10:番外編(謎)〜骨折編〜
それはそうと、俺は骨折した。
騎士団の演習中に、川に落ちそうになって手を突いたら、ボキリだ。
ミカが治療を得意とする召喚獣を喚びだしてくれて、怪我事態はすぐに治った。物理的には問題が無くなったのだ。ただ、体にはダメージ(笑)が蓄積されているそうなので、念のため包帯を巻いて、大人しくしていることになった。実際、痛みはちょっと残っている。
椅子に座り、左太股の上に右の足首を横に乗せながら、俺は、演習風景を眺める。
今では、釘バッドも一つの武器として普及している。
なんだか抗争前のヤンキーの集団みたいになっている。
そうというのも、俺の領地で、モヒカンが流行っているからだ。意味が分からない。まぁ人は見た目じゃねぇしな。
そのまま夕暮れになった。遠目に肺を説いた青に見えるや山の上に、橙色、黄色、白と透けていく空が見える。
俺の領地にそびえ立つビル群の夜景がもうじき見えるはずだ。
ああ、今夜の夕食は何にしよう?
高架下を歩きながら、羽織った学ランの下で、怪我をした方の手に触れてみる。
――こういう時、カノジョが欲しくなるんだよな。本当。
だが家に帰るといたのは、当然カノジョじゃねぇ。どころか女じゃない。
ミカだ。
「その怪我でどこに行っていたんですか!? いくら私の治療が天才的とはいえ、だからその、し、心配……今夜の食事は、片手でも食べやすいグラタンです」
「おぅ、悪いな」
「カイトー、先食べてたぞ」
アオサが、アイスコーヒー(俺が取り出して冷蔵庫に入れておいた)を飲みながら言った。もうここのところ、この二人が俺の家にいない日の方が少ねぇな。俺は煙草が吸いたくなってきた。外見年齢は兎も角、とっくに二十歳は超えているんだから、吸っても良いよな。が、キシリトールの清涼菓子を食べてやり過ごす。
それより眠い。腹も減ってるけどな。
「食べさせてやろっか?」
「いらねぇよ」
アオサに返し、俺はミカからスプーンを受け取った。本当に、ミカは使える。使おうと思えば。馬鹿とミカは使いようだ。有能なパシリだ。なんてな。今じゃ感謝することもあるし、愛すべき馬鹿だと俺は思っている。
「味はどうですか?」
「美味い」
「そうですか。知っています」
なら聞くなよ。こういう言葉は時に、若干ウゼェと思うこともあるわけだ。
怪我のせいか、なんか俺ピリピリしてんな……。
食べ終えた俺は、歯磨きをしてから、赤い扇子を取り出して扇いだ。夏だ。暑い。
こういうときは、ぱーっと花火でもやりてぇな。
そう思っていたら、花火が宙から落ちてきた。
「良いなカイト。花火か」
「やってあげなくもありませんよ」
こうして三人で花火をすることに決まった。
アオサが景気よく打ち上げる脇で、俺とミカは線香花火をしている。
束ごと火をつけたが、すぐにぼとりと火が落ちた。
遠くから蝉の鳴き声がする。
最初の夏は、この世界にも蝉がいんのかと驚いたんだったなぁ。
俺は花火に飽きたので、かき氷(カルピス味)を手に、アオサがあげ続ける花火を眺めた。
その日の夜は何故なのか、その後怖い話しをする流れになり、これぞ夏という感じで一日が終わった。
まぁ、こんな日もある。