【三十一】もっと(★)






 するするとシュトルフに服をはだけられた俺は、寝台の上で、両手でシーツを握っている。上半身も寝台に預け、膝だけおっている。そんな俺の後孔を、シュトルフが指でほぐしている。時に前立腺を刺激される度、俺はビクリと震えて、必死に声を飲み込み、額をシーツに押し付けている。

 既に陰茎は張り詰めていて、シーツに透明な雫を垂らしている。反り返った俺の陰茎の先からは、先走りの液がひっきりなしに出ている。今日はまだ、一度も前を触られていないというのに。

「っ、ぁ……」

 シュトルフの三本の指が、バラバラに動く。その度に香油の水音が響く。
 ――もう、二時間は経過した。
 俺は城の時計塔の鐘の音を、八回を一度、九回を一度、つまり二度聞いた。
 もう十時に近いかも知れない。

「ぅ、ぁァ……」

 感じる場所を指で刺激されると、切ない声が溢れてしまう。羞恥から必死で声を抑えようと試みるのに、それが出来なくて、呼吸をするのも必死になってしまって、俺は目に涙を浮かべている。

 どんどん内壁を広げられていく。
 次第にすんなりとシュトルフの指が動くようになっていく。

 俺はといえば、上がる呼吸をなんとか落ち着けようとしながら、ただ震えてばかりだ。

「んン」

 その時、シュトルフが三本の指を引き抜いた。

「ひゃ」

 そして明らかに香油を付け足して、今度は指を一本だけ挿入してきた。広げられていた俺の後孔は、一本だけの指をすんなりと受け入れた。どころか――足りないと明確に思わせられた。グチュリグチュリと人差し指で内部をかき混ぜられていると、先程までの三本の指での刺激が恋しくなる。

 同時に、浅いところを弄られると、俺の体が、より深い場所への刺激を求めるようになった。何度か長い指先が暴いた俺の奥、あちらをもっと……と、考えてしまう。だがそれは、即ち指では足りないという事でもある。

 今だって、一本だけになってしまったから、三本の指が恋しい。

「シュトルフ……」
「辛いか?」
「うん、ぁァ、うん」
「――抜くか」
「違う、や、あぁァァ。お願いだから、う、ぁぁァ」
「なんだ?」
「も、もっと……もっとしてくれ……」
「っ」

 思わず俺が哀願すると、シュトルフがあからさまに息を飲んだ気配がした。俺は快楽由来の涙で滲む瞳を、首を動かし、ゆっくりとシュトルフに向ける。

「……クラウス」
「シュトルフ……ぁ、ぁア」
「……」
「シュトルフ、んぁ」
「……結婚するまで、初夜までは待とうと思っていたんだが」

 その時、勢いよく指を引き抜かれ、俺は息を詰めた。直後、ベルトを外す音が響き、気が付けば、熱くて硬いものが、俺の菊門にあてがわれていた。

「ん、ン……っ、う、うあ」

 ギュッとシーツを握り締め、俺は目もきつく閉じた。まなじりから、生理的な涙が零れていく。

「挿れるぞ」
「あ……」
「『もっと』欲しいんだろう?」
「あ、あ、早く――……っ、んンあああああ!!」

 一気に雁首部分までが、俺の中に挿ってきた。熱くて硬いシュトルフの肉茎は、そこまで挿った時、一度動きを止めた。

「クラウス、辛いか?」
「う、ぁ……あ、あ、あ――気持ち良、っン――!!」

 俺が無我夢中で言おうとすると、そのまま一気に貫かれた。

「ひ、ぁ、ぁ、あああ、深い、やめ、うあああ!」

 指とは比べ物にならない巨大な熱が俺を穿つ。根元までシュトルフのものが挿いりきった瞬間、気づくと俺は放っていた。必死で息をしながら、飛び散ってシーツを汚した白液を自覚する。……まさかの、ところてん……。でも、これはシュトルフが悪い。これまで丹念に丹念に、本当に丹念に俺の体を開いたくせに、急に激しくこんな風に……痛みなんてゼロだ。だけど俺の中は満杯で、とにかく気持ち良い。

「ん、ン!」

 シュトルフが片手で俺の腰を掴み、もう一方の左手で、俺の陰茎を握った。

「中だけで感じてくれたのか」
「っ、ぁ」
「俺のモノで」
「……ッ」
「悪いが――もう止まりそうにない。離してはやれない。覚悟を決めてくれ」

 そう言うと、シュトルフがゆっくりと一度俺を突き上げた。俺が思わず目を開けると、今度は緩慢に体を揺さぶり始める。

「あ、あ、あ」

 シュトルフが体を揺らす度に、それに合わせて、俺の口からは声が出てしまう。もう声をこらえるなんていう概念は、どこにもない。脳がグラグラする感覚だ。快楽で痺れて、他の何事も考えられなくなる。俺は今、シュトルフの事しか考えられない。

「ああ……あああ! あ!」

 ぐり、と、俺の感じる場所を、シュトルフの陰茎が抉るように突き上げた。目を見開いた俺の双眸からは、涙が零れ落ちる。

 こんな状態が続いたら、俺はおかしくなってしまう。息ができない。体が熱い。

「あ、あ、ンんっ……ふ、ぁ……んんン! う、うあ……あああ!」

 シュトルフが両手で俺の腰を掴み、激しく打ち付け始めた。俺は快楽から泣き叫ぶしかない。気持ち良い。純粋な快感が、俺の体を絡め取る。

「ひ、く……ぅ」
「出すぞ」
「あ。あ、あ――あああああ!!」

 直後、一際激しく貫かれ、俺は内部に飛び散る白液の感触を、初めて知った。
 同時に気づけば、俺も二度目の射精をしていて、ぐったりと寝台に上半身を預けてしまった。いつの間にか、抽挿されている内に硬度を取り戻していた俺の陰茎は、あっさりと果てたわけだが、連続でこんな風に果てた事は無かったから、頭が真っ白に染まる。

「明日と明後日の休みは、純粋に旅疲れをとってもらう事と、この城に慣れてもらう事を目的としていたんだけどな」
「ぁ、は……っ、ッ」
「悪いが今夜は、いいや明日まで、休ませてやれそうにはない」
「ふ、ぁ」

 何事か言いながら、一度陰茎を引き抜いたシュトルフが、力の抜けきっている俺の体を反転させた。そして右の太ももを持ち上げると、いつの間にかまた昂ぶっていたらしい肉茎の先端を、俺の菊門にあてがった。

「う、うあ」

 そのまま今度は斜めから貫かれる。実直に入ってきた硬い陰茎が、今度はまた別の角度から、俺を深く貫いた。俺の内部が、シュトルフの形を記憶するように収縮している。

「クラウス」
「あ、あ……」
「夜はまだこれからだからな?」
「んン――!!」

 シュトルフの肉茎が、俺がこれまで知らなかったより奥深くを暴く。
俺はもう、泣き叫ぶことしか出来なかった。