【八十三】二度目の問い(★)
目を覚ますと、僕は寝台の上に寝ていた。拘束具も玩具も外れていたが、まだ全身に快楽の残滓があって、僕の体は熱いままだ。潤んだ瞳を、僕は隣に寝ころびこちらを見ているクライヴへと向ける。
「おはよう、ルイス」
「クライヴ……刺激が強すぎた」
「きっと慣れる。嫌だったか?」
「……クライヴが、その、僕を見て喜んでくれるなら、いいけど……」
「俺は感じているルイスを見るのが、何よりも好きだ。甘やかすのと同じくらい、ルイスの心も体も支配したいからな」
「僕も支配されたいのは同じだけど……僕は、甘やかされたい。そっちの方が好き」
「どうされたいんだ? 《教えてくれ》」
「もっと命令して……そして、僕にもクライヴを頂戴……」
「何が欲しい? 《言ってみせてくれ》」
「あ……クライヴのモノを挿れて……」
「《いい子だ》。おねだりが、《上手》になったな。素直なルイスが可愛くてたまらない」
褒められる度に、僕の顔はドロドロに蕩けていく。クライヴの《命令》する声が愛おしくて、意識にそれしか上らなくなっていく。
クライヴが僕にのしかかってくる。そして解れ切っていた僕の後孔に挿入すると、ぎゅっと僕の両手首を握り、シーツへと押し付けた。そして唇を僕の肌へと落とす。何度も何度も口づけをされ、僕の肌にはキスマークの花びらが散らばっていく。クライヴの胸板の重さと体温が愛おしくて、僕は幸せに浸る。
「僕はクライヴが好き」
「俺もルイスが好きだ。ああ、もっと聞きたい。《言ってくれ》」
「好き……愛してる」
「俺も愛している」
「んぅ」
僕の胸の突起に、クライヴが吸いつく。そしてチロチロと舐められると、玩具とは全然違う快楽が押し寄せてくる。僕の乳首はすぐに真っ赤に尖った。
「今度は胸だけでイけるようにしような」
「っ……」
クライヴは僕を限界まで焦らしたり、かと思えば強い快楽を強制的に与えたり、いつも僕の体を翻弄する。無知だった僕は、ついていくのが精一杯だ。
「クライヴは、僕できちんと満足できている?」
「ルイス以外では満足なんて出来ないさ」
「うん……ンん」
その時クライヴが腰をかき混ぜるように動かした。陰茎が僕の中で動いた時、思わず僕は締め付けた。
「もっと動いて、っぁ」
「ああ」
「ンっ、あ、あ、ぁァ……そ、そこ……ああ! あ」
クライヴが僕の感じる場所を突き上げたまま動きを止め、さらにぎゅっと強めに僕の手首を握った。そのまま僕の唇にキスをし、僕の舌を絡めとる。そのキスが幸せで、僕の体を幸福感が襲う。意識がふわふわとし始めて、僕は今ではもう覚えたSpaceの感覚に、怯えることなく穏やかに飲み込まれた。
「ああっ、クライヴ。クライヴ……僕をもっとクライヴだけのものにして」
「勿論だ」
「んァ、ぁ……ああ! 気持ちいい、あ、クライヴ……好き」
「それは、俺の体がか?」
「もうわかるけど、そうじゃない。クライヴの全部が本当に好き」
前にも問われた声に、僕は今度は即答できた。するとクライヴが嬉しそうに頷く。
「俺もルイスの全てが好きだ。ずっと前から、そして今後もずっと。俺の愛はルイスにだけ捧げる。だから俺のそばにいてほしい」
「うん、うん」
僕達は再び唇を重ねる。するとクライヴが、僕の手首ではなく今度は掌に指を絡めた。恋人繋ぎをした状態で、僕達は再度キスをする。お互いの口腔を貪り、視線を合わせた。
「動くぞ」
「うん、あ、あああ!」
そのままSpaceに入った状態で、穏やかに僕は体を昴められていく。胸がどんどん満ち溢れていき、僕の意識が曖昧に変わる。
「ん、ぁ、ぁァ――!!」
「《|イけ《カム》》」
最奥をグッと貫かれた瞬間、僕は中だけで達し、その後完全に理性を失った。
与えられた充足感は、玩具とは比べ物にならず、僕は無我夢中でクライヴの熱をその後も求めた。いつ自分が意識を手放したのかを、僕は覚えていない。