<6>僕は目標を立てた!
帰宅して僕は、机に向かった。
倉庫の確保にも成功したため、生産の予定が立てやすくなった。
まず、今後の予定として、現在調理レベル1、他の6つ0であるから、全てカンストを目指す。これをドーンと掲げた。
そのために必要なのは、素材である。
素材集めのために必要なのは、ゴールド(通過)と、素材収集能力である。
僕は魔術は習い始めているから、範囲魔術にもすぐに到達するだろう。
威力の強い単体攻撃魔術を周囲が期待しているのは知っているが、それは無視してとにかく範囲を極めなければならない。範囲は、レベルを高くしないと弱いが、僕に必要な魔術スキルは範囲のみだ。
とはいえ、強いボスの落とす素材も必要になってくるから、ソロでボスを回すための技術もいる。そちらを入手しなければならない段階になったら、単体の攻撃魔術にも着手しよう。それまではとにかく範囲だ。範囲の練習なら、致死率も低そうだ。この世界……死んでも復活しないような気がする。
こう考えると、僕の将来の職業は、【魔術師】が良いのではないかと思えてきた。魔術剣士と違って、腐るほどいるから目立たなそうでもある。ゲームでは、僕は、死霊術師という職業をしていたから、全然経験はないが、やってやれないことはないだろう。なお、サブキャラクターでは、銃術師をしていた。範囲はそちらが持っていたのだ。
――よし! 僕は、魔術師になる!!
人生の進路まで決まってしまった。ええと、これで素材集めはどうにかなるとして、次に具体的な生産の進路だ。
実は生産では、木工で作った素材で裁縫をしたり、調理で作った素材で薬学のレベルを上げたりというクロス作業があるので、計画性が必要なのである。そういったものをなしに、単体でレベルを上げやすいのが、錬金術だとされる。だが、逆に錬金術の素材は、他の全てで使用したりもする。
また、序盤がマゾイが、後半は楽だとか、前半は楽だが後半はマゾイとか、色々な流れがある。それらを考慮すると、調理&薬学&錬金術を並行して上げて、余裕が有る時にほかを上げるパターンか、鍛冶&装飾あるいは木工&裁縫のどちらかの組み合わせを一気に上げるというパターンも考えられる。これは、効率を求める場合である。
最終的に全部やるとしても、どれからやるかが、非常に悩むところだ。
ただ、先ほど考えたボス素材が、鍛冶にはすぐに必要になる。
だけど僕はすぐに魔術を身につけられるわけではない。
さらに裁縫には範囲攻撃がある方が良い。モンスターを範囲で倒したい!
だがこれもまだ未習得だ。
そう考えると、やはり、調理&薬学&錬金術の組み合わせのレベルを上げるのが良い気がしてくる。うん、きっとそうだ!
ならば――今日入手した【灰色の石ころ】は、錬金術のレベル上げに全て使って良いだろう。調理は、ゆで卵を少し行って、小麦粉も再挑戦とするか、さらに上のレシピを目指すか――薬学は、どうしようかなぁ。実は、薬学もかなり近い将来範囲が必要になる。
範囲狩りしないと、とてもじゃないが、素材が集まらないのだ。
一回に一匹と、一回に五匹では、速度が違いすぎる。
少し悩んだが、ここは、調理&錬金術のみを厳選して上げてみようかと僕は思った。
「よし、冬が来る前に、調理と錬金術のレベル10を目指す!!」
一人決意して、僕は声を上げた。うん、頑張ろう!
こうして、翌日からは、毎朝五時に起きることにした。
起きて、五時から八時まで、僕は調理をすることにしたのだ。
これは、卵の買い出しから始まる。
厨房のシェフさん達と一緒に、僕はお城の鶏小屋に向かう。
そして眠い目をこすりながら、カゴいっぱい(約30個)の卵を貰う。
これ以上は、迷惑になるので貰えない……。
そして、ひたすら部屋でゆで卵を作った。
ゆで卵作りにより、一日に少しずつ経験値が溜まっていった。
結果、一週間目に、調理レベル2になった。
ゆで卵もレベル2のレシピなので、もうゆで卵作りではレベルが上がらない。
だが、小麦の姿は、窓の外には見えなくなっていた。
収穫されていたのだ。
そこで僕は、レシピレベル6である【焼き芋】を作ることに決めた。
素材の【イモ】は、鶏小屋のそばの白の倉庫にたくさんあったので、こちらも朝の五時から八時までに取り掛かることにして、完成物は、厨房のシェフさん達に渡した。
さて、朝食を食べて、朝の九時から午後三時までは、いつも規則正しく、僕は採掘に向かった。ラスカが、「一日六時間以上やるなら二度と連れて行かないんで」といったため、規則正しく六時間、僕は王都郊外で採掘をすることにしたのである。
そして帰宅後は、【灰色の石ころ】から【砂金】を作った。錬金術だ。
こうして――調理レベルが6、錬金術レベルが4になった頃、暦が変わった。
十二月になったのである。一月から十二月まで、三百六十五日程度、こういった暦や時間は現代と何も変わらない。
「うう……冬になるまでに10レベル……もう、冬だ……」
僕は、早速挫折したのだった。
しかし、意外と時間がかかると知ったのも収穫だった。