【二十五】退屈な結末(SIDE:リアス)




「王国との和平の象徴として嫁ぐ事が決定していた第三皇子シノン殿下を害した罪で、拘束致します」

 その日、俺に衝撃的な宣言がもたらされた。
 直前まで俺の隣にいた騎士団の副団長が、俺に剣を突きつけてそう宣言したのが始まりだった。当初は意味が理解出来ず、暫しの間思案した末、俺は理解した。

 ――なるほど、神様、か。王国の縁者だったという事か。

「言い逃れは出来ないぞ、リアス」

 他の騎士達も全員が俺に剣を向けている。団長である俺に、これまで従順だった部下達は、既に兄である皇太子殿下に掌握されているようだった。訪れた兄は、冷酷な顔で俺を見ている。

「随分と退屈な結末だな」
「嘆かわしい事だよ。血を分けた弟が、異母とはいえ、大切な末の可愛い弟を毒牙にかけるなどと」

 兄はそう述べたが、その瞳は笑っていた。きっと心の中では、愉快でたまらないと思っているのだろう。嘆息し、俺は剣を抜いた。その場に緊迫した空気が流れる。副団長が皇太子殿下の前に出た。が、俺は血を絶やすつもりではない。

 自分の幕引きは、自分でする。それだけの事だ。

「待――」

 兄が何か言おうとしたが、俺は嘲笑し、己の剣で、自分の首を深く切った。血が吹き出ていく。ああ本当に、退屈な結末だ。どうせならば、ムメイの首を眺めたかったものである。名を呼ぶ価値もない、無名の愚弟の、あの綺麗なかんばせを、飾っておきたかった――それが、俺の最後の思考である。きっと俺は、地獄に堕ちるだろう。俺には、神は不在だ。