12
「ナイル、実は悩み――」
「陛下、急ぎご審議頂きたい議案があるのですが」
「!」
ナイルに言葉を返そうとした瞬間、後ろから耳元で声がした。吐息が耳にかかる。ゾクリとした。吃驚したのと同時に、その吐息があんまりにも生々しかったからだ。吐息だけなのに、そこから何かが流れ込んできたように錯覚してしまった。多分這い上がってきたのは恐怖だけじゃなくて、間違いなく快楽もある。そんな自分にも吃驚だよね。
「宰相閣下、今は恐れ多くも私目が陛下からお言葉を――」
「宮廷魔術師長、ちょっと良いか?」
今度は、ポンとクルスがナイルの肩を叩いた。
ナイルがビクリとしている。
サイトにしろクルスにしろ、全く近づいてきた気配がなかった。
「取り急ぎ結界のことで話し合いたいんだ」
「近衛騎士団長……」
「これも陛下の御身のため」
その言葉にナイルが、何か言いたそうに僕を見た。僕は硬直していて上手い言葉を探すことに苦労した。ど、どうしよう? これは二人から無言の圧力がかかっているよね。何も言うなっていうことだよね。
「陛下、討伐の件もございますし、ご予定が詰まっております。至急お願い致します」
サイトに言われた。絶対嘘だよね……。
しかしそう言われてしまえば僕には反論など出来はしない。
そんなこんなで結局僕は、ナイルとは話せなかった。
夜。
「ひぅ……あ、ああっ、ううゥっン」
僕は後ろから抱きかかえられるようにして、サイトに胸の飾りのそれぞれを摘まれている。
指で触れられた箇所へとひっきりなしに、ビリビリと電流のような刺激が流れ込んでくる。
羽で撫でるように擦られては、時折ギュッと摘まれるのだ。
「あ、ああっ、もう嫌だ、ああああ!!」
「嫌? その割には、触れてもいないのに、随分と勃たせていますね」
「ああっ、うううあ」
僕は目を見開きガクガクと震えながら、涙をボロボロと零した。
胸だけの刺激は、尋常ではなくもどかしくて、体が疼いて仕方がない。けれど僕の陰茎は既に反り返っていた。
「どんどん感度が良くなるな」
「あ、ああ? あ? あ。あン――!!」
羞恥と快楽で、頭が真っ白になる。おかしくなってしまう。いや、僕は多分もうおかしいよ。乳首がどうしようもなく気持ちが良い。緩急をつけて刺激を流し込まれて、ビリビリとする。頬が乾く暇がない。
「それで? キスマーク? 僕が何でも聞きましょう。さぁ僕に何でも悩みをお話し下さい」
「や、ぁ、ア」
「僕がどれだけ嫉妬しているのか分かっているのか。キスマークなんて付けさせて」
「ひぅッ、うンあ――や、ヤダ、やめッ……――!」
後ろから首筋を舐められ、肩に噛みつかれた。
触れられる場所全てから快楽が流れ込んできて、気が狂いそうになる。もう、快楽に絡め取られて、僕は訳が分からなくなってしまった。イきたい。だけど、胸への刺激だけではそれが出来なくて、太股が震えた。気がつけば、僕は、無我夢中で自分の陰茎に手を伸ばそうとしていた。
「ああ、ふァ……ひッ、ンあ……――やぁ」
「行儀が悪いな」
「あ、あ、あ」
「――まぁ良い。見ていて差し上げますよ」
すると笑いながらサイトに言われた。
僕は無我夢中で、必死に性器に触れた。自分で、性的な意味合いで触った野など、記憶がある限り初めてだ。ああ、出る。もう、出ちゃうよ。
そのまま先走りの液で濡れた陰茎を握り、僕は自分の手で擦って果てた。
その直後のことだった。
「あああ――!! 嘘、嫌だ――!! うあン――!!」
これまでで一番強い刺激を胸の突起から流し込まれて、僕は胸だけでもう一度果ててしまった。そのまま僕は意識を失った。
僕は思う。クルスよりも、サイトの方が激しくてドSだ。理想の受けなんかじゃない。
素直クールでもない。
ある意味、鬼畜攻めだ。
意識を取り戻してから、気怠い体でシーツにくるまり、ぼんやりとそんな事を考えた。
隣ではサイトが僕を抱きしめて目を伏せている。
僕は服を着ていたから、サイトが着せてくれたんだと思う。
温かい。温かいけど、ちょっと低い体温だと思う。だけど多分僕は、この温もりが嫌いじゃない。もう慣れてきてしまっている気がした。そう思えば溜息が漏れた。
さて、それからなかなか眠らなかったので、僕は考えた。
”古害磊”をどうしようか。
当然宝玉で駆除することになる。宝玉を使うのは久しぶりだ。
前国王だった父が亡くなった頃は、毎日のように使っていたのが懐かしい。
懐かしいなんて言うのは人命がかかっているんだから、不謹慎かもしれないけど。
それにしても勇者の異物は、本来であれば、その国の人間が時刻を守るために使う代物だ。
カルディナ殿下も使えなくて悔しい思いをしているのかも知れないよね。
――そう言えば、サイトと殿下はどういう関係なのだろう?
後で聞こうと思ってから、そのまま僕はまた眠ってしまったのだった。