【十五】フェラの指導(★)







 僕はソファに座っている山縣の陰茎に、恐る恐る触れた。そしてゆっくりと手を動かしてみる。山縣は冷めた目で、僕を見ている。緊張しながら、僕は唇をあけて、先端を口に含んだ。そして側部に沿えた手を動かしながら、口で陰茎を刺激する。

「んぅ」

 少しすると、硬くなってきた。同時に僕の口が苦しくなる。それでも頑張って、山縣の筋を指でなぞったり、雁首のところを刺激したりした。

「っッ」

 大きくて息が苦しい。でも、ここでやめるわけにはいかない。ようやく僕にもできることが見つかったのだから、頑張らなければならないだろう。チラリと上目遣いに山縣の様子を窺うと、山縣はまじまじと僕を見ていた。先ほどよりは、その目は冷たくない。

 息苦しさから、次第に僕の両眼は潤み始める。それでも必死に舌を這わせ続けた。
 どんどん固く長くなっていったが、もうかなりの時間、僕はフェラをしているのに、山縣が達する気配はない。そう思っていた時だった。

「出すぞ」
「んっ!!」

 僕の口にぐいと陰茎を突っ込み、山縣が放った。脈動する感覚がして、僕の口腔に精液が飛び散る。反射的に僕はそれを飲み込んだが、僅かに唇の端から零れた。僕の口から陰茎を引き抜いた山縣に、僕は大きく吐息してから尋ねた。

「そ、その……どうだった?」
「どうって?」
「満足、出来た?」
「……」
「や、やっぱり、ダメかな。僕じゃ……」
「正直な話、たどたどしすぎて、下手だとしか言いようがない」
「!」

 辛辣な一言に、僕は泣きそうになった。山縣が、いつかソファの上で見せたような、どう猛な色を瞳に宿したのは、その時だった。

「手本、見せてやるよ」
「――え?」
「脱げ」

 確かにいつも、山縣は僕が失敗すると、完璧にやり直す。けれど、こんな時まで? 僕は驚いて視線を彷徨わせる。すると山縣が僕のベルトを引き抜いて、絨毯の上に僕を押し倒した。下衣をボクサーごとおろされて、僕が目を丸くしていると、山縣が僕の陰茎に手で触れた。

「んぅ!」

 そしてねっとりと舐め始めた。

「ぁあ……あっ、あ、嘘……ン」

 僕は思わず両手で口を押えた。だが、あんまりにも気持ち良すぎて、声が止まらない。初めて他者に触れられてフェラをされているからというのもあるのかもしれないが、山縣が巧すぎる。すぐに僕の呼吸は上がり、陰茎に集まっていく熱の事しか考えられなくなる。腰からは力が抜け、全身が熱を帯びていく。

「あ、あ、あ」

 別段僕は早漏というわけではないと思うのだが、一瞬で射精したいという欲求が浮かび上がってきた。既に僕の陰茎はガチガチで、自分でも先走りの液が出ている事が分かるし、張りつめた陰茎は反り返り、解放を願っている。

「あ……山縣、っ……口離して。で、出ちゃうから……っ」

 僕が言うと、あっさりと山縣が口を放した。結果、僕は果てる寸前で止められた。思わず山縣を見上げる。すると山縣は端正な唇をぺろりと舐め、意地悪く僕を見て笑っていた。

「フェラってのは、こうやるんだよ」
「う、うん……ッッッ」
「出したいか?」
「あ……」
「――もっと気持ちよくしてやろうか?」
「? ん……ン!」

 山縣がシャツの上から、僕の乳首を弾いた。

「言ってみろ、『挿れて』ってな。そうしたら、最高に気持ちよくしてやる」
「っ」
「どうする?」

 真っ赤になって、僕は睫毛を震わせた。その間もずっと、出したくてたまらなくて、思考が曖昧になりそうだった。気づくと僕は、頷いていた。

 僕の服を乱した山縣は、その後僕の全身を愛撫した。気づくと僕は、達したくて仕方がなくなり、それしか考えられなくなっていた。すすり泣きながら、僕が口を開くと、山縣がそこに二本の指をいれ、僕の舌を嬲った。ひとりしきそうしていた山縣は、それから僕を見てにやりと笑うと、僕の太ももを持ち上げて、僕の唾液で濡れた指を、僕の後孔へと差し込んだ。

「ぁ、ァ……」

 そうして僕の内壁を解し始めた。丹念に丹念に僕の中を解していく山縣を、僕は涙がにじんだ目で見ていた。一緒に暮らし始めてから、山縣がこんなに笑っている顔を見たのは、初めてなんじゃないかと漠然と思った。

 指を引き抜いてから、山縣が剛直の先端を僕の窄まりにあてがう。
 そして一気に貫いた。

「あ、ああっ!」

 僕は背をのけぞらせて、それを受け入れる。切ない痛みがしたけれど、すぐにそれすらも快楽に変わった。手練れた山縣の前で、経験のない僕は、翻弄されるしかない。次第に山縣の動きが激しく変わっていく。何度も打ち付けられ、僕は大きく喘いだ。内側を抉るように擦り上げられ、奥を突かれる度、僕の腰は引けそうになるのだが、山縣が僕の腰を掴んで離さない。

「あああ!」

 そのままグッと一際強く突き上げられた時、僕は射精した。ほぼ同時に、内部に飛び散る山縣の白濁とした液の感覚を覚えた。