4:モンスターの部屋:一回目:初めての魔王(★)


 深い緑色にすら見える暗い髪に、緑色っぽい黒い目をした青年だった。触れた腕は、着やせするのか、それなりに筋肉が着いているようだ。背は僕よりも高そうだった。切れ長の瞳が鋭利に見える。

「大丈夫か?」
「……」

 答えようとしたが、喉が枯れてしまって、何も言えなかった。
 その上まだ体が熱くて、青年の腕の感触と温度に、体が辛くなってくる。

「≪ヒトデ触手(大)≫は、Lv.100でも危ないからな」

 苦笑するように言った青年は、それから僕をのぞき込んだ。

「お前、初心者魔王か。【グリム】な。俺は名乗らないぞ、お前もステータスを見ればいいから」

 その言葉に緩慢に頷いて、僕は≪ステータス閲覧≫と、声は出ないものの必死で呟いた。音は出なかったが、少なくとも唇はそのように動いたと思う。



【基本ステータス】

NAME(名前):北斗(ほくと)
Lv.(レベル):10560
AGE(年齢):20歳
JOB(職業):魔王ダンジョンマスター
HP(体力):9018500
MP(魔力):1004592
SPスキルポイント:4000000
CRクリエイトポイント:8960000000
LUC(幸運):120045


 圧倒的に僕よりも強い。それに、やっぱり僕の幸運は予想以上に低い気がする。
 スキルなどは見られないようだった。

「≪ヒトデ触手(大)≫は、相手に媚薬に似た白い体液を飲ませるからな。災難だったな。まさか14時間も嬲られるとは思わなかったけど」
「……っあ」
「お、声出るようになってきたか? 流石魔王。治癒能力高いって良いよな、俺達」
「14時間……?」
「ああ。お前が捕まるところ見てて、休憩がてら昼に見た時にまだいたから、そろそろ帰るかと思った今、また見に来たら、まだ捕まってるんだもんな」

 楽しそうに、何でもないことのように北斗が言った。

 助けてくれたことに感謝して、なんていい人なんだろうと思っていたのだが、一気に、見ていたんなら最初に助けろよと思って苛立った。

 僕の不機嫌さが顔に出ていたのか、フッと吐息に笑みを乗せ、北斗が肩をすくめた。

「てっきりレベル上げしてるんだと思ったんだよ。この”部屋”は全ての魔王のマスター室から共通してる場所だからな」
「レベルって……そんなはずない……」
「もしくは相当の淫乱か、快楽でおかしくなってんのかと思ったんだよ。大体お前かなりレベルあがったのに、倒そうともしなかったし」
「杖が折れちゃったんだ」
「は? そりゃ災難だな。ま、レベルあがれば、杖が無くてもスキルを使えるようになるからなぁ。それより、体大丈夫か?」
「……っ」

 北斗に耳へと息を吹きかけられ、僕はぞくりとした。実際まだ、体が熱いのだ。

「≪ヒトデ触手(大)≫は、≪薬師の気まぐれPOT≫を飲まないと、三日は快楽が消えないからなぁ」
「なッ」
「一本80000G」
「しょ、所持金って何処で見るの?」
「財布持ってないのか? ああ、そうか。財布はアイテムだもんな。通貨は分かるか?」
僕は首を振った。
「ゴールドだ。お前が何処の世界から来たのかは知らないが、10ってるから、やろうか? ≪薬師の気まぐれPOT≫」
「お願……うッ」
「ただでやるほど、俺は優しくないけどな。ま、まず今のお前のレベルを確認してみろよ」


【基本ステータス】……基本以外、変化があったモノを表示します。

NAME(名前):グリム
Lv.(レベル):34AGE(年齢):0歳
JOB(職業):魔王ダンジョンマスター
HP(体力):100139
MP(魔力):100337
SPスキルポイント:15000
CRクリエイトポイント:110000
LUC(幸運):140

【スキル】

≪騒がしいバッハ≫↑New

【アイテム】

・初心者魔王の服(上・下・靴)――破損
・ヒトデの涙(弛緩薬)×299↑New
・触手の滴(媚薬)×1099↑New



「すごくレベルが上がってる……」
「だろ?」
「だけど破損した装備ってどうやって直せば良いの?」
「連合会本部に行くか、レベルあげて【特典スキル】を取得するかだな。俺が使えるから直してやるよ。ま、マスター室に戻れば、杖は無理でも服は別の服を出せるけど」
「有難う……杖が無くなっちゃったんだけど」
「俺が昔つかってた奴をやる――けどまだ、ちょっとレベルが足りないな。それに体も熱いんだろ?」

 僕を地におろし、急に北斗がのしかかってきた。
 まだ力が抜けたままだった僕は、あっさりと押し倒された。

「え?」
「モンスターとやるより、Lv.が上で”力”の強い魔王とヤる方がレベルは上がる」
「や、やだよ。大体、僕は男だし」
「何言ってんだよ、この”モンスターの部屋”には男しかいねぇよ」
「え」
「俺結構お前のこと好みだし、レベル上げ手伝ってやるよ。レベルは上がれば上がるほど、上げづらくなるけどな」

