スイス天才教育総合機関【6】


 この二人、同じ講義をとっているのが、ひとつあったのだ。
 なおそれは、私もとっている。

「ね、ねぇ、今日は私も座っていい? 隣に」
「別にいいよ」

 柾仁さんは笑顔だった。紺は腕を組んだ。

「俺は、はずすか?」
「「待って!」」

 私と柾仁さんの声が揃った。なぜ揃ったのか不思議で、柾仁さんを見ると、視線があった。首をひねりつつも、私達は講義に出た。この講義、出席者全員が講義を聞かずに雑談している、数少ない講義なのだ。

「で、どうしたんだ? わざわざ声をかけてくるんだから、なにか雑談があるんだろう?」

 座るとすぐに紺が言った。たいへん鋭くてありがたい。

「そうなの。ミウと話していてね、東洋系で集まってみようっていう話になったの。彩にも声をかけておいてもらえる?」

 私は鉄壁の作り笑いで言った。誰にも見破られたことがない。私の隣が紺、その向こうが柾仁さんだ。

「なるほど、本題はそっちか」
「え?」
「ちなみに、レイとミレイユは、俺が引き受けてもいいぞ」
「――紺。僕も一緒に見るよ」
「何を言ってるの? 私もあのふたりを見るわよ。むしろレイは私が見るから、ふたりはミレイユをお願――……え? な、なんで? ど、どうして?」

 私が驚くと、ふたりが顔を見合わせた。それから、柾仁さんがほっとしたように大きく息を吐いてから、笑顔を浮かべた。紺は、私を一瞥してから柾仁さんを見た。

「良かったな、柾仁」
「うん。本気で良かったよ」
「何のお話ですの?」

 訳が分からず質問すると、柾仁さんが苦笑した。

「君が僕を好きだって言って、僕を呼び出したらどうしようかと思ってたんだ」
「まぁ! 柾仁さんって、ナルシストだったのね!」
「違うよ。周囲が、僕と君が恋に落ちるのを望んでるんだよ。ここで出会って婚約者になって帰国するのを期待されてるみたいでね」
「なるほど。言われてみると、非常に無難で、私の家柄的に適切ではありますね。はぁ。なるほど。ですがご安心ください。柾仁さんは非常に良い方だと実感しておりますが、全然そういう対象として考えたことはないので」
「僕も全く同じ意見なんだ。良かった! 本当にありがとう!」

 私たちのやりとりに、紺がポツリと言った。

「日本人って、大変だ」

 その後は、三人でミウと彩についての話になった。
 なんでもミウの好意は、バレっバレとのことであった。
 というか、彩もミウのことをどう考えても好きだから安心しろという見解を聞いた。
 こうして日取りを決め、当日は国籍ごとに分かれる設定にし、ミレイユは日系つながりで紺、レイは従妹なので紺、私と柾仁様は日本人ということで、全員で話した後分かれる設定にし、その実、ミウと彩以外は一緒にいることに決まった。紺が全部考えてくれた。

 この一連の流れを話すと(私と柾仁さんの件は黙っておいた)、ミウは大感激した。

 そうして当日が訪れた。
 全体では、最初は、国際経済について話し合った!
 彩とミレイユとレイは真面目だった。紺と柾仁さんと私も真面目なふりだ。
 しかしミウはそれどころではないようだったし、次第に私も動揺してしまった。
 また、レイは途中からあきていた。ミレイユはわけのわからない事を言っている。