【二】ケース:2 フォロワー≒友達(★)
そのグループDM部屋はとりあえずよく分からないが、似たようなのが5つくらいある。
しかしながら、俺には個別DMをしている人は少ない。
三人くらいだ。
俺のイメージだと人気者の素敵な人はいっぱいしているのかなと思う。
だが、俺は用事がなければDMはしない。なのだが、「今日はモナカ食べたよ」と送ってくるフォロワーがいる。俺は過去に一度、この人をブロックした事がある。だって、モナカに興味はない。それに見解が違う事をいってくるから、精神衛生上、関わらない方がいいと思ったのである。が、ふと思い立って、ブロック解除後、紆余曲折を経て、再びつながった。
「今日はあんみつを食べたよ」
「ほう。よかったな」
俺はそう返しつつ、最近気の合うフォロワーさんについて思いを馳せていた。多くのみんなに慕われている。その人を念頭に置いて発言した。
「俺って、友達少ないよなぁ」
「え? 僕は?」
俺は目を見開いた。え? ツ●ッター上の付き合いだよな? それってつまり……
「フォロワー……? 大切なフォロワーだよ!」
「友達じゃなかった!?」
驚かれた俺、びっくりした。熟考してみる。リアルに俺は、友達が少ない。すぐに思い当たるのは、大学時代からの親友の、篠崎(しのざき)と、会社員時代に飲んでた時に出来た友達の、百合岡(ゆりおか)さんだけだ。
「……」
そしてその二人とよりも、圧倒的に毎日話しているのが、このモナカについて語ってくる、礼(らい)さんである。
「俺と礼さんって友達だったんだ……」
「いや、びっくりしたよ……」
「ごめん」
この時は、これで打ち切った。ちょっと嬉しかった。俺としては、他人だと思っていたし、思われていると思っていた人が、俺の事を友達だと思っていてくれたのが、純粋に嬉しかった。
その夜はデートだったのだが、俺は終始顔を緩ませていた。
「なんか嬉しそうだけど、何かあった?」
「なにもないよ」
「嘘だろ、顔が融けてる」
「……友達っていいね」
「そうか? 俺はお前と友達にだけはなりたくないけどな。今更友達扱いされたら泣くというかキレ散らかすわ」
「うん?」
「なんでもねぇよ。で? 何があったん?」
「あのな――」
と、俺は意気揚々と語った。すると相変わらず遠くを見ながら、隆杉は笑っていた。
そして俺達は、ホテルに到着した。
田舎過ぎてラブホが存在しないため、俺達が致す時は、基本ビジネスホテルだ。
「まぁ、忘れろ。俺だけを見てろよな?」
「うん?」
「お前はプライベートについて全然話さないが、いざ話されると嫉妬するわ」
「ん?」
「まぁいい口を閉じろ」
「ン」
こうして俺は口を塞がれた。隆杉のキスが荒々しいのは、珍しい。反射的に目を閉じて受け入れながら、俺は脳裏で考えていた。隆杉について、存分に誰かに惚気たい。でもそんな友達いない……いいや、今日礼さんは俺を友達だと言ってくれたのだから、惚気てもいいか? 嫌でも俺が友達なら鬱陶しいから惚気とか聞きたくないな?
「何考えてんだよ?」
「あ」
「俺を見てろって言っただろ」
「……好き」
「反則」
こうして俺は隆杉の首に腕を回し、思考を打ち消した。右胸を愛撫されながら、こんなに愛してる隆杉の事は、やっぱり人には教えたくないし、惚気るのは止めておこうと思った。左胸の突起を指先で弾かれた頃には、考え事をする余裕がなくなり始めていた。
「あ、ああっ――!!」
気づくと、体をどろどろにされていて、いつの間にか隆杉の陰茎が俺の中に挿いっていた。思わず締め付けてしまいながら、俺は隆杉に抱き着く。その時、ふっと頭に、「ママ味がある」という言葉がよぎった。次の企画のテーマだ。隆杉にはママ味はないが、俺は次にそれを描くんだったなぁ――……
「考え事か? 本当余裕そうだな」
「ま、待って、あ、あ、ああああ、そこされたら、死んじゃう!」
「集中しろ」
「やぁああ、イく!!!!」
このようにして、その夜は散々交わった。
――事後。
気づくと寝ていた俺が目を開けると、隆杉が俺を腕枕していた。
「で? 友達?」
「う、うん! 俺にも友達がいたんだよ! いや、前から少数はいたんだけどさ」
「なんて名前?」
「ん……垢5つくらいある人だけど、心の中では、あ●みつ姫って呼んでる」
「それ本当に友達なの?」
「俺は違うと思ってたけど、俺を友達だと言ってくれたよ」
「いや、そうじゃなく。相手が不憫だよ……くっそ。嫉妬させろよ。相手が不憫ってなんだよ、本当……」
「?」
「お前が仲いいと思ってるのは分かる。相手がそれに答えてるのも分かる。でも、お前さ……はぁ。まぁいい。お前の様々なハードルの高さ的に、受け入れられてる俺はグッジョブ」
「グッジョブ? 昔のネットスラングかな?」
「放っておけ。それより、お前がいかにも好きそうな心霊スポット見つけておいたぞ」
「行く!!」
と、こうして俺達は、翌朝ホテルを後にした。