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「では続いて第二の厄災について――『第一の厄災を防ぐことができなければ、第二の厄災が起こるであろう。偽ゼスペリアを称えないものは口から血を流し、称えるものはシしてなお生き残るだろう。これもまた偽ゼスペリアは、自分はゼスペリアの写し身であるから、そばにいれば安全だと説くだろう』――そして解決策だ。『真の使徒ゼストの写し身と、血を分けし青き光の神の皇帝の血統――二人が照らす青い月の光の中に、人々を集めよ。その中にいるものは救われる。その間に、解決策を全ての正しき信徒は話し合わなければならない。第三の厄災は、第一および第二を阻止したとしても、偽ゼスペリアが生きる限り、起きる場合がある故だ』――これに関しては、ゼクス猊下はどう思う?」
「――闇汚染が進み、偽ゼスペリア本人のPSY受容体の変形による、PSY値の上限がなくなる異常で、本人の意識・無意識に関わらず、PKとOtherの青を撒き散らしている状態となり、周囲に居るものが心臓か肺の破裂により、吐血や喀血で死亡するということです。ただ、Otherを本人周囲に展開しているため、そこにいる者は、心臓破裂をしても生き返るという原理です。この異常値は、受容体の変形によりストッパーが外れた状態であり、本来人体が保たないため抑制されている値が出る状態で、特異型PSY各過剰症を発症するということです。それで、青い照らす神とは、華族神話の象徴的神でありゼスペリアと同一視される存在で、これは実際には、その前の文明のユエル・ロードクロサイト=ハーヴェストクロウを指しているとされます。この末裔は、ゼスト・ゼスペリア血統およびロードクロサイト血統が確認されていると、読んだことはありますが……意味やどこの誰かは不明ですが、青い月の光というのは、PSY-Other色相の青系統の円形範囲照射のことで、これは二名以上で複合的に用いると完全治癒能力が期待されるといいます……が、どうなんでしょう……個人的に、それは困難であるような気がします。それらを用いるとしても、やはり闇汚染の防止および、第一の厄災で偽ゼスペリアの存在が確認されているのだとしたら、PK遮断衣類や防御服を身につけていれば良いと思います。たとえば闇猫のような……そちらのほうが確実です……」
「ロードクロサイトおよびゼストの末裔は、お前とリュクスとレクスとなる。そしてハーヴェスト侯爵、ザフィス神父。ならびに、時東医師。また、おそらくではあるが、若狭という名の牧師もそうだ」
「え……」
「だが防御服は良いであろうな。その繊維類は? 闇猫と同一で良いのか?」
「――可能であるならば、PK完全遮断色相衣類等の完全PSY文明時、つまりユエルの生存時代の直接の科学技術色相が残っているのは華族なので、そちらから色彩と糸を教えてもらって、それで作成すべきです。匂宮の場合、絶対赤が強いほど単体PKが強く、本人の体の保護のために、強いものはその色彩の赤系統の着物を特に身につけていたはずです。ただし形態は華族和服よりも、遮断状況的に、その……ギルドというところの黒色という人々のローブが角度構成的に最適です……」
「情報を感謝する。隠すべきことは何もないよ、ゼクス猊下。すぐに手配させよう。では次の――『第三の厄災は、第一および第二の厄災と共に密やかに進行しており、この時、より強く顕現する。それは、無数の目がついた黄金の太い触手で蠢き、聖なる者にしか見えない。また、蠢く象の鼻に似たものを多数つけた灰黄色の者もいる。第一と第二の兆候がある場合、時計の針、使徒の数と同じ十二の月の一周りに一度ずつしか出ないであろうが、既にそれらが終わっているか、いきなり第三の厄災が発生したならば、それは少なくとも七度日が巡る度に一度、三度に一度は出るだろう。それはいつも闇夜である。これは第二のあと、あるいは最初から、偽ゼスペリアが眠りについている時に、起こり得る。黒き闇が聖なる十字架で封印されている証だ。