァ」
「それともトナカイとして鞭打たれる方が好きか? 好きそうだなァ」
屈辱的である。だが、その屈辱がどうしようもなく嬉しいのだ。俺は蔑まれている。自分でもちょっとこの体勢で喜んでいるのはどうかと思う。その間にも鞭は振るわれ、俺は泣き叫んだ。何度も肩で大きく息をするのだが、中への振動が強すぎてうまくいかない。
最近は鏑屋に貫かれてばかりだったし、バイブを使われたのは最初の一度だけだったから、自分の意志とは関係なしに襲いかかってくる悦楽にまみれた刺激が怖い。怖いけれど気持ちがいいのだ。そして俺は、ここ数日で覚えさせられた空イキをあっさりした。前からはとっくに出ていた。意識が飛んだのはその直後だ。正確には記憶が飛んでしまったらしい。
気づいたとき俺は、鏑屋の上に乗っていた。
「あ、あ……」
唇からヨダレがこぼれているのが分かる。涙もとめどなく流れている。縛られているわけでも何でもないのに、体からは力が抜けきっていて動けない。ただ下から鏑屋に貫かれていることだけがわかる。
やはり冷たい感触よりも、俺は鏑屋の巨大で長いモノの方が好きみたいだ。
「さぁて、本番だ。サンタクロース様。動いてみろよ。動き方は覚えただろ?」
失笑している鏑屋は俺の腰に手を添えると、前後に動かした。
「あ、あ、あ、はっ、ッ」
気づけば俺はそれに合わせて腰を揺らしていて、次第に――無我夢中で動いていた。
「ああああ、ン――!! うう、あア」
「気分はどうだ?」
「や、あっ、く」
「もっと動けよ。サンタクロースにはプレゼントを貰わないとならねぇからな。今日は俺が満足するまでヤるからな」
「うあ、あ、ああああっ、鏑屋、ま、待ってくれ、やめ――!!」
その時下から激しく突き上げられて、俺はまた記憶を飛ばした。
何度か我を取り戻したものの、その晩俺はずっと貫かれ、何度もイかされた。
それは日が昇っても続き、俺のクリスマスの記憶は結局おぼろげになった。
しっかりと気づいたのはクリスマス当日の夕方で、俺は生徒会長室の仮眠室の上に転がっていた。部屋の中についているシャワールームから鏑屋が出てきた時、鉛のように重い体で、俺は細く息をついた。さすがに激しすぎた。本気で、手さえ動かない。
必死で記憶をたどれば、あのあとは角度を変え、いろいろな体勢でとにかく犯し尽くされたのだとわかる。
鏑屋は本当に絶倫だな。そんなことを考えたのを最後に、俺はまた眠ってしまった。
まぁ、ケーキプレイはなかったわけだが……なんだか、もうお腹がいっぱいだ。
そんなことを考えながら、俺は書類仕事をしていた。
もう――クリスマス当日から冬休みは始まっているのだが、生徒会役員と風紀委員会の委員だけは、27日まで雑務があるのだ。クリスマスイブとクリスマスのまる二日休んでしまったので、俺の仕事は溜まりに溜まっていた。必死で先程から、確認してはハンコを押している。少なくとも今日一日くらいは仕事に集中したい。
――奴がやってきたのはその時のことだった。
「よぉ、高河。何勝手に帰ってんだよ? あ?」
「……鏑屋、悪いが仕事があるんだ」
「へぇ? だから?」
「だ、だから、だ。帰ってくれ」
「お前が俺の上で腰を振りながら、『淫乱な高河雪野を性奴隷にし
てください』って言ってる動画を流していいなら、いいぞ」
「!」
その声に、そういえばそのような言葉を言わされた記憶がよみがえってきた。
スマホを手で弄んでいる鏑屋の姿に背筋が寒くなる。同時に羞恥で俺は顔を背けた。俺は言葉攻めはあんまり好きじゃなかったのかもしれない。いや好きなのだが、言わされるのがあんまり好きではないのだと思う。しかも撮影されていたとは。全く気づかないほどに俺の理性は吹っ飛んでいたのだ。
「机の上に座れ」
「……っ……」
なんだか悔しかった。俺はドMだが、根本的には負けず嫌いなのだ。
だから言い負かされるのは嫌いなのだ。鏑屋はといえばニヤリと笑っている。だが、しかたがない。俺は書類をしまってから、立ち上がった。そしてゆっくりと執務机の上に座る。
「下をおろせ」
「……わかった」
