【第三話】風紀委員会のメンバー






 会議が終わり、風紀委員会室へと戻ると、見回りに出ていた副委員長の東間楓先輩と、ペアで見回りをしていた一年の三馬友介、他には俺と同じ二年の脇坂茅野の姿があった。

「おかえり、委員長。会長とのデートはどうだった?」

 糸のように細い目をさらに細めて、楓先輩が笑った。

 イラっとした俺は、思わずほほを引きつらせて、強張った笑みを返す。

「奴とデートする日が来たら、それは異常事態だ。非常事態だ。それこそ会議をすべきだな」
「だから今、してきたんでしょう?」
「先輩、その冗談はつまらないからやめてくれと、もう何度も俺は伝えたと思うが?」
「委員長は鈍いからねぇ」

 クスクスと楓先輩が笑った。ただ醸し出す雰囲気があんまりにも柔らかいものだから、俺の方も怒る気が失せてしまう。

 楓先輩はこの出自がバラバラな風紀委員の中で、もっとも歴史ある家柄の出だ。

 華族の血を引いているとの事で、確かにどことなく気品がある。物腰も穏やかだ。そしてその柔らかさは榛瀬バ会長にも発揮されるため、強くは注意しないので、先輩ではなく俺が委員長になってしまったという経緯もある。

「見回りはどうだった?」

 それから俺は、三馬を見た。今年の春から風紀委員になったばかりの、高等部からの外部編入生であるから、慣れてきたかが気になっていた。

「は、はい! 本当に、強姦被害があるんですね。男子校なのに……」

 その言葉に、俺は思わず長々と目を伏せて、瞬きをしてしまった。

 この学園は、思春期の男子が押し込められている上、簡単には外部に出られない。その結果、学内で同性同士の恋愛が非常に盛んである。風紀委員は不純同性交友や、無理矢理の強姦被害なども取りしまっている。

「ああ。被害者の保護が優先だが、加害者も決して逃してはならない」

 瞼を開けて俺が頷くと、神妙な顔で三馬がコクコクと首を動かした。

「まぁそれよりかは、親衛隊の制裁の方が多いしヤバイけどなぁ」

 そこへ書類仕事をしていた脇坂が声を挟んだ。

 そちらを見れば、一山片付いていた。脇坂は俺と同じ特待生で、中等部から一緒だ。

「ランキングのせいで、順位が急上昇した生徒の親衛隊新結成の許可願が、かなりの数来てるから、この時期は風紀の仕事も本当増えて嫌になるよなぁ」

 親衛隊は風紀委員会の許可のもと結成されるため、それは事実だ。

 そのため風紀委員会は、親衛隊の解散権限も保持している。

 しかしながら親衛隊は、部活動や委員会と同じ扱いになるため、解散するためには生徒会を通して、理事会に報告し、承認をもらうなどの手続きが必要になるため、一度承認してしまえば、実質解散は困難だ。よって慎重に規則の決定状況などを確認し、不備がないか確かめてからでなければ承認はできない。だが、人気の生徒はそれだけ様々な被害にあいやすいので、事実上護衛もしてくれる親衛隊の承認は、急務でもある。

「悪いな、脇坂。任せる」
「いーってことよ。書類は任せろ」

 気のいい脇坂の声に、ほっと吐息をしてから、俺は自分の席に着いた。