10:吾輩は発情期!★


その後も、もうちょっとでBランクになるという所まで、アクアは根気づよく僕についてきてくれた。だけどある日ーー大規模討伐というものに呼ばれたらしい。

「いいか、アサヒ。知らない人の前でフードをとっちゃいけないからな。君はそのーー美しいから。それと、知らない人について行っちゃダメだ」

僕は知らない人であるアクアの前でフードを取っちゃったし、ついてきちゃってるけど……最近はアクアが着いてくるんだけど、それはいいのかな?
あ、でもいまは、七番目にアクアのことが好きだからいいのかな?
六番目は、ギルドで受付をしているフェニルだ。暁の森に行くって言うたびに、最近は僕にお弁当をくれるんだ。確かご主人がしていたゲームだと、ギルドの受付の人と仲良くなると個人クエストっていうのが受けられるらしくて、仲良くーー親密度はお弁当をもらう→美味しいお弁当をもらう→(略)→最高級幕の内をもらう、だった気がする。僕は最初から幕の内をもらって、無限鞄に入れたんだ。
無限鞄といえば、持っているのを見たら、アクアが絶句していた。
「そ、そんな大陸にも三つしかないとされる貴重アイテムを一体どこで……!」
と、驚かれた。なんでも製作者(Sランク)と、冒険者になった第十三王子様(Sランク)しか持っていないんだって。Sランクもこの頃には僕も覚えた。ご主人がSランクの中でも最強、次が冒険者から騎士団に入ったウィズ、冒険者のアクア(ギルド未加入)、王子様、謎の魔導師(誰も顔を知らない……らしいけど僕はおっさんだと知ってる)だ、そうだ。流石はご主人!

ともかく今日は、一人で暁の森に初めて行くことになったんだ。
昨日からアクアはいないから、全部一人でやって、あとはギルドに向かうだけだった。ーーその時だ。

「あれ、お前……」

懐かしい声と、匂いがした。
僕が間違えるはずがない!

「ご主人!」
「いや、違うから」

駆け寄るとフードが取れたけど、僕は気にせず勢いのまま抱きついた。
ご主人は僕がよく知ってるからいいよね。
だけどご主人は辟易したような顔をして、僕を離そうとした。僕が遊んで欲しくて、眠っているご主人のお腹の上に乗ると、大抵こんな顔をしていたんだよね。それすらも懐かしい。

「ご主人はご主人だよ! 大好き!」

僕は思いの丈をぶつけた!
だってもうこの気持ちも寂しさも、堪えきれないんだよ……!

「悪いけどな、俺は面食いじゃねぇし、押されるより押す方が好きなんだよ。さっさと離れろ。女になって出直してこい! 巨乳な!」
「……」

確かに僕は雄猫だし、ご主人様が見ていた動画は大抵巨乳の女の人が出ていた。
だけど別に僕は後尾がしたいわけじゃない。
あと、面食いという単語は僕にはわからない。

「メスになったら、一緒にいてくれる?」
「ちょ、語弊ある言い方をすんな! まるで俺がアブノーマルな思考の持ち主で、雌豚を欲してるドS見たくなってるだろうが!」
「じゃあどうすれば一緒にいてくれるの……?」
「あー、とりあえず大規模討伐で招集かかってて忙しいからまた後でな」
「嘘だ!」

ご主人様の、また後でね、というのは、永遠にやらないという意味だと僕は知ってる。僕と遊びたくない時、ご主人様はいっつもそういうんだ。
僕が思わず涙ぐむと、周囲から囁き声が響いてきた。

「あれ、ミラルダの、ジェフだろ?」
「あんな美少年でも靡かないのか……」
「ちきしょう羨ましいぞ……というか……」
「酷いよなあれ……泣いちゃってるだろあの子……」
「うわぁ、可哀想……勿論、アサヒが」
「アサヒ? 知ってるのか?」
「最近頑張って暁の森にこもってるだろ、ヤンデレと」
「ああ、アクアか」

僕は泣いていたので良く意味はわからなかった。
すると唇を噛み締めて恨みがましい目で僕を見てから、ご主人が空を仰いだ。

「ちょっと来い」
「うん!」

この、ちょっと来い、は、僕がイタズラした時に怒る声だ。
だけど僕はそれでも良かった。ご主人と一緒にいられるならば!
それから僕は、僕が泊まっているところとは全然違う、豪華なお部屋に連れて行かれた。そしてご主人が鍵を閉めるのを見守っていたら、唐突に後頭部に手が回り、ぎゅっと抱きしめられた。ご主人の体温と、骨ばった指が僕は好きだ。

「本当に俺が好きなのか?」
「うん!」
「ーーこういうことをされても?」

するとご主人が、僕の唇に優しく噛み付いた。驚いて身を引こうとすると、さらにぐっと腰をだく手に引き寄せられて、びっくりして開けた口の中に、ご主人の舌が入ってきた。

「んぅッ」

逃げようとした僕の舌を絡め取り、ご主人が甘く噛む。ピクンと僕の体は震えてしまった。胸がドキドキして、ほっぺが熱くなった気がする。なんでなのか、ちょっとだけ涙が出てきた。それからも舌を吸われ、端正なご主人の伏せた目を見る。睫毛が長い。
それからようやく口が離れた時、僕は肩で息をしていた。
体が熱いーーまるで、発情期の時みたいだ。
あ!
そこで僕は気がついた。人間って年中発情期なんだ! 僕も今縄張りとか考えずに旅をしているし……もしかして僕も年中発情期なの??

