【6】★



 気づくと私は空音をそのままソファに押し倒し、上にのっていた。

「悪いけど、絶対に死なせてあげない」
「おい、どけ――」

 何か言いかけた空音の唇を、気づくと私は塞いでいた。
 驚愕したように息を呑んで薄く唇が開いた瞬間、そのまま舌をねじ込んで、口腔を貪った。そのまま彼のネクタイを外し、探偵講義で習った手法で、素早く両手首を彼のネクタイで拘束し、ソファの肘当てに繋いだ。さすがに、男に全力で抵抗されれば分が悪い。私の手際も良いのだが、案外あっさり手を捕まえることができたのが不思議で気づくと、息が出来ていない様子で、空音が少し震えていた。唇を離してじっと見ると、瞳が少し潤んでいる空音は、肩で必死に息をしていた。――慣れていない。

 その隙に、上のシャツのボタンをすべて外し、ベルトも引き抜いた。
 そして改めて馬乗りになり、完全に動きを封じた時、やっと我に返った様子で、空音が声を上げた。

「なにするんだ、いきなり、なにを――」
「いきなり? あら……言われてみると、だいぶ前から、私、あなたに興味があったみたい」
「は?」
「あなた死んじゃうかもしれないんだった。そうね、今しなかったら一生後悔するわね」
「ぅッ」

 首筋を舐めあげて軽く吸ってから、私は空音の乳首をこすった。

「馬鹿か、胸なんて女じゃないんだから、感じるわけが――ぅあっ、やめ」

 初々しい事を言うので、緩急つけて意地悪くいじってやると、震え始めた空音がきつく唇を閉じた。次第に潤んでいく瞳から、いつもの自信はおろか驚愕も消えたようで、心細そうな不安な色と――時に快楽の色が入れ替わりつつ浮かぶようになった。完全に瞳が涙でうるみきった時、その表情に、思わずゾクリとした。私は、男女両方が対等なSEXが好きだ。しかし私の積極性は、もっというと、女性優位なSEXの方が好き、と言って過言ではないようだ。だから気の強い自信家の男を責めることが何よりも好きで、そういう意味で空音は魅力的でもあったのだが――この時やっと私は思い出した。空音はまだ、やっと十五歳になったばかりで、かつ恋愛経験すらなく、女性経験もないという話だったのだ。特に、十五歳――子供であるという部分を、私はこれまですっかり忘れていた。実を言えば、私は童貞も大好きだ。いじめがいがありすぎる。そして見た目は完璧に好みだ。外見が好みの自信家でプライドが高い童貞? なに、この、私の好物の集合体。しかも頭もいいときてる。しかも時折不安そうになるこの顔。ゾクリと何かがこみ上げてきた。なにより、色気がありすぎる。

「ぁ……」

 ついに空音が声を漏らした。こらえきれなくなったのだろう。指の動きをさらに意地悪くし、もう片方を舌先で嬲った。

「っ……お、い、やめ――ン……っ、おい、待て、待ってくれ、おい!」
「あら? 女の子ではないのに、胸で感じてしまったみたいね」
「!」

 私はボトムスの上から、ゆっくりと空音の陰茎を撫でた。
 半分ほど立ち上がっている様子だ。
 それらを脱がせ、私は空音の足を広げた。

「おい、やめ――!」

 空音の声を無視して、陰茎を口に含む。私の頭を挟むように膝を閉じようとしてきたが、根が優しいせいだろう、蹴ったりできないみたいだ。それから私は、こんな部分まで端正にできているんだからすごいなと思いながら、口と舌を動かした。大得意だ。遊びなれた男にすら絶賛される私の口技に、どう考えても初経験だろう空音の陰茎はすぐに大きさを増した。長い。太さも私好みだ。

「やめろ、出るからっ、おい!」

 私は素直に口を離して微笑した。太ももが震えているのが分かるし、声も涙声だ。しかし空音は、さすがは経験不足だ。この状態で、私が口を離したら、どうなるのかわかっていないみたいだ。

「っ……ッ……佳奈……手、はずせ……」
「いやよ」
「!」
「出したそうね」
「……っ……」

 そのまましばらく、微笑みながら見ていた。どんどん空音の瞳の色は、快楽ばかりになっていく。汗ばんだ髪が、白いこめかみに張り付いていた。空音が訴えるように私を見たので、人差し指で、根元から上まで筋をなぞり、たれている先走りの液を掬う。するとビクンと空音の体が震えたが、これでいけないことなど知っている。それから乳首に両手を当ててつまんでこすりながら、耳の奥へと舌を差し込んだ。

「やだ、やめっ、ぅあッ」

 子供っぽい声が上がった。声自体は大人びた音なのに、内容が年相応だ。右と左の耳をなぶり、左が弱いと探り当てた。そのまま、じっくり左耳を舌で、指では乳首を弄んだ。ついに空音は涙をこぼした。しかしまだ必死に声はこらえている。また、どうやら元々かなり敏感らしいとすぐに気づいた。私の好みのど真ん中。

「空音、いきたい?」
「……」
「言ってくれないなら、このままね」
「佳奈……頼むから、もう……っああっ!」
「離してはあげないから。いきたいんでしょう? いきたくなるまで、こうしてる予定よ」
「いきた……っ……」
「いいわよ」

 私は既に見ているだけで濡れきっていたので、下着を脱いでほかは着たまま、中へと導いた。そして亀頭が入った時に、意地悪く笑ってあげた。

「避妊具が無いわね」
「! あ――ま、待って、佳奈!」

 混乱していて気づいていなかった様子の空音には構わず、そのまま腰を下ろした。そして多くの人間は、果てるレベルで締め付けてやった。しかしもう限界だったはずの空音は出さなかった。意外に思ったが微笑したまま、空音をじっとみた。目は完全に欲情しきっている。しかし今度は時折、理性が交じるようになっていた。

「出したら子供が出来てしまうかもしれないものね」
「っ、ぁ、ぁ」

 もう言葉は出ない様子だった。空音の体は快楽一色らしい。だが、本能と理性が格闘しているらしく、空音はギリギリのところで耐えている。可愛い。そこで今までどの男でも我慢できた試しのない動きで腰を動かしてやったら、空音の瞳から理性の色が消え去った。そしてちっとも慣れた様子はないが本能だろう、体を動かし始めた。――が、これが才能なのか、驚くほどうまかった。思わずそのまま私も動いて、私は絶頂を迎えた。褒めてあげたりはしなかったが、人生で三本指に入るくらいうまい。無意識の床上手か。私の中に放つと、空音はガクンと体の力が抜けてしまったようだった。