<3>生徒会長は鬼畜だった。★




「じょ、冗談は止めろ……からかうな」
「からかってない。そ、そうか。そうだったのか、まさか綾崎がネコだったとは――俺はてっきり……――そうと分かれば話は早い。抱かせてくれ」
「な」

 俺は言葉に詰まった。だ、だって、である。
 それは――……俺にとっては、念願が叶うということなのだ。
 だが、俺はここに注意をしにやってきたのである。

「一回だけ! 思い出に!」
「た、篁……ふざけ――っ!!」

 篁の顔が降ってきた。そして――俺はあっさりキスをされた。
 目を見開き、思わず何か言おうと口を開いたら、舌が入ってきた。
 歯の後ろをなぞられた時、体がゾクリとした。

 考えてみれば、つい先ほど、イきたかったのに、途中でここに来たわけである。
 既に俺の体は敏感だった。

「ン……っ……」

 舌を絡め取られ、初めてのキスに混乱していると、スルリとネクタイを取り去られた。手際が良すぎる――そう感じながらも、俺は初めてのキスに、不覚にも夢中になっていた。かつ、人生でこんなふうに熱烈に告白されたのも初めてだったため、どうしていいのか分からないでいた。

 シャツのボタンがプチプチと外されているのは分かったが、舌を吸われる度にツキンと這い上がってくる見知らぬ快楽にゾクゾクとしていて、それどころではなかった。

 されるがままになっていると、ボトムの中に篁の手が入ってきた。そして下着の上から俺のアレを撫でた。ビクンとしてしまった。その直接的な感覚で、俺は我に返った。

 ――え、これ、まずいんじゃないのか!?

 腐っても俺は、風紀委員長である。

「た、篁、止めろ」
「抱かれたいんだろう? 俺はお前を抱きたい。恋愛感情はこれから生まれるにしても、思いは同じだ」
「こういうことは、恋愛感情が生まれてからするべきことだろうが」
「いつ生まれる?」
「ふざけるな――っ、ぁ」
「可愛い声だな」
「な」

 耳元で囁かれて、俺は照れた。ガラでもなく照れた。
 しかし、これはダメだと俺の自制心が顔を出した。
 ヤりたいけど! 突っ込まれたいけど! けれども!

「とにかく離せ!」
「嫌だね」
「!」

 篁が、俺のベルトを外して、制服の下を下着ごと下ろした。
 焦って起き上がろうとした俺の手首をすぐに寝台に押さえつけて、残忍に笑う。
 ――この表情の方が、いつも通りだった。

「あ」

 そのまま咥えられて、俺は焦った。篁の口は、温かい。
 最初は含まれて、それからゆっくりと上下された。
 フェラをされたのも、人生で初めてだ。すぐに俺は反応してしまった。

「あ、よせ! 止めろ」
「んー」
「っ、ハ」

 水音を響かせながら、次第に重点的にカリ首を刺激され、その後舌で先端を嬲られた。反り返った俺のソレからは、先走りの液が漏れ始めたと思う。まずい、腰が熱い。

「あ、出る」

 思わずそう言った時だった。

「ひっ!!」

 唐突に篁が、右手の人差し指の第一関節までを俺の中に突っ込んだ。
 それは夢にまで見た行為のはずだったが――俺は恐慌状態になった。
 指一本の大きさなんて、細いバイブの半分もないはずなのに、なぜなのか非常に巨大に思えた。

「え、あ、抜け」
「――力抜けよ」

 篁が俺のアレから口を離して、そう言った。しかし、無理な注文である。
 シャワーでローションは洗い流してあったものの、まだほぐれたままだったので、指はすんなりと入ってくる。進んでくる。だ、だが、体がガチガチになってしまった。

「や、やだ、やめろ」
「今度は可愛いセリフか」
「あ!」

 その時、グッと指を勧められて、一気に根元まで入れられた。
 そして――

「うああっ」

 感じる場所を迷いなく、突き上げられた。俺は嬌声を上げていた。
 ジンと気持ちよさが全身に広がった。
 瞳が潤んできたのが自分でもわかる。

「ここか?」
「……」
「気持ちいいか?」

 羞恥に駆られた。頬が熱くなった。何も言えないでいると、指で何度もそこを突かれた。

「……ぁ……ひっ……」

 なんとか声をこらえようとするのだが、突かれるたびに、さらに揺さぶられるたびに、勝手に漏れる。なんというか――バイブとは全然違った。無機質じゃない動き。温度。それが、尋常ではなく気持ち良い。

「後ろ、好きか?」
「……」
「好きだよなぁ?」
「……」
「なにせ毎日お盛んだもんな」

 続いたせせら笑うような声に、俺は息を呑んだ。
 全身が急に冷え切った。え? 毎日?
 それは、そうなんだけれども、ど、どういう意味だ?

「そういえば、面白いもの見せてやるよ」

 指を引き抜きながら、篁が、保健室に備え付けのモニターの電源を入れた。

『あ、あ、あっ……ン……気持ちいい……』

 そして俺は衝撃を受けた。自室でアナニーしている俺の映像が流れ出したからだ。
 ショックすぎて頭が真っ白になった。え、なんだこれ!?
 呆然としすぎて、篁が、ローションの蓋を開けていることになんて気付かなかった。

「最近実家の会社が、防犯カメラ事業に参入してなぁ。ちょっとテストをしてみたら――いやぁお堅い風紀委員長の意外な姿を見てしまった。あられもない姿を」
「……」
「気持ち良さそうだな、随分と」
「!」

 篁は、言葉と同時に、俺がいつも愛用しているバイブと同じ製品を、無造作に俺に突っ込んだ。色々な意味で俺は泣きたくなった。画面に映っているものと同じである。

「ひ、あ、ああっ……」

 慣れ親しんだ形であり、体はそれが与える快楽を覚え込んでいた。
 ぬちゃぬちゃとローションの音がして、バイブはすんなりと動く。
 だが俺がいつも自分でするのとは違い、篁という他者の手で動いているから、予想ができない。

「うああ……」

 いつもは声をある程度堪えられるというのに、感じる場所を突き上げられるたびに、俺は我慢できずに声を上げた。必死でシーツを掴む。

「綾崎が男お断りなのは調べがついていたからな、これを見てピンときた。いやぁ敵を蹴落す能力はやはり俺が上だな――安心しろ。俺は、お前の反応を見たくて好きだといっただけで、お前のことなんか全く好きじゃないからな」
「う、ぁ……」
「信じたか? 信じたんだろうなぁ。流されてキスされちゃってたからな、あっさりと」

 悔しいが、事実である。だが、そんなことより、問題は映像と――後ろから迫り来る快楽だ。気持ち良い。どうしよう、気持ち良い。

「何度か盗撮してみていたが、なんでお前、バイブ動かさないんだ? まさか怖いとか?」
「うああああああああああああ」

 あっさりと篁が、バイブのスイッチを入れた。
 すると強すぎる振動に襲われて、俺の頭は真っ白になった。

「あ、はっ、……っ、は、はぁ」

 ようやくスイッチが切られた時、俺は泣きながら肩で息をした。
 目がトロンとなっているのが自分でも分かる。

「今も撮ってるからな。さーて、この映像どうしたものか。で? 今の気分はどうだ? 大嫌いな俺に騙されて弄ばれてるご気分は?」
「イれてくれ。つっこんで」
「え」

 俺が思わず本心を告げると、篁が硬直した。