【十一】モブを連れ帰る(SIDE:セギ)




 俺の家に連れてきたモブ。
 モブはキョロキョロとしている。そこには笑顔がない。笑っていないとそれはもう男前である。ああ、啼かせたい。

「甘いのは好きじゃないって言ってたな。コーヒーで良いか?」
「あ、お構いなく」
「座ってろ」

 横長の二人がけのソファに促し、俺はコーヒーを淹れた。
 ちょっともう我慢ならない。欲しい。カップを二つ手に、洒落た私服姿のモブの元に戻る。

「有難う、セギ神」
「なぁ、モブ。そろそろ名前、教えてくれよ」
「え、だ、だから、モブで良いって――」
「俺が嫌なんだよ」

 俺はカップをテーブルに置いてから、隣に座って距離を縮めた。

「二人きりだな」
「そうだけど、本当、天国がここか……」
「天国、見せてやろうか?」
「もう見てる」
「――お前さ、二人きりっていったら、普通する事は一つだろ?」
「はぁ……? あ! 感想を存分に語って良いって事か!?」
「バカが。違う。お前、上? 下?」

 率直に尋ねながら、俺は更に距離を縮めて、モブの肩に手を置いた。

「あ、あの?」
「タチ? ネコ?」
「え?」

 目を見開いたモブは、漸く状況を理解したのか、瞬時に真っ赤になった。
 あーもう本当、艶っぽすぎるだろ、俺の推し……。
 推しっていうか、やっぱもう、俺は恋してるわ。

 モブの肩を押しながら、俺は彼のベルトを引き抜いた。唖然とした様子のモブが、ソファに背を預ける。

「ヤらせろ」
「!!」

 瞳を潤ませたモブは、赤面したまま、唇を震わせている。
 これは――あとひと押しだろう。押し流してくれようぞ。

「なぁ、モブ。お前俺の事、好きなんだろ?」
「そ、それは……そ、そうですけど、で、でも、それは、だから、意味としては――」
「物語想像者では無い俺は、無価値か?」
「違! そういう事じゃ、え、でも――んぅ」

 そのまま俺はモブの唇を奪った。モブの瞳に艶が宿る。俺はそれを見逃さない。