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「よし、最後、高砂。うん、お前の今日の服は、高砂家当主が客人をもてなす服であるのは良いだろう。しかしお前はこれから、万象院列院総代としてふさわしい服装をするし、今までも高砂家戦闘時の服のみ俺の許容範囲だったが、あれはあくまでも匂宮の服だからな、俺的に、華族和装時点で最も良い服を用意したからそれに着替えろ」
「う、うん……」
「これだ」
「えっ」
「また嫌だというのか!?」
「い、いや、え!? こ、これ、天照大御神の光じゃないの?」
「そうだ。華族の和装の中で最強の戦力を誇る完璧な装束! 時東先生のにも一部入っているPSY融合兵器を含めた当時までの兵器知識、戦争知識、さらに若狭の情報、そういう基本情報も全部あるし、俺が付け足した部分で最新データも全部同期されるからな。さらに、もう完璧に人体基本能力をあげるから、まるで瞬間移動しているように100m走も可能になるし、視力も調整すれば10.0くらいになる。強靭な肉体! 筋肉の足りないところも全部あれば補ってくれるし、スタミナ、持久力、瞬発力、全部カバー! 聴覚も良くなる! ESP知覚刺激情報だってガッツリ把握可能! また、身近な人間が背後によっただけで、神速で首を手刀で落とせるレベルの速さでPK等なしの完全なる身体能力をまず強化してくれる。さらに、無論PSYだって、PK-ESP-Otherを全部最強に補完してくれる。ロードクロサイトの虹、絶対紫、完全黄金、青系統Otherのそれぞれの攻撃関連、全部使えるようになる! どころか一分前予知と超短距離テレポートも可能! 何故お前がこれを身につけないのか、俺には全く理解ができない」
「あのさ、他はともかく、時東のとコレは、普通の人、所持してるわけ無いでしょう?」
「はぁ!? っていうかこれは、天照大御神の光を元に俺が縫い続けた高砂祐介の光だ! お前用の、今時東先生が着てるやつだって、俺が縫って、ちゃんと高砂家の亜空間倉庫にいれておいた。他の復古家のものも、時東先生のは復古可能性とし、英刻院もそうだ、分家も当然、扇だって学習用に全部入ってるのに、なぜ誰も身に付けない!?」
「なにその高砂家の亜空間倉庫って」
「は!? 何お前、自分の家の古文書も読んでいないのか!? 場所が書いてあるだろうが! 服装とかを整えたら、後で教えてやる! 全く! 信じられない!」
「……うん、なんかもしかすると、俺が悪かったような気がひしひしとしてきたよ」
「反省は良いことだ。その調子で俺のコーディネートを身に付け、外見のみ腕輪で好きにしていけ! よし、次だ。これは、朱匂宮が保証人をしている万象院の救済寺院戸籍の連中にも全員覚えてもらわなければならない。やつらは俺の養子なのだから、つまり全員匂宮関係者ということだからな! ここに754名いるから、まず、着物は今俺が一括でバシンと、万象院の袈裟の下に着るものとして相応しい、基本正装、万象院が保有すべきESP能力が入っている緑色のシンプルな和装だ。お前らには手の布でそれの匂宮の特別関係者版となる。よし!」
ゼクスが指を鳴らすと、その場にいた全員のガチ勢、および王宮内で様子を聞きつつ活動していたガチ勢が全員白い合わせ目と袖の緑の和服に変わった。そして頭の中にESPの知識と使い方が入ってきたのを理解した。
「次に、匂宮関係者必須の金の指輪、ここにいるお前らには白い布付きだから、まずそれをつけろ。ここにいる奴ら以外には、俺がはめるから! あ、身につけたまま亜空間収納可能な腕輪も左手首に勝手に付けるからな」
そう言ってゼクスは全員の前に金色の指輪付きの白い手の布を配布し、ガチ勢には中指に勝手に出現した金色の指輪と白い布を見た。