しかしながら、その際の抵抗として、偽是スペリアの偽りの神の声と雷が、古の白き丘の紅き点に火を灯したのである――選ばれし信徒は、使徒ゼストの黒翼や使徒ゼストの写し身とともに、それらを殲滅しなければならない。そして白い丘を破壊せよ。丘は複数ある。そして伴う者はまた使徒である可能性が高い。黒き猫であり、犬の牙を持つ、華の首輪をつけた、緑の羽を片腕に縫い付けた者であろう――大元を止めれば、いずれ、消滅するであろう。それは、西のゼルリアの土地の地下深くに広がる、神の叡智のつまりし都市のはずれにある。本体のみ、黒い球体であり、巨大なそれは宙に浮かんでいるであろう。これを破壊する時、ともにいた者は、偽ゼスペリアにはなりえない』――これは?」
「……」
「ゼクス猊下?」
「えっ、あの……それは、タコとゾウで……Br45kWitとOp0k99L8という巨大生体兵器だと、外見的特徴から思うんですが……聖なる者というか、PSY知覚を訓練していないと見えないというか……これ……三日に一度は、ゼスト家直轄部隊で、最下層で倒していました……」
「「「!」」」
「ゼスト家直轄は、黒色と闇猫と猟犬と黒咲――華族の技術、そして緑の羽根というか万象院の技術も身につけていて……この前見た夢だと、ゼルリア大神殿がゼスペリア教会で……それならこれは最下層のことで……都市というのは地下に広がっている廃棄都市遺跡だと思います。そこに限らず、これらの生体兵器は半円形で赤いスイッチ付きの生産兵器が、PSYを受信すると起動してしまうようで……それで、先週、黒い球体を、白い兵器に直接信号を送っているメインシステムだと判定して、猟犬代表の榎波と、完全ロステク兵器研究者の橘と高砂、万が一に備えて医師の時東立会で、俺の指揮――もし俺が薄意味なら、それと一緒に、榛名と政宗と副――若狭と倒しました。念のため、ラフ牧師もいて、その時、黒翼をつけていました。他にも長老の――その、緑羽万象院と朱匂宮という人、あとは、ザフィス神父も来ていました。確かに、あれを破壊してから、頻度が減りましたが、昨日も俺は討伐してきました……黒き闇が聖なる十字架というのは、PSY感情色相の闇汚染の封印形態の一つの聖十字架処置だと思うので、やっぱり闇汚染されていて、第二で止めるか……というより、今誰かが精神汚染されているとかたくさん死んだのでなければ、既に封印されているのではないかと思います……だけど、どこかで俺ではない本当の写し身が止めたとか、そもそも最下層の地下のことは関係ないかもしれません……」
「いいや、あれらの生体兵器の特徴と完全に一致するし、ハーヴェストの古文書にも、最下層がゼルリアであり、そこで使徒ゼストが生きていたという記録がある。また先週から数が減っていることは、俺も報告を受けている――これで、偽ゼスペリア候補は、俺とラクス猊下とリュクス猊下……絶対なさそうだがゼクス猊下か」
「いいや、俺は俺のような気がする。最下層のような貧困や犯罪が万延している土地で闇汚染は起きやすいんだ。俺以外は宗教院に関わりが深かったわけだし……まぁ俺も教会で暮らしていたし、困ったことも封印された記憶もないけど、わからない」
「封印の聖十字は僕の特技なので断言しますが、ゼクス猊下にもレクス伯爵にも僕にも封印暗示はかかっていません。それに闇汚染の場合、先程のような祝詞を聞けば、身体的ダメージを受け、吐血可能性、内出血可能性が高く昏倒することがおおいですが、それもありません。封印がきいていれば、身体的な打撃はありませんが――代わりに、聖十字は全ての周囲の神の御業と呼ばれるようなOtherの青系統や、たとえば聖遺物等に記憶されているOtherを吸収して、無論祝詞等の効力も吸収して維持され、闇の浄化を試みるものなので、おそらく先程の祝詞や気配を感じる事、また、ゼクス猊下がいらした直後に開放した宗教院を覆ったような気配に気づくこともできないでしょう」
「おい、それは、先程リュクス猊下が気づかな――……法王猊下?」
