11:番外編(謎)〜風邪編〜
悪いこととは続くもので、俺は風邪を引いた。
しかも――なんと、こんな日に限って誰も珍しく捕まらない。いつもは押しかけてくるくせにな。あー喉が痛ぇ。目眩がする。俺は冷えピタ的なものを取り出した。それをはり、耳で測る体温計を取り出す。39.9度。絶賛熱は上がり続けている。こーいう時は、ミカのありがたみ(笑)が身にしみる。
この際アオサでも良い。
誰か俺をベッドまで連れて行ってくれ。現在俺は床の上に倒れている。ついに歩けなくなって、ひんやりした床に頬を預けたのだ。
「カイト――いるか?」
しばらくそうしていると、声がした。
キセだった。
「……!? 床で何を!?」
「丁度良かった……ベッドまで連れて行ってくれ」
「い、いいけど、誘ってるのか……?」
「馬鹿か。風邪だ!」
ちなみに風邪は、この大陸にも存在する。正確には、星屑波感冒という。
「馬鹿は風邪を引かない、が、祖父の名言だったんだよな。カイトの世界の言葉だろう?」
「ああ……てか、のど痛ぇからあんまり喋れねぇ」
「わ、悪い――そうだ!! スリオロシリンゴなら俺も作れるぞ」
「おー……!」
実は俺、林檎はあんまり好きじゃない。しかし、風邪で弱っているせいなのか、キセの行為が非常に優しく思えた。何よりベッドまで運んでくれたのが有難い。
それから横になって数分――? 次ぎに目を開けたとき、場どの外は青空から星空に変わっていた。そして、ベッドに両腕を預けて、キセが寝ていた。……ついていてくれたのか。机の上を見れば、すり下ろした林檎がのっていた。折角だから起きようとすると、キセが身じろぎをした。――!! 起こすのは気がひける。暫く見ていると、ビクリと肩が揺れた。
「……あ、カイト。起きたのか」
「悪い、起こしたか?」
「いや。少しは楽になったか?」
「ああ、大分。ありがとうな」
「お礼にキスして貰っても良いか?」
「駄目に決まってんだろ」
そんなやりとりをした。キセは良い奴だなと俺は思った。友人になれそうだ。向こうは恋人希望だそうだが……。
翌日もキセは様子を見に来てくれた。そして祖父ちゃんが残したというレシピ集かあら、なんとおかゆを作ってくれた。現地人なのにすげぇ。
さて俺だって寝てばかりはいられない。風邪薬のせいですごく眠いが、本日期限の書類がいくつかあるのだ。忘れたふりしようかな。悪くねぇな。その時キセが言った。
「何か仕事があったら手伝うぞ?」
なんていい下僕なんだ。俺は感動した。ただのゴミ処理場じゃなかったんだな。ちょっと認識を改めようじゃねぇか。俺は、今日やらなくても良い書類までキセに渡した。ルークは笑顔で引き受けてくれた。
あーそれにしても眠い。頭がぼーっとするほか、瞼が本当に落ちてきそうになって、目を細めてしまう。
「カイト……頬なら良い?」
「あ?」
うとっと来た時、右頬に柔らかい感触がした。
「っ!!」
眠気が一気に吹っ飛んだ。なんとキセが俺にキスをしたのだ。
「何しやがる、馬鹿野郎!!」
「悪い」
その翌日、俺の風邪は治った。