19:吾輩は会いに行く!


その日は、街の宿屋に泊めてもらった。
なぜなのか皆物腰が低くて、丁寧に扱ってもらった気がする。
ちょっとよく分からなかった。
ただ、すごいすごいと言ってもらえてなんだか嬉しかった。だってご主人に近づいた証拠なんだから!
ギルドで大規模討伐のことを聞いて見たら、もう終わっていたから、僕はご主人がいるクランのホームタウンである初心者の街を目指すことにした。
きっとこれでご主人様に会えるよね!

初心者の街に戻るには、走っても一ヶ月くらいかかるみたいだった。

すごくもどかしいけど、ご主人様に会うためだと思ったら我慢できる!
僕は来た時とは違う最短のルートを教わって、一生懸命旅をした。
そうしたら途中で声をかけられた。

「お前が新たなSランクの魔猫使いだな! 勝負しろ」

キラキラした人だった。だから僕はきっとこの人が、僕の会ったことがない、最後のSランクの人間の王子様だってわかった。

「僕すごく急いでるんだ! じゃあね!」
「……逃げるのか?」
「うん。勝負とか興味ないよ!」
「てっきり好戦的だとばかりーー王国の脅威になると思ったんだが……心優しいらしいな。それとも俺が王子だと知っているからか??」
「やっぱり王子様なんだ。キラキラしているからすぐに分かったよ!」
「キラキラ……?」
「その、綺麗だってこと! とにかく僕急いでいるんだ!」
「どこへ行くんだ?」
「ご主人のところ!」
「ーージェファードを主人と読んでいるという調査結果は本物だったんだな……そんなに会いたいのか?」
「うん!」
「そういうことなら送ってやる……馬の方が徒歩より早い。代わりに王国に害をなさないと約束しろ!」
「え、そうなの? おねがい! それに分かった! 悪いことはしないよ」

僕がそう言うと、王子様が白馬を連れて戻ってきた。白馬の王子様だ!
馬に乗せてもらったら、それから一週間で、初心者の街へとついた。
王子様の名前は、リルライクって言うんだって。
金髪で、僕と同じで緑色の目をしていた。
自分より強い人はSランクの人しかいないから、護衛はいないんだって。
アスカの話をしたら、小さい頃に誘拐されたって教えてくれて、みんなが探していたって聞いた。大変だったみたいだ。

「ここにジェファードがいるはずだ!」
「有難う!」

僕は久しぶりに、最初に来た街に戻ってきた。
マグロの匂いがした。お腹が空いてきたけど、そんな場合じゃない!
僕は早々に、クラン・ミラルダを目指すことにした。
だけど僕、場所がわからないことに気がついた。
ーーその時だった。

「アサヒ??」

そこには、ウィズが立っていた。良かった、ウィズなら場所を知ってるよね。
そう考えていたら、ギュッと抱きしめられた。

「すごく心配してた……急にいなくなるから」

今思えばすごく悪いことをしちゃった気がする。
あんなに優しくしてもらったのに。

「ごめんね。それで、ご主ーー」

僕がご主人の居場所を聞こうとした時だった。
ウィズが杖で殴られて飛んで行った。

「アサヒ……! 大丈夫だったかい? ここに戻ってくるんじゃないかと思って見張っていてよかった」

そこには何故なのか、アクアが立っていた。
アクアにも優しくしてもらったのに、そういえば黙って出てきちゃったんだった。
鍵はちゃんと直したんだけどな。
今度はアクアにギュッとされる。息苦しかった。

「何をするんだ!」
「それは俺の台詞だ」

その時、ウィズとアクアが睨み合った。え、何が起きているんだろう?

「我が剣に宿れーーグリフォン」
「我が杖に宿れーーマッドハッター」

周囲にビリビリとした空気が満ち溢れた。僕はその時、腕を離してもらった。
代わりに、王子様に手を引かれた。

「こんな街中であのバカ二人は何をしているんだ……」
「加勢する」
「ノンカか。頼む!」

王子様はそう言うと、背後に下げていた弓を握った。
そしてそこに現れた、ローブを深く被ったオジサンが、杖を構えた。

「我が弓に宿れーーグリフォン」
「我が杖に宿れーービル」

こうして、一対一対二の戦いが始まった。始まってしまった。
僕はそんなの見守っている場合じゃないんだ。
一刻も早くご主人に会わなくちゃ!
だけどどこに行けばいいんだろう?
僕が困っていると、隣で腕を組む気配がした。

「あー、なんていうの? 久しぶり」

そこに立っていたのは……ご主人だった!