「……――ザフィス神父の処置により、PSY感情色相の汚染により聖十字の封印をかけた記憶がある。ただし闇汚染か否かは私にはわからない。ただし、色は黒く、水面のようで、ザフィス神父が処置をすると、波のように渦を巻いて、固定していたのは覚えている」
「法王猊下、それは闇汚染です。いつ頃ですか?」
「十三歳の年だったと思う。つまり十四年前となる」
「……俺が知っている記録だと、約十五年前とあったから、それかもな」
「法王猊下、どうなさるおつもりですか?」
「……ゼクス猊下はどう思う?」
「ただの偶然かもしれないし、その、猊下が、リュクス猊下という人が、偽ゼスペリアには見えないし、そうだと決まったわけじゃない。やっぱり本当は向こうが本物で、俺がまるで悪者みたいに言ってるのかもしれない……第一、そうだとしても眠っているんなら……だめなのか? 俺、教会の黙示録が消えちゃったから、中身わからないんだ……」
「――リュクスの事は取り置く。そうだな、続けよう。『第四の厄災は、第三の厄災の終了直後に起こるだろう。終了とは、この場合、制圧を指す。制圧しなければ第四の厄災は起きないが、第三の厄災にて人類の大半が滅ぶであろう。して第四の厄災において、偽ゼスペリアは、使徒ゼストの写し身を、「あれこそが黙示録における偽ゼスペリアである」と糾弾するであろう。中には、信じ込む信徒、使徒がいる可能性もある。よって既にそばにいる使徒、自覚ある使徒、全ての聖職者は、真のゼストの写し身を守護しなければならない。闇に染まりし者は、黒曜石の羽根と光る神の涙を持てない。それは使徒ゼストの聖なる刻印であり、契約の子の証だ。黒き黒翼の賢者が見出した真の使徒ゼストの写し身に手渡すであろう。それは、写し身の覚醒の予兆でもある。使徒ゼスト自身が手助けをすることもあるであろう。そうなれば、時は一刻を争う。猶予はない。必ずや使徒ゼストの写し身を保護しなければならない。使徒ゼストの十字架を身につけられるのは、その者だけだ。全ての聖遺物を集めよ。そして偽ゼスペリアに備えよ。そして決して使徒ゼストの写し身は、偽ゼスペリアに惑わされて、その神の御業、あらゆる全ての能力を封印されてはならない。そうなれば――絶望の神を孕ませられる事となる。万が一の時は、ゼルリアの大神殿へと逃げよ。あるいは闇の月の社へ。どちらでも良い。使徒ゼストの写し身を、決して悪魔に絡め取られてはならない。全ての使徒、信徒は覚悟せよ。もしゼスペリアの剣が偽ゼスペリアでないのであれば、片時もそばを話してはならない。そして、兆しの新月を迎えよ。その闇月は、紅く色付き、危機が一時的に去ったことを伝えるであろう。だが、この間に偽ゼスペリアの手により真の写し身が蹂躙されたならば、それは滅亡に等しい』――ゼクス猊下は黒翼の賢者と思しき者に、聖刻印と使徒ゼストの十字架を託され、そして、きちんと身につけた状態でここにいる。これは、ゼクス猊下を守れということか。また、榎波は潔白であろうから、色相確認をし次第付けるとして――ゼルリア、と、あと一箇所への退避準備、紅い月の観察、および、偽ゼスペリアと思しき者を可能な限り遠ざけなければならないということか」
「闇の月の社は、華族敷地の、匂宮の領地にある闇の月宮のことだったはずです――……けど、あの、俺が来てから、偽ゼスペリア扱いされてるんだから、俺が偽ゼスペリアで、そういう風にリュクス猊下を言っているのかもしれないし、この十字架とかはたまたま持てたのかもしれないです……」
「リュクスをどうにかするということではない、ただ、遠ざけるというだけだ。そしてそれは、仮に万が一ゼクス猊下が偽ゼスペリアであった場合も、最善の処置であろう?」
「……はい」
「――紅い月とはなんだと思う? 兄上は」
「俺は、ハーヴェスト侯爵の事のような気がする。新月だと、特異型PK過剰症の絶対・赤色相は、完全円環型に広がるんだ」
「とすると、父上が来て、偽ゼスペリアの危機が去ったと一時的に知らせるのか。それがいつになるかはわからないが、いずれかの新月なのだろうな――なぜ父上には、それが理解できるんだろう?」
