【77】子供


 すると、私のマンションの荷物が全部あった。
 引越し済みで、今日からここに住むらしい!

 会社も退職済みになっているようだった!
 挨拶不要だけど気が向いたら行くようにとのことである。

 それらを整理する前に、一度二人でベッドに入った。

 こんな感じで、先生の研究休暇が終わるまでの間は、ひたすら二人で寝ていた。

 私が目を覚ますたびに荷物は整理されていったし、ご飯も作ってあった。
 外食にも何回か行った。

 他には買い物に出かけた。新生活のお皿などを買いに行ったのだが、服なども買ってもらった。生活費としてクレジットカードを渡され、食費や光熱費類は別にするので、服などをそれで買うようにと言われたのだ。先生と相談しながら買うのは新鮮だった。これが、奥様!

 一ヶ月たって、先生がお仕事に行くようになった。
 驚いたことに、お休みは不定期で、毎日どこかにお仕事に行く。

 帰宅すると、私に朝食を食べさせて、一緒に体を重ねてから眠り、早い日は夕食を作って冷蔵庫かテーブルの上、それ以外は一緒に食べてから出かける。これでも休みを増やしたんだと言って先生は笑っていた。勤務時間も縮めているらしい。

 信じられない。私よりもお仕事のストレスがあるし、働き過ぎなのではないかと振り返って指摘したら、笑われた。

 私はほとんどは、先生が眠ったあと起きているかすぐ起きていて、先生がいない日以外は日中活動しているので、先生が働いている時は寝ている。政宗さんいわく、軟禁らしいが、そうなのだろうか? 元々ひきこもりだからわからない。

 そして二ヶ月が少し過ぎたとき、子供ができたと分かった。

「禁煙しなきゃですね!」

 できるかなとドキドキしながら聞いた。

「もうしてるよ」
「え?」
「徐々に減らしてて今、何にも入ってない見た目煙草のものに火をつけてるだけだから。俺の会社で出してる禁煙アイテムの見た目をマルボロにしておいたんだ」
「!」
「一時的に禁煙してもらうって言ったでしょ?」

 先生は、本当にすごい。

「先生にできないことってあるんですか!?」
「君の思考回路と気持ちを全部理解して、俺の気持ちを全部伝えたいんだけど、今のところできないみたいだ」
「まぁ違う人間ですしね」
「それはそうなんだけどさぁ。まぁ、そういうところ」

 先生は笑っていた。
 こうして過ごし、子供の性別が分かることになった。
 ――男女の双子だった!

「俺の家、双子が多いんだよね」
「そうなんですか! だから人数が多いの?」
「それもあるね。名前どうしようか?」
「色の名前はどうでしょうか?」
「俺が紫って書くから?」
「はい! 一文字の方が苗字にも合うし! 一文字で!」
「いいよ。何色が好き?」
「好きな色は黒ですけど、それはなんだか猫みたいなので、うーん、青?」
「まぁ良いかも。他には?」
「うーん……紺、白、緑」
「紺と緑にしよう。紫にもだけど、糸へんが入ってる」
「おお! はい!」

 こうして、男の子がこん、女の子がみどりに決まった。

 途中から入院し、先生が昼間なのに長い時間一緒にいてくれた。
 そして無事に子供が生まれた。

「君の家の女系、外見遺伝子強いよね」
「え?」
「女の人、全員似てる。俺の方は、だいたい父親に女の子が似るんだけど。この子は俺を取り入れて育つと想定すると、君よりちょっと祖先に戻って、キツめ美人になりそうだ。俺に似た性格とプライドの高さに育つか、君のように抜けてるか、それ以外かで、だいぶ対象が変わるけど、どのパターンでもモテるだろうな、それなりに」
「この子は私に似てるんですか? 私には、二人共そっくりに見えるから、じゃあ二人とも私似?」
「ううん。女の子――緑だけ。髪の感じやなによりつむじの向きとか、色々で分かる」
「へぇ! じゃあ男の子は、紫さんに似てるの?」
「うん。かなりね。俺のところも、男の子も父親似が半数ではあるけど。ただの気がする、だけど、男の子は外見は俺だけど中身が君っぽい、奇妙な人間になる気がする。もしかすると、いや……うーん」
「なんですか? 気になる!」
「かなりアレかも。アレじゃなくても、お互いの家族で一番くらい、IQ高いかも。少なくとも、今の時点では」
「えええ!」
「どうしようね。専門教育というか……天才児教育受けさせた方が良いのかどうなのか」
「それなら、私がついていきます! 暇だし!」
「ダメだから。ありえない選択肢だ」
「ええええ!?」
「……適当に俺が現地で職探すか、最悪貯金と副収入で勝手に入ってくるのでも暮らせるから、一緒に行こう」
「はい! だけど先生、お仕事は?」
「二歳半くらいまで様子みて、三歳で決定して、決定し次第行けるようにしておくよ。決定しなかったら、復職か転職っていう流れ」
「分かりました!」
「だけど君に似た娘と、中身が君似の息子とかすごく幸福な気もするけど、すごいな」
「まだ分からないじゃないですか!」
「じゃあ君はどんな子になると思うの?」
「親は期待をせず見守ると良い気がします」
「なるほど」

 退院して戻り、数日を四人で過ごした。

 先生はお休みをとってくれた。子供のお世話は、大変だが楽しい。
 しかし先生の方が沢山やってくれた。

 それからしばらくしたある日、もう大丈夫だからと言われて、私は押し倒された。

 一年我慢するのは辛かったといって苦笑した先生は、なんと浮気をしなかったらしい! 聞いて唖然としたら、冷ややかな目で見られた。

 また子供が出来て入院していたら、教育機関に行けないと話したら、退院した日からピルを飲ませていたから大丈夫だと言っていて、私は心底驚いた。久しぶりのその日は、何度も何度も体を重ねた。