【十】俺、お願いする!(★)


 その後俺たちは、王子のケガが治ってから、魔王城への旅を再開した。
 俺は、困っている。
 ――あの赤面してしまう一件以来、体をつないでしまったあの日から、勇者のスキンシップがあからさまに激しくなったのだ。今も、勇者は俺を後ろから抱きしめているのだが……その手は、俺の胸の突起を、服の上からなぞっている。

「や、やめ……」
「なんで?」
「今は、野宿のテントを張る準備を……」
「そうだな。テントを設営したら、たくさんできるもんな。フェラ」
「……」

 俺は、羞恥で涙ぐんだ。
 勇者は……俺が勇者のものを咥えるのが好きだと勘違いしているらしい。
 あの日から強気で強引になった勇者は、俺に咥えさせるのが、俺への優しさだという間違った考えを抱いているらしいのだ。そして俺は、勇者のものを口に入れるたびに、そこから注がれる魔力だけで、いつも放ってしまう……。

 勇者の手が、下衣の中に忍び込んできた。
 びくりとしていると、ゆっくりと撫でられた。
 しばしそうされ、俺は思わず勇者を見た。すっかり快楽に慣れてしまった俺の体は、もう出したいと訴えている。

「さ、テントをはるか!」
「っ」

 しかしそう言うと、勇者はテントを設置し始めた。
 俺は体の熱をなんとか押さえ込んだ……。

 さて、その夜も――俺たちはSEXした。
 毎夜、旅を再開してから、していない日は一度もない。
 俺の体は、すっかり勇者にほだされていた……。

 それに――どんどん気持ち良くなっていて、俺は困っている。
 これは勇者が、俺に最適の量の魔力に調整してくれているからなのだ。

 最初は激しくて強すぎることもあったが、今は強くもなく弱くもなく――純粋に気持ちが良いのである。

 手をつなぐことや、腕枕で喜んでいた勇者はどこへ行ってしまったのだろうか……。
 ただ、本質は変わらないようで、「69クリア!」だとか言っていた。
 俺は、それが体位だと、勇者に身を持って教えてもらったのだったりする……。

 さて、エズリダの森で現在は野宿をしている。
 次の街まで距離があるため、節約をしようという話になった。

「木苺をとってきてくれ」

 魔術師がそう俺に言ったので、俺は頷いた。
 一応今は、旅の仲間である。勇者御一行様に加わったつもりは毛頭ないが、協力くらいは俺もする。その程度には、このメンバーにも慣れてきた。

 勇者は川に水を汲みに行っていたので、俺はひとりで木苺取りに出かけた。
 このあたりには、滅多に魔物も出ないようだった。
 気配が全くない。
 俺は巨大な水たまりを踏みながら、安全な場所で良かったと思った。

 ――そして、足を踏み出そうとして、硬直した。
 見れば、水たまりが浮かび上がり、足首に絡みついていた。え?
 焦る俺の前で、その水たまりは大きな姿に変わっていった。
 スライムだった。スライムは、気配を消せる魔物なのだ。

「や、やめろ!」

 思わず叫んだが、魔物は知性がないから言葉を理解したりはしない。
 そのまま俺は、スライムに正面から絡め取られた。
 ドロドロとしたスライムに身動きを封じられたのである。

 服が次第に溶けていく。
 皮膚を粘着質な液体がはっていく感触は、全身を舐められているみたいだった。

 微振動していて、あらわになってしまった乳首や陰茎をすっぽりと覆われた俺は、涙ぐんだ。ヌルヌルする。

 それが――絶望的なことに気持ち良かった。
 勇者に開発されきっているせいだ。勇者のバカ! 俺は責任転嫁して、現実逃避をしようとした。だが、そんなのは無理だった。動けないのに、全身を刺激されている感覚で、すぐにゾクゾクとした快楽が背筋を這い上ってきた。

 スライムは、全体に強い魔力を含有しているらしく、触れ合っている箇所すべてが熱い。

「あっ、あ、た、助けて! 助けて、ヴァレン!」

 俺は気づくと、夢中で勇者の名前を叫んでいた。
 ここにはいないというのに、ほぼ無意識にそうしていた。

「ああ。すぐに助ける!」

 だが、そんな声が響いた。涙ぐんだまま視線を向けると、勇者がそこに立っていた。
 ほっとして息を吐いたら、一緒に俺の口からは嬌声も漏れた。

「ぁ、っ、うう」

 早く助けて欲しかった。だが――勇者は動かない。
 じっと俺を見ている。

「ヴァ、ヴァレン……っ、ぁぁあ、ああっ、お願い、助けて……っ!!」

 俺を見据える勇者の視線が恥ずかしい。俺は腕もスライムに拘束されているため、手で口を押さえることもできず、喘ぐ姿をただただ晒しているしかできない。その間にもスライムが、俺の後ろの双丘を犯そうとするように這い上がってくる。ヌルヌルしたものが、中へ入ろうとしてくる。

「や、やだぁっ、あ、入っ」
「――さすがにそれはダメだ」

 勇者はそう言うと剣を振った。するとスライムが飛び散って、地面の上で溶けていった。
 ぐったりとした俺を、勇者が抱きとめた。
 その体温に、俺は涙した。

「な、なんですぐに助けてくれなかったんだ……」
「エロすぎて……ずっと見ていたくなるほどだった。それと……」

 そう言った勇者は、服が溶けてしまった俺の肌を眺め、快楽を煽る手つきで、俺の腰を撫で上げた。すると一気に、俺の体は、熱を思い出した。

「あああああ、体が熱い。出したい、やだっ」
「――どうして欲しい? ソーダ、お願いしてくれ。俺、ソーダにお願いされてみたかったんだ」
「い、いれてくれ」

 俺は恥も外聞もかなぐり捨てて頼んだ。
 すると勇者は口角を持ち上げて、俺の体を地に下ろした。

「四つん這いになってくれ」

 芝の上で言われた通りにした俺は、直後、腰を掴まれ、後ろから挿入された。

「ああああああああああ」

 ガンガン突かれ、求めていた刺激を与えられて、俺は悶えた。
 気持ち良い。膝が震えて、上手く体制を保てなくて、前に倒れこむ。すると腰の上に体重をかけられて、身動きを封じられた。尻だけ突き出す形で、深々と貫かれる。右手では陰茎を握られて、激しくしごかれ、俺はすぐに果てた。

 一息ついたのだが――勇者はそれだけでは止まらなかった。

「あっ、うあ、あ、あああっン――!!」

 俺はもう果てたというのに、そのまま獣のように、何度も何度も勇者が腰を動かした。勇者はまだだったのだ。だけど、俺はイったのに。すぐに俺の体もまた熱くなった。勇者が魔力を込めたからだ。全身が熱くなり、汗ばんだ。髪が皮膚に張り付く。荒い息遣いがどちらのものなのか、俺は分からなくなった。肌と肌がぶつかり合う音に恥ずかしくなる。

 こうしてその日は、外で、獣のように何度も交わったのだった。