 そう言うとはだけたままだった僕の胸に、北斗の手が触れた。

「っひ」

 左手で優しく乳首を摘まれ、僕は体を震わせた。

 すると唇を重ねられ、深々とキスされた。舌を追いつめられ、絡め取られて引き出され、甘噛みされる。

「ン」

 鼻を抜けるような声が出た。僕は童貞なのに、初めてが同性だなんて、嫌、初めてはモンスターなのかな。そうだ、僕は童貞だったと思い出した。

 唾液が引き合う唇と唇。
 それから指先を二本口の中へと突っ込まれ、舌を刺激された。

「かはっ、う」

 引き抜かれた指を、まだぐちゃぐちゃな、下の孔へと付き入れられる。

「どろっどろだな」
「や、ぁあ」
「ここら辺か?」
「!」

 前立腺を優しく刺激され、僕は目を見開いた。再び涙が浮かんでくる。

「ああっ、あ、あ、あ、ン――ッ」

 ビリビリと強い快楽が、僕の背筋をしならせた。

「此処が気持ち良いわけだ」
「や、ううッ、あ、ああっ、止め」
「止めても良いのか?」

 僕の言葉にあっさりと、北斗が指を引き抜いた。だが快楽一色に染まっている僕の体も意識も、ガクガクと震え、さらなる刺激を求めていた。

「素直になれよ、気持ちいいんだろ?」
「ッ」
「別に俺は帰っても良いし、杖も服もPOTも何も渡さなくても良いんだぞ。強姦は趣味じゃない。合意なら大歓迎だけどな。なぁ――言えよ。続きをして欲しいって」

「……っ、あ」

 涙が再び浮かんできた。
 本心を言えば、もうこれ以上ナニカされたくなかった。
 だけどそれは乖離してしまった理性の言葉で、僕の体は熱を解放したくて仕方がなかった。だから気づけば口走っていた。

「お願い、挿れて」
「ん。いいぞ」

 そう言うと、北斗が僕の中を陰茎で貫いた。

「うあああッ!!」

 その圧迫感に、グニョグニョとしていた触手とは異なる堅さと熱の暴力に、僕は顔をのけぞらせた。喉がピクピクと動いたのが自分でもわかり、気づけばこらえていた涙がこぼれてしまっていた。

「や、やぁあ」
「気持ちいいんだろ?」
「う、うん……あ、はぁ、うう」
「動くぞ」
「ひゃ、ああああ!!」

 そのまま激しく突かれて、僕は理性を失った。

「あ、ああっ、やぁ、何これ、あ、知らない、僕こんなの知らな、あ、ああああ」
「中が熱くて絡みついてくるな。すごいよく締まる」

 そう言って、揺さぶられた。その刺激に僕の体が震える。
 実況されるのが恥ずかしくて、僕はきつく瞼を伏せた。
 唇を噛んで声をこらえようにも、そんな余裕何処にも無かった。

「う!」

 同時に両手で乳首を捕まれ、僕は目を見開いた。
 しばらくの間中と乳首を嬲られた。浅く腰を引いたり、ゆっくりと抜き差しされている内に、僕は訳が分からなくなってしまった。最も気持ちいい場所を突き上げられた瞬間には、懇願していた。

「もう無理だよ、イかせて」
「ああ。俺も出す」
「ンあ――!!」

 中に熱い感触がした。ナニカが飛び散るように、体内を満たしていく。
 それから陰茎を引き抜き、指を鳴らした北斗に、口元へと瓶をあてがわれた。
 そのまま飲まされる。

「ん」

 喉が酷く渇いていた事もあり素直に飲むと、一気に体から熱が引いた。

「なかなか良い体してるな、お前」
「え、あ」

 しかし思考はまだぼんやりとしていた。

「POT飲んだから、楽になっただろ?」

 言われてみればその通りで、僕は何度も頷いた。
 そんな僕に、掌を北斗があてがうと、服が元の通りに修繕された。

 それから、飴色の先端が渦巻いていて柄の長い杖を渡された。いかにも魔法使いが持っていそうな杖だった。何故そう思うのかは分からなかったけど、多分僕はそういう印象を忘れた記憶の中で持っていたのだろう。

「やるよ」
「有難う」

 受け取ると、北斗が微笑した。

「ステータス、また確認してみろよ」



【基本ステータス】……NAMEからJOBまでと、本日の新規項目のみ表示します。

NAME(名前):グリム
Lv.(レベル):135
AGE(年齢):0歳
JOB(職業):魔王ダンジョンマスター
CRクリエイトポイント:20600000
LUC(幸運):16


【スキル】

≪騒がしいバッハ≫……その場にいる全ての敵の認識を狂わせます↑New


【アイテム】

・初心者魔王の服(上・下・靴)――修理済み
・初心者魔術師の杖↑New
・ヒトデの涙(弛緩薬)×299
・触手の滴(媚薬)×1099

「……すごくレベルが上がってる」

 僕が呟くと、北斗が楽しそうな顔で頷いた。

「魔王とヤるとそうなんだよ。ま、手加減してやったから、上がり具合はこんなもんだろうな。なんなら、俺のセフレになるか? すぐにレベルが上がるぞ」
「嫌だ」
「じゃあ、せいぜいモンスターに楽しませてもらえ。Lv.100じゃないと使えない杖を装備してるんだから、殺すもよし、犯されるもよしだ。頑張ってダンジョン作れよ」

 そういうと、北斗が姿を消した。
 僕はよろよろと立ち上がり、帰る事が可能なのかは分からなかったが呟くことにした。

「≪総合転移≫」

 すると元々のマスター室へと戻ってこれた。
 疲れきっていたので、そのまま、部屋のベッドに体を預ける。


 それから僕は、泥のように眠ってしまったのだった。