「え、ゼクス、これさ、匂宮金冠の親指の指輪の細いバージョンじゃ……?」
「うん、同じ内容の指輪を大量生産した。いいか? 匂宮なんだから全員が、朱匂宮と同じレベルの絶対原色・赤と呼ばれるPKを使えなければ意味がない。右が単体、左が範囲だ。これを用いて、しっかりと使うように。指輪自体で絶対原色の赤が補強されたし、さらにPK値も3000補強された」
人々は言葉を失った。いやもうそれは、神具である。
「あ、あとさ、ゼクス? この布さ、天照大御神の明けの白布……?」
「そうだ。これは万象院用と言っても良いかもしれないな。だが、匂宮だから付けるんだ。右手の布で、ありとあらゆる目の前の人体の肉体内PKを把握して操り、左の布ではありとあらゆる目の前の人体内のESPを把握して操り、逆に操られそうになった場合は防衛してくれる優れものだ! さて、高砂、お前には何度も何度も何度もピアスをつけろといった! どれかわからないのかなと思って緑とか説明したのに、なぜ付けない!? 俺には理解できない! 指輪もそうだ! ピアスホールを開けたところしか評価不能!」
「……と、とりあえず出して」
「まずは、お前はこの、高砂家中興の祖であり、シルヴァニアライム卿の名前で知られていて、お前も欲しいとか言っていたから、俺がせっかく発掘して、さらに復古し、最新版との同期も自動的に行うようにした、完全ロステク防衛・攻撃兵器時点としか言えない指輪を右手の薬指に付けてもらう」
「! っ、あ、え!?」
受け取った金色と銀色にきらめき光の加減で緑に見える、中央に陰陽印がサファイアと翡翠でついている蛇のような三重の指輪を、驚愕しながら高砂は受け取った。震えを抑えて、言われた通りに右手の薬指に身に付ける。すると今までのどの装備よりも完璧で、最高学府で研究している高砂からみても最先端の完全ロステク知識が入ってきた。
「さらに左耳にはこの、高砂家始祖であり、唯一の鴉羽卿の中の左副のピアスだ。金色に緑のピアスだと俺はあれほど言った! そして、右耳! これは高砂家の歴史書にはあまり出てこないけど、華族文明中期になんか終末を起こそうとした敵集団を殲滅した高砂家の歴史では有名な当主のピアスだ! なぜ身につけないんだ!? 俺、何度も何度もブラッドトパーズのピアスだって、あれほど言ったのに! 即刻つけろ!」
「え、あ、え、いや、そんな恐れ多いのつけられない、このシルヴァニアライム卿の指輪はもう手放せそうにないし、ほかもそうだけど」
「はぁ!? お前、ある道具を使わないのか!? フライパンがあるのに目玉焼きを熱した石の上で作るとか、そういう価値観なのか!?」
「……と、とりあえずつけてみる」
高砂はガクガク震えそうになるのを恐れながら、まず左耳に取り掛かった。金の縁どりにエメラルドが輝いていて、金の細い鎖がたれていて、金色の鴉の両翼の飾りがある。続いて右耳には、ダイヤとブラッドルビーの埋め込み型のピアスだった。確かに右に二つ、左に一つピアスホールを空けろと言われてそうした過去を高砂は思い出した。
「あ、あの、あのさ? これ、左側、精神感染汚染症兵器の防衛と王都全域くらい解除できるPSY融合兵器……?」
「そうだ。右側は、お前が決して汚染されることがなくなるダイヤ、さらに生体ウイルス兵器と生体PK爆発兵器を防衛解除するPSY融合兵器で、さらにどちらにもワクチンや対抗兵器の知識が入っているはずだし、俺が常に最新の感染症情報等が入るようにしておいた! お前は、匂宮配下家の中で一番の武装家の当主なのだから、このくらいは当然のアイテムだろうが! しかもどれも似たようなの、指輪に関しては名指しで欲しいと言