「……これに懲りたら、二度とご主人とか呼ぶなよ。さっさと逃げねぇと、続きするからな。犯すぞ。本当は俺、男もいけるからな」

耳元でご主人に言われると、その吐息だけで、背筋がゾクリとした。
体が変だ。すごく、出したい。首に噛み付いて、腰を動かしたい。

「……おい。そんな蕩けたような顔で見るなよ。お前、中身はともかく、顔だけはいいんだから。ああ、もう。討伐前に、俺は何やってんだ」
「ご主人……僕、出したい」
「!」
「苦しいんだ」

そう言った時、強く腕を引かれて、寝台へと押し倒された。

「悪い、限界。もう止められない。ただし一つ約束しろ、な? 俺のことはご主人じゃなく、ジェフって呼べよ」
「ジェフ? ぅ、あ」

すると強めに、服の上から乳首を摘ままれた。
ジンっと甘い疼きが走って、全身がさらに熱くなる。

「ご主人は、はぁ、うう、ご主人だよ!」
「じゃあいうのを止めるまで、イかせてやらない」
「ひっ、ぁぁああああ」

急に服の中に手が入ってきて、僕は直接胸の突起をつままれた。
それだけで出しそうになって腰を揺らすと、ご主人様が吐息に笑みをのせた。

「胸だけで感じるなんて、随分と開発されてんのな」
「開発……?」
「本物のご主人様とやらに、躾けられたのか?」
「僕を躾けたのは、ご主人……ジェ、ジェフだよ!」
「記憶にねぇよ」

そう言うとご主人が、僕の下衣を下ろした。
もう僕の前はダラダラに濡れていて、立ち上がっていた。やっぱり、発情期だ。

「お、お願いだからださせて!」
「じゃあ誰に俺を籠絡しろって言われたのか、ちゃんと言え」

籠絡って言葉を僕は知らない。
だけどご主人は意地悪く笑っている。それから、僕の先端をぐちゅぐちゅと指の腹で嬲った。

「ひゃああああ、気持ちいいよっ、うぁ、ああ」
「確かに随分と気持ち良さそうだな」
「うあ!」

すると今度はまた両方の乳首を摘ままれた。
出そうなのに、出そうだったのに、酷い。

「慣れてるんなら、慣らさなくてもいいよな?」
「ーーーー!」

その時僕の後ろに長くて巨大なものが入ってきた。
押し開かれる感触に、思わず目を見開く。息を吸おうとしたのに、うまくできなくて、喉が凍りついた。痛くーーは、無かった。だけど衝撃が大きすぎて、僕は泣くしかない。

「あ、ああっ、う」
「キツイ、緩めろよ」
「あ、あ、ご主人!」
「そう呼ぶんなら最初見たく、ご主人様って言えよ」
「ご主人様、ぁ、あ」

僕は思わずご主人様の首に両腕を回し、噛み付いた。
すると驚いたような顔をした後、ご主人が僕の太ももを折って、腰を激しく打ち付けてきた。

「ひゃああ、んーーーーあ、ああああ!」
「どんな風にして欲しい?」
「わ、わかんない、ぼ、僕、こんなっ、ふぁ」
「萎えてるな、前。お前もしかして……本当は、初めてか?」
「う、ううう、ぁ?」
「……この辺か?」
「ひ!」

その時ご主人の動きが緩慢になり、ゆっくりと腰を抜き差しされた。
そうして先端がある一箇所に触れた瞬間、僕はわけがわからなくなった。

「やだやだやだ、そこ、やぁーーーー!」
「嫌じゃないだろ?」
「ふ、ぁ、ああ、や、おかしくなっちゃった」

そして再び出したくなった。何でなのかな、後ろに入れられていて、本来なら僕が入れるはずなのに……っ!
僕がボロボロと泣くと、ご主人が苦笑するように、涙を拭ってくれた。

「酷くして悪かったな」
「動いて、ああアアア!」
「ただ敏感なだけなんだろうけどーー素質あるよお前」
「いやだ、や、もっと深くしてッ」

もう僕はそれしか考えられなくなって腰を揺らした。
するとご主人様が再び深く抽送を開始した。

「ンあーーーーーー!」

僕は泣きながら叫んで、そのままご主人に緩く前を撫でられ、出してしまった。
ぐったりと体をシーツに投げ出すと、ご主人が頭を撫でてくれた。
僕はずっとこうして欲しかったんだ。
嬉しくて涙が次から次へと出てくる。

「その、悪かった……思ったより自制がきかなかった。最後までヤるつもりはなかったんだけどな。はっきり言って、俺は誰でも簡単に部屋まで連れ込んだりしねぇから、そこは勘違いするなよ」
「うん、うん」
「けど、まぁ。一回ヤったくらいで絆されるほど優しくもねぇんだよ。また会って、それでもまたお前が俺にまとわりついてきて、気が向いたらヤってやる。それとももう、嫌になったか?」
「ううん、嫌じゃない、大好き!」
「……そうか」

それから僕は、暖かい濡れタオルで体を拭かれた。やっぱりご主人だ。ご主人もよく僕を拭いてくれたんだから、間違いない。
そうして着衣をなおすと、僕は外へと連れられて行ったんだ。

ーーそこには、怖い顔で笑っているアクアがいたんだよね。