【70】指(★)



「なるほどね」
「あの、先生」
「ん?」
「見ると、自慰してるとか、経験人数とか分かるんですか?」
「どう思う?」
「よく分からないから聞いてみたんです」

 私の答えに、先生が小さく笑った。
 いつもの先生の顔だった。優しい目に戻っていた。

「雛辻さんは、見ると分かるの?」
「見たことないです」
「じゃあ今後も見ないだろうし、知らなくて良いんじゃない。それにしても、案外色っぽい下着だね」
「可愛いですよね。友達が下着屋さんでバイトしてたから、一緒にみんなで買いに行ってたんです」
「ああ、なるほど。じゃあ、上も一緒か」
「そうです」
「見せて」
「はい! すごく可愛くて」
「そうなんだ」

 私が可愛さを力説していると、先生が上の服を脱がせてくれた。
 それから静かに見たあと、少しだけ苦笑するように私を見た。
 あんまり可愛くなかったのだろうか?

「可愛くないです?」
「可愛いかもしれないけど、俺は男だから、こういうの見たら押し倒したくなるだけ」
「っ」
「下着よりその中身の方が興味沸いちゃう。だから俺には良いけど、他の男に、そういう熱弁はしないほうが良いな」
「は、はい!」
「しかしまぁ、パッと見で思ってはいたけど、全体的に細いのに胸はそれなりにあるよね」
「まぁそこそこ」
「――一応上も見せて」
「あ、はい」

 それから私はブラを外した。
 すると先生がじっくりと見ていたものだから、恥ずかしくなってきて聞いた。

「どうですか先生?」
「噛みつて乱暴に押し倒したい――というのは取り置き、若いというかスポーツやってたからなのかは知らないけど、へぇ、胸単品でもスタイル良いんだ」
「あはは」
「雛辻さんはどう思うの?」
「んー? 温泉に行くと、みんなもっと色が濃いのに、どうして私やお母さんはピンクなのかと思って」
「後で少し赤くしてあげようか?」
「そんなことができるんですか?」
「まぁね。とりあえず今日の目的は自慰とかに関してで下のチェックだから、先にそっちを確認させて。たまにやる時みたいにやってみて」
「は、はい」

 私は素直に言われた通りにした。
 しかしいつもと同じで、あんまりよく分からない。
 先生は、そんな私と、私の指を静かに見ていた。

「こんな感じで終わりです」
「終わり? それ、気持ち良いの?」
「いつもそれがよく分からないから、終わるんです。多分気持ち良くないです」
「そうだろうね――ちょっとチェックさせて」

 そう口にし、先生が、片手で広げ、もう一方の指で刺激した。

「あ!」
「――ごめん、強かったね。これは?」
「やだ!」
「――これは?」
「っ、ちょっと強いです」
「……こんな感じ?」
「ぁ……ぁ……ああっ、待って」
「敏感すぎるな。この強さか。気持ち良いでしょ?」
「ぁぁあああっッ」

 そのまま指先で刺激され、気持ち良すぎてプツンときた。
 体から一気に力が抜ける。
 すると先生が驚いた顔をした。

「――イっちゃった?」
「たぶん……はぁ……」
「たまってたとしても早すぎるな。というか、これ――」
「ひ」

 続いて皮をめくられた瞬間、私は目を見開いた。
 人生で初めてのことだった。

「雛辻さん?」
「……」
「――これだけでまたイっちゃったんだ。これ、直接弄ったらどうなるんだ」
「……? 今も弄って――」
「まぁ……へぇ。なるほどね」

 先生が一瞬だけ残忍な笑みを浮かべた気がしたが、すぐにそれは消えた。

「ありがとう。あとは中も一応チェックしてとりあえず終わり。もう少し頑張って」
「はい」
「指入れるよ」

 ゆっくりと割れ目を先生が人差し指で何度かなぞり、それから差し入れた。
 しばらくしてから、動きが止まった。

「きつい?」
「正直、おっきくて、いっぱいな感じです」
「こっちの指もそういう感じだけどさ。もう濡れまくってるからすぐ入るけど――んー……どこが好き?」
「たぶん、右の奥です」
「この辺?」
「あああああ」
「まだイっちゃだめだよ。その目、やばいな。ゾクゾクする。ねぇ、こっちは?」
「えっ、あ、え? や、あああああ、なんで、なんでそっちも、あああああ」
「左側は広野くん、触ってくれなかったんだ?」
「は、はい、あんまり……っあ、先生、もう、イきたい、イきたいです」
「そうみたいだね。こらえ性がない。腰揺れてるよ。太腿も震えてる」
「や、いや」
「何回もイけるのはいいけど、多分ね、ちゃんとイけてないんだよ。軽くしかイってない」
「あ、あ」
「今からしっかりイかせてあげるから、きちんと覚えて」

 その後先生は、唇と舌でクリを刺激し、指で奥を刺激した。
 気づくと寝台に私はぐったりと全身を預けていて、汗をかいていた。
 全身に力が入らない。

「つくづく研究しがいのある人だな。弄ったらあきるかと思ったら、体まで研究しがいがある」
「……」
「今、どんな感じ?」
「……」
「まぁ俺上手いけどさ、これだけで、そこまで感じられちゃうとな。ちゃんとイけたみたいで何よりだけど。これがイくってことだから」
「……」
「あと一人でする時は、下着の上からが良い。普通に触ると強すぎるから、ちゃんと触れないんだよ。まぁもう俺がいるからいらないだろうけど」
「……」
「――……眠れそうなら、少し休むと良い。眠りな」

 小さく頷いて、私はそのまま微睡んだ。
 そしていつになく深く眠った。