【第三話】交わり(★)
目を覚ました時、俺は自分の中に、長く硬く熱いものが入っていると、漠然と思った。まるで楔で穿たれているような感覚で、俺はぼんやりとしたままで、露骨にその形を感じていた。最奥まで、それは入っている。なんだろうかとゆるゆると視線を動かし――俺は驚愕して、一気に覚醒した。
俺の下衣は開けられており、俺の膝を折り曲げるようにして両手で持っている如月が見えた。そして、如月もシャツを着ているだけで、上着とネクタイを外し、ベルトと下衣は身につけておらず――深々と俺を陰茎で貫いていた。
「おう、やっと目が覚めたのか」
「な、なにを……っぁ……」
獰猛な目をしてニヤニヤと笑いながら、如月は俺と視線を合わせる。
「さすがに蜘蛛の中は気持ちがいいな」
「なっ」
俺が蜘蛛だと確信している様子の如月に、俺は青褪めた。
「ど、うして……どうして、俺が蜘蛛だと……っぅ、ッ、ア」
「蜂は蜘蛛を見分けられる。俺は蜂だ」
「そんな……」
そんなことは、俺は知らなかった。ならば、いくら普通の人間のフリをしても、無駄だったということか? まずはそう考えて、直後俺は、現在蜂である如月に貫かれていることを、その意味を、改めて認識した。
「やめろ、抜いてくれ」
蜂に抱かれるということは、意識を操られ、苗床にされる、卵を産み付けられて、産んだら死ぬと言うことだ。衰弱し、多くは出産時に息絶える。
「やめろ、やめ……如月、頼む、止めてくれ」
俺は必死に哀願した。しかしにやりと如月は笑うばかりだ。
「普段は生意気で俺に反抗してばかりの風紀委員長様も形無しだな。そんなに蜂が怖いか?」
「っ……ああ、怖い。嫌だ。嫌だ……頼む、なぁ、如月、頼むから……」
俺は恐怖から、ついに涙ぐんだ。視界が涙で歪んでいく。強い恐れが、俺の全身を絡め取る。
「嫌だね。お前の中は、本当に気持ちが良くてなぁ」
それは、実際にそうなのだと思う。蜘蛛の後孔の中には、蜂の卵を産むための器官がある。それは蜘蛛だけが持つものであり、蜂に壮絶な快楽を与えると聞いた事がある。
「締まるな、きつい。お堅い風紀委員長様は、どうせ初めてなんだろ?」
「ああっ、うあ、ああァ!!」
その時、ズンと最奥を如月が突き上げた。深い場所を抉るように貫かれ、俺は悲鳴じみた嬌声を上げる。体を絡め取っているのは、恐怖だけではない。残酷なことに、強い快楽もまた、俺を絡め取っている。蜘蛛にとっても、蜂に抱かれるというのは、壮絶な快楽を得られる。蜂の陰茎は生まれつき長く太く巨大であり、蜘蛛の中に精液を放つと、卵の核を産み付けることができる。そして、それは、何度も射精すると卵の形となり、育っていく。即ち、孕んで苗床にされた蜘蛛は、延々と貫かれることとなる。
「ンあ――っ、あァ……ああ! ン――!!」
「相良、お前は今後、俺が求めたら、逆らえない。いいな?」
「あ、ハ……」
「それと、俺に抱かれるとき、お前は余計なことを考えず、ただ快楽だけを拾え。この二つは、俺からの命令であり、お前の意識は逆らえない。ああ、俺様に抱かれるなんて、最高に幸せだろ? 俺の卵を孕めるなんて、誉れだろ? お前は運がいい」
如月が俺に残酷な言葉を放った。意識の統制権も、体の統制権も、この瞬間に俺は如月に取られてしまい、ポロポロと泣く意外、できなくなった。
「う、ァ……ああっ、あ……気持ちいい、気持ちがいい。あ、あ!」
俺の意識が、快楽しか拾わなくなる。如月が抽挿をはじめ、俺の結腸を刺激する度、頭が痺れたようになる。俺の陰茎は反り返り、先走りの液を零している。内部は、蜘蛛特有の器官から、愛蜜が零れ落ちてきて、ぬちゃりぬちゃりと音を立て、蜂の動きをスムーズにする役目を正確に果たしている。
ただ、内心では、どうしても嫌だった。その恐怖が、俺の口をなんとか動かす。
「た、頼む、頼むから。なんでもす、だから、頼むから、卵だけは止めてくれ。止め……ああああああ、待って、そんなに動かれたら、ああ、イっちゃう、うぁああ」
ガンガンと激しく抽挿され、俺の陰茎は白濁とした液を飛び散らせた。呼吸が苦しいほどの快楽に飲まれている。だというのに如月の動きは止まらず、追い打ちをかけるように、俺にさらなる絶頂を与えた。今度は、俺は内部だけで果てた。すると俺の内部が蠢き、巨大な如月の質量を締め上げた。
「さて、そろそろ産み付けてやるか」
「嫌だ、それだけは嫌だ。ン――あ、あ、あ!」
如月は、愉悦まみれの表情で、俺を見ている。俺が喘ぐ度に、楽しそうな顔をする。
俺はすすり泣きながらも、快楽に耐えられず、声を上げる。
「出すぞ」
「いやぁあああああ」
中に、如月の精液が放たれた。長々と射精され、内部が熱くなる。結合部分からはダラダラと、愛蜜と精液が混ざり合ったものが垂れていく。蜂の射精は長いと言われている。そして、それが触れた時、蜘蛛の特有の器官は快楽を覚えるそうで、その知識の通り、俺は絶大な快感に襲われ、再び中だけで果てた。号泣しながら、俺は喘ぐ。
「ああ、ァ……っ……あ、あ」
「これで卵の核ができた。明日から毎晩抱きに来る。覚悟しておけ、お前はもう俺に逆らえない。体を差し出せ」
「う……うう……」
「ああ、そうだ。学園では今まで通り、強気の態度を許してやる。男前の風紀委員長様は、今まで通りでいいぞ。これもまた、俺の命令だ。お前の意識も体も、その通りに動く」
ずるりと陰茎を引き抜きながら、如月が笑った。
俺はそれを聞きながら、快楽が強すぎて、気絶した。