【九】俺、墓穴を掘った!(★)
それから――勇者は、服の下から手を入れて、俺の乳首を弾いた。
俺が魔王さまに話した嘘報告のとおりだった……恥ずかしすぎて泣きそうだった。
「ま、待ってくれ、ヴァレン、違う、違うんだ……!」
「ん? 他にもっとされたいことがあるのか? なんでも希望は叶えるぞ!」
「そうじゃなくて! っ、ァ……あ!!」
つままれた乳首から魔力を注がれて、俺は背をしならせた。
どうしよう、気持ち良い……。
「もしかして、早く魔力を食べたいのか?」
「へ? う、うん」
気持ち良すぎて上手く考えられず、俺は曖昧に頷いた。
その間に、するりと服を脱がされていた。さらに床に座らせられた。
そして――勇者も服を脱いでいた。勇者は寝台に座ってる。
「ソーダに口でしてもらえるなんて……幸せすぎて怖い」
勇者はそうつぶやくと、俺の頬に両手を添えた。
……――?
俺はそこで我に返り、ハッとした。違う、やらない、そう言おうと口を開けた時だった。
「っ、う、く」
後頭部に手を回され、俺は……勇者の巨大な陰茎を口に押し込まれた。
既に勃っていた。目を見開く。口の奥までそれは入ってきた。
「69もしたいけど、今回は、俺のを咥えてるソーダの顔が死ぬほど見たいから、この体勢で我慢してくれ」
「!?」
「あとですぐに希望は叶えるからな!」
「!!!? っ、うぐ、ン……」
さらに少し勇者のものは大きくなり、硬くなった。
思わず俺は手を添えた。抜こうと思ったのだ。だが、勇者が俺の後頭部に手を回しているため、それは叶わなかった。どうやって抗議しようか悩んでいた――その時である。
「!!」
俺は目を見開いた。勇者の陰茎から、次第に魔力が流れ込んできたのだ。
こ、れ、は……先ほど俺が魔王さまに嘘報告した事柄と同じである。
ただその事実の恥ずかしさよりも、俺は、瞬時に全身を駆け巡った強い魔力と、それがもたらした快楽に、頭が真っ白になった。
最初に乳首を触られた時と比べたら、ずっと弱いはずだ。
だが、それが逆に悪い。今回は、くすぶるように、次第に体が熱くなっていく。
だんだん体の中が、快楽で満杯になっていくのだ。
舐めるだけで、俺は果ててしまうのだ。
「っ、ふぁ、はっ……ン……」
「くっ、ソーダの口の中、本当にすごい……そろそろ出そうだ……離してくれ」
俺が限界だと思った時、息を少し荒くしながら、勇者が言った。
ホッとして、頭から手が離れた瞬間に俺は口を離した。
結果――俺の顔が濡れた。最初は何が起きたのかわからなかった。
すると勇者が、満面の笑みで俺を見た。
「希望通り、顔射したからな! もっとして欲しいことがあったら言ってくれ!」
俺は呆然とした。頬を伝っていく液体を、指ですくう。勇者が出したものだった……頭が真っ白である。そばにある姿見を恐る恐る見れば、俺の顔は白液で濡れていた。思わず硬直していた俺を、今度は勇者が抱き抱えた。そして――背面座位で挿入してきた。
「!!!」
手際が良すぎて、気づいた時にはもう繋がっていた。
魔族の後孔は性交用だから、慣らす必要などはないのだが、急にそうされたら、驚くなという方が無理だった。きつい。衝撃で息ができなくなった。なにより、たった今出したばかりのはずなのに、勇者のそれはもう硬度を取り戻しているらしかった。
「あ!」
その状態で、乳首をつままれた。指先から、またビリビリと魔力が流れ込んでくる。左耳の後ろを舐められて、思わず腰を動かすと、続いて耳の中に舌が入り込んできた。水音がする。
――だめだった。全身が性感帯になってしまったかのように、勇者の魔力に絡め取られていた。俺は震えながら泣いた。体の中にもどんどん快楽に変換された魔力が注がれていく。どこもかしこも気持ち良い中で、巨大な勇者の存在感をはっきりと内側に感じた。たまに揺さぶられる。
「いやっ、いやだっ、いや、いや!」
気持ち良すぎて俺は叫んだ、もう気が狂ってしまいそうだった。
「――いや、って言わないでくれ。傷つく」
「あ、ああっ、うあ」
「なぁ、ソーダ。『いい』って言ってくれ。気持ち良いって」
「いい! いいよっ、うあ、ああああああ、だめだ、俺、うああああ、気持ち良い!」
俺は無我夢中で叫んでいた。快楽が強すぎて頭を振る。髪が揺れた。
ただ、強いといっても、勇者が調整しているのか、理解できる快楽だった。
それが逆に辛い。果てたいという思いが強くなる。
「お願い、ヴァレン、イかせてくれっ!」
「っ!!」
俺が必死に言った瞬間、勇者が俺の中に放った。その時、ちょうど感じる場所を突き上げられて、俺も果てた。そのまま、俺は勇者の腕の中に、ぐったりと倒れこんだ。
「わ、悪い。あんまりにもソーダが色っぽすぎて、つい出してしまった……」
「……」
俺は、我ながらうつろな瞳でそれを聞いていた。
「早かったよな……」
「……? 長かっただろう」
「そ、そうか?」
俺には悠久の時のように感じたんだからな! 長すぎてむしろ気が狂うところだった。
そう思っていたら、勇者は一人で「良かった、早漏だと思われなくて」だとか、ぶつぶつと言っていた。それを聞いているうちに、俺の意識は睡魔に飲まれた。
すると――再び目の前に魔王様がいた。
「して、『実際にやった感想』を聞かせてくれ」
「!!!!!」
「勇者の結界の中を見られないというのは方便だ」
俺の嘘は、バレていたのだ……さ、さらに、今の行為を見られていた……。
俺は真っ赤になった自信がある。瞳に涙が浮かんでくるのがわかった。
何を話せばいいのかわからない。
俺が答えられないでいたその時――ブツンと音がした。
急に体が現実に引き戻され、俺はパチリと目を開けた。
すると不機嫌そうな顔の勇者が視界に入った。
「強制的に遮断した」
「!」
今回だけは本気で助かったと俺は思った。
「次に魔王と密会したら許さないからな。魔王の方を! ソーダは悪くないからな! なんなら今からもう魔王を討伐に行ってきても良い!」
「ま、待ってくれ。討伐はやめてくれ!」
「……」
「ただ、助かった……遮断してくれてありがとう」
俺がポツリというと、勇者が短く息を飲んだあと、俺を抱きしめた。
そして――俺は気づいた。
現在、先程とは体勢が変わり、俺は正面から勇者に抱きしめられているのだが――いまだに勇者と俺はつながっていた。勇者のものは、俺の中に入ったままだったのだ。
「っ、あ」
「もう一回しよう! 今度は、魔王になんて絶対に見せない!」
その日――俺は、勇者に抱き潰されたのだった……。
どうしてこうなった!