【7】体が蕩ける。(★)
「ぁ……」
宿の部屋に入ってすぐ、抱きしめられて、僕はキスをされた。柔らかな薄い唇が触れた時、僕は息を詰めていて、下唇を舐められた瞬間、思わず声を出していた。優しく僕の腰を抱き寄せた暁さんは、それから深く僕の唇を貪った。舌を甘く絡め取られると、ツキンと体と心が疼いた。
上着を脱いだ暁さんは、思ったよりも逞しい体をしていた。目を見開いているうちに、僕は寝台に縫い付けられていた。思ったよりも早い展開に、内心狼狽える。勝手に穏やかな時間を想像していたからだ。だが――この時僕を見た暁さんの瞳には、確かに欲望が宿っていた。ゾクリとした。その瞬間には、再び唇を塞がれていた。
それからのキスは最初のものとは異なり、酷く官能的だった。容赦なく僕を追い詰め、逃さないというように激しい。
「あ……っ、ん……」
抵抗する間も無く服を脱がされた僕は、胸の突起に噛み付かれて短く呻いた。手馴れた様子で僕を抱く暁さんが、違う人に見えた。反射的に押し返そうとしたが、体重をかけられて、動きを封じられる。
「ぁ……ぁ……っ、ン……」
想像以上に巧みな舌に、僕はすぐに震えた。胸からへそへ、そして太ももへ、舌が這い、最後に暁さんに陰茎を口へと含まれた。ねっとりと口淫され、僕は思わず片手で唇を抑えた。――上手い。眞山くんはこういう事はしないし、言っては悪いが楪は下手だ。すぐに腰の力が抜けそうになる。
「あ、ああっ……待って、出る、出ます……――ひゃっ」
僕が宣言しようとした時、軽く根元を握られた。びくりとすると、口を離した暁さんが、残忍な顔で口角を持ち上げた。
「もう少し我慢してもらえるかな。一つになりたいんだ」
暁さんはそう言うと、もう一方の手で器用に魔法薬のローションを手繰り寄せた。いつの間に置いてあったのか、ベッドサイドにそれはあった。計画的だったのだろうかと、一瞬思う。だがすぐにそんな思考は、入り込んできた指によって消し去られた。代わりに与えられた刺激が、僕に尋常ではない快楽をもたらした。
「あ、ああ、ひっ、あ」
ぬめりながら痛み無く入ってきた二本の指が振動するたび、僕は体を反らせて涙した。本当に暁さんは上手い。容赦なく僕を暴いているのだが、体が辛くない。内壁ではっきりと暁さんの指の形を意識させられる。どんどん広げられ、次第にグチュグチュとローションが卑猥な音を立てるほどに指を動かされた。
「あ――っ、うあ、ああっ」
そして暁さんが入ってきた。熱と質量に僕は震えた。一気に突き入れられて腰が引けそうになった時、ぎゅっと腰骨を掴まれた。そして深く打ち付けられる。
「あ、あ、ああっ、あ――!!」
それから太ももを持ち上げられて、斜めに突き上げられる。僕の感じる場所を、ダイレクトに陰茎が嬲る。自分の快楽を重視する眞山くんと、ここも暁さんは違った。ひたすら僕の感覚を高めていく。だが、容赦はない。まつげが震え、僕は生理的な涙を零した。気持ちが良い。気持ちが良かった。
「愛してる」
「うあああああああああああああっ」
その時耳元で囁かれて、僕は喘いだ。感情まで伴うSexなど初めてだった。僕の、ではない。こんなにも、愛されてしていると感じるSexが初めてだったのだ。体が全て熔けてしまいそうだった。熱に浮かされたようになり、僕は暁さんの首に手を回して、必死に息をする。すると一際強く打ち付けられて、中に出された。暁さんは僕の前もほぼ同時になでたから、同じように僕も果てた。
行為が済んでから、暁さんはシャワーを浴びに行った。残された僕は、シーツにくるまりながら、ぼんやりとしている。想像以上に良かった。冷静になった思考がそう述べたから、片手を持ち上げて自分を見た。僕の体は、快楽に弱いらしい。
――これから、どうなるのだろう?
今までの関係が変わるのだろうか? 僕は、それは上手く思い描けなかった。それよりも、恋人ではないと言っても、新さんは暁さんを好きかもしれないし、面倒な事態になったらどうしようかと、そちらに怯えた。
「唯理くんも入る?」
そこへ、暁さんが出てきた。小さく頷き、入れ違いに僕は部屋に備え付けの浴室へと向かった。シャワーを浴びて、冷静になりたいという思いもあった。だが、思考はまとまらず、出てから僕は暁さんの言葉を待つことにした。
「ねぇ、唯理くん」
暁さんは、僕に水の入ったペットボトルを手渡すと、じっとこちらを見た。
「俺の気持ちには応えてもらえるかな?」
「……それは、その……」
「応えないと許さない」
「っ……あの……」
「覚えておいてくれ。俺は、独占欲が強いんだ」
そう言うと彼は僕を抱き寄せた。ペットボトルを落としそうになった僕は、慌ててそれを置いた。そんな僕の顎をつかみ、暁さんが唇を落とした。
「ん」
深々と貪られて、僕は何も言えなくなる。再び始まった官能的なキスの後――すぐに、二回目が始まった。今度は先程よりも荒々しい。まだ解れていた後ろにすぐに挿入されて、そして、後ろから激しく突かれた。
「あ、あっ」
獣が交わるようなSexに、僕はすぐに理性を失った。腰を掴んだ暁さんは、ぐっぐっと僕の中を暴くと、ギリギリまで腰を引いては、今度は一気に突き上げる。違う角度から感じる場所を刺激され、僕は喘いだ。この体位には、ただでさえ僕は弱い。眞山くんとする時も、一番感じていたというのに、上手い暁さんにこうされたら、とても正気ではいられなくなった。
「いやああっ、待って、もうできなっ――あああっ」
そのまま二度僕は中を刺激されて果てたのだが、暁さんは許してくれなかった。何度も何度も僕を味わい、僕が意識を失うまで抱き潰した。最終的に、僕は気絶した。