俺は素直に脱ぐことにした。こうなったら、さっさと終わらせて仕事に戻ろうと思ったのだ。普段だったら歓喜する場面だが、この仕事が終わらないと俺には冬休みが来ないのだ。冬休みが来なかったら、それこそ鏑屋ともっとできな――……って、俺は何を考えているんだ。冬休みなんだから、鏑屋だって実家に帰るだろう! いや、違う、べ、別に俺は鏑屋ともっとしたいわけじゃなくて……いいや、正直したいんだけれども、ええと。
自分の考えに動揺していた俺の両足を、その時鏑屋が机の上に載せた。
そして持参していたらしきベルトでM字に固定した。
「な、何を……」
「さぁて、何個入るだろうなァ?」
鏑屋の手を見ると、白い球体が連なった代物を持っていた。一つ一つがそれなりに大きい。ぽかんとしていると、それにローションをだらだらとかけてから、無造作に鏑屋が俺の中に押し込んできた。
「ン」
「まずは、一つ目だ。なんだ、余裕そうだな。はーい、二つ。三つ目も続けるか」
「うァあ」
押し込まれるたびに、細い鎖で繋がれた球体が内部で揺れた。それから、四つ目、五つ目――八つ目まで押し入れられ、俺は震えた。
「やめ、やめてくれ……うう、ぁあ!!」
鏑屋はそれを一度、三個くらい引き抜いた。
「ヒあ――!!」
「もう一回だ」
そしてまた中へと入れ始める。押し広げられる感覚に、俺はガクガクと震えた。瞬きをすると涙がこぼれてくる。最近の俺は、涙もろい。
それから今度は十個も中へと入れられ、俺は何度も頭を振った。
「さて、準備はこんなもんか」
「……え、は?」
「まだまだたりねぇだろ、お前」
「――!!」
その時鏑屋が細い棒を取り出した。柔らかそうな素材で出来ていて、先端だけが少し膨らんでいる。なんだろうか。首をかしげそうになった時、鏑屋がそそり立った俺の陰茎に手を添えた。
「う、嘘だろ、おい、待て、待っ――――ああああああああああああああああ!!」
鏑屋は細い棒を、俺の先端にあてがい、ゆっくりと鈴口から中へと押し込んできた。
「あんまり動くなよ。傷が付いたら困るのはお前だ」
「ひぁ、あ、や、こ、怖……っ……ふ」
尿道の中へと、棒が進んでくる。未知の感覚に純粋な恐怖が募ってきた。
怖くて動けない。
だが――すぐにそれは快楽に変わってしまった。
「あ、ああ? あ、あ、ああああ」
進むにつれて、射精感に襲われた。それはすぐに、イキっぱなしの感覚に変わった。
目の奥がチカチカとする。もはや声が出なくなり、大きく口を開けて俺は息をした。
怖い、怖いのだ。なのだが、気持ちよくて、おかしくなりそうだった。
「ひゃ、あ、うあ、あ」
トントンと棒を指で鏑屋がつつく。もう奥まで入りきっていて、それは前立腺を刺激した。涙が止まらない。
「や、やめ……あ……」
無意識に俺は震える手を鏑屋に伸ばしていた。そして気づいたときには、肩に手を回していた。そんな俺の背を、落ち着けるかのように鏑屋がなでる。鏑屋の吐息が耳へと触れた。怖いのは怖いままだったから、鏑屋の制服を必死で掴む。すると鏑屋が笑う気配がした。
「うああああああ!!」
棒の抜き差しが始まったのは、その直後のことだった。ゆっくりとギリギリまで引き抜かれては、また差し込まれる。俺は意識を飛ばしたのでも、記憶をなくしたのでもなんでもなく、その後完全に気絶したのだった。
目が覚めたとき俺は、ソファの上で、しっかりと服を着て寝ていた。
鏑屋の姿はなかった。
かわりに――俺の中には、エネマグラが入っていたのだった。そばには書き置きあって、迎えに来るまで、仕事をしていろと書いてあった。俺は、もう体こそ限界だと思うのに、なんだかそのドSっぷりが嬉しくなってしまい、言われた通りに、しょうがないので立ったまま、書類にハンコを押した。快楽で何度も泣いた。二度ほど果ててしまった。
制服の前がベトベトで震えていたのだが、結局鏑屋は仕事が終わってからも来ず、その日俺は放置されたのだった。ちなみに仕事が終わったのは、深夜の二時だ。俺は、机に手をつき、ついに座り込んだ。気持ちのいい場所をエネマグラが押し上げてくる。もう腰から力が抜けきっていて、俺は立てない。
そのまま床の上で悶えるうちに、俺は眠ってしまったのだった。鏑屋はいい。本当によくわかっていらっしゃる。もっともっと俺をいじめてくれ。
と、思いつつも、快楽にそろそろ体が耐えられなくなりつつある気がしていた。やはりドM妄想はただの妄想であり、実際に体験すると、全然違うのだった。