「ランバルト機密にはこうあった。『ルシフェリアの末裔が、父たる鴉の羽根を抱き、使徒ゼストへ知らせを運ぶ夜は、闇の満月である』――これかもしれない」
「――え、それって……鴉で羽根で、父って……抱きって、それは、あの……ラフ牧師が死ぬってことじゃないよな?」
「まだわからない。遺物の可能性もあれば、なにか手渡した品であるかも知れないし、何らかの知らせなのだろう」
「……」
「続いが――『第五の厄災は、使徒ゼストを守りきった後に訪れる。もはやこの時、うつしみではないだろう。そのものだ。この段階で可能な限り、黙示を止めよ。人ではなく、生き物でもなく、死者が蘇ったのでもない、神の如き実態が、偽りの義兵団となって攻めてくる。全ての信徒、黒き紫色の信徒、ヴェスゼストの猫達、月の宮に育てられし全ての咲き誇る黒き華、そして、使徒ゼストを守りしオーウェンの猟犬、緑の羽の御使いの下僕達は、使徒ゼストの聖刻印の下、団結しなければならない。殲滅せよ。それらは西と東の間、崖の上の屋根の尖った教会の向こう、かつて大地を滅ぼした星の跡の方から波のように押し寄せてくる。ゼストの導くまま、その御業を信じ、団結せよ。そして滅ぼすのだ』――これはそのままだろうが、これも兵器かね?」
「……これは、ESP実体だと俺は思います。ESPを人型にして、実体化してる……けど、これは……兵器ではなくて、普通は個人が、自分のESPで自分を模倣して……それをPK-Other配合で固定するんですが……」
「――ランバルト機密にはこうある。『それは人の手で生み出されし灰紫色の小さな球体の器官を持ちし人が、神の御業に似た青緑の光で生み出すだろう。それらは混在し、押し寄せる。荒野の果の海で、それらは作られている。できることならば、事前に死滅させるべきだ』」
「っ、それ……え、でも……最高学府の博物館館にある、大昔の、いつだかわからない頃の、人工PSY受容体……と、それを埋め込まれたクローンというか……けど生きていないというし……けどそれなら、さっきの兵器と同じで、一人のPSYで全て機動は……そこから自由意思で……人工の受容体のESP-Other色相で実態を……? 青緑……海の中……人工子宮を広大な海とするならば……羊水と近いのはアズバニア黒赤海だけど、あれはどこから見てどの方角に……最高学府もそこの浅瀬で拾ったとは……写真で見ただけだけど……え、でも、それは……これまでとは話が違って、戦争用の兵士の代替物で……」
「至急最高学府には人を送る――もしもそれだった場合、どうする?」
「俺だったら、埋め立てる。あそこは人工的な海だから、完全ロステク兵器ですぐに埋められる」
「検討しよう。多分そうなる。『第六の厄災は、第五の途中でも起きうる。大洪水、震災、噴火、ありとあらゆる神の怒りのような天候の異常。海の水は空へと登った後、大地を覆うだろう。これが起きたならば、滅亡は近い。使徒のうち、古の叡智をもつものは、偽ゼスペリアの動かしうる全てを停止せよ』これは?」
「重力制御兵器と災害誘発兵器と気象兵器だとしか……けど、そんな兵器……というかたしか、歴史階層研究だと、ESP実体を殲滅するために使った兵器で……華族院と蓬莱院に残っているとかとは……だけどあれは、権限を持たなければ使用できないという話です」
「権限とは?」
「貴族院と華族院のそれぞれの筆頭と宰相と国王陛下と法王猊下と宗教院だったのは覚えています。それら全てがないと……」
「……阻止の要請を出しておくが、そうか、いずれかが、第五の厄災により、防衛策として起動する可能性があるということか。使徒内に詳しそうがいるのは頼もしい。そして最後――『全ての生き残りの者は、選択の時だ。ゼスペリアの青の元へと集い――』このあとは、書かれていない。そして欠落部分があり、最後に『世界には平和が訪れる可能性がある』と記されている」
「……」
「まぁ良い。とりあえず、今日はここまでとしよう。もう少し話し合うから、ゼクス芸かは少し休むと良い。レクス、ラクス猊下、送って差し上げろ」

 こうして、頷き、ゼクスが頭を下げると、皆が手を組み深々と頭を下げた。