【第三話】代え






 格納庫に、ゆっくりと機体が入る。
 動きが停止すると、コクピットの中の灯りが消失し、球体のみが淡い緑の光を放つ状態になった。手で触れると、シートベルトが外れたので、昼斗は小さく吐息した。現実感を喪失しているというのに疲労感が著しく、そのままぼんやりしていると、左手のハッチが開いた。

「貴方が、通信していた粕谷さんですか?」

 顔を覗かせたのは、ヘルメットをかぶった眼鏡の男性だった。ぐったりとしたままで昼斗が頷くと、二度頷いてから、彼は座席を見た。

「……煙道一佐は、お亡くなりに?」
「……」
「まぁ、よくある事です。人は死にますから。ただ、代わりは、まだ数名います。けれどこの機体には代わりは存在しないので、貴方がいてくれて助かりました」
「――え?」

 その言葉に、昼斗は狼狽えた。昼斗の中において、機械は、あくまでも機械だった。しかし人間は、生きている。機械とは違い、代えがきかないのは、人間のはずだった。

「今から人型戦略機の点検をしますので、君は念のため医務室に行くといい」
「……」
「いやぁ、パイロット適性があってよかったねぇ。さぁ、降りて」

 眼鏡の男性は笑顔だった。
 昼斗は何か言おうと思ったが、何を言えばいいのか見当もつかず、入れ違いで素直に外へと出た。そこには梯子がある。降りていくと、タンカーがあり、そちらに誘導された。救急隊員のようで、彼らは昼斗に対し、優しかった。横たわるように指示をし、「検査をするから少し休むといいですよ」と声をかけてくれた。その時になって漸く昼斗は、涙ぐんだ。何が起きているのか、理解が出来ない。

「ここは、何処なんですか?」
「安全な基地です。何も心配はいりません」
「基地って……?」

 続けて尋ねた昼斗に対し、隊員達が首を振る。

「落ち着いてから、説明があると思いますよ。我々の口からはお伝え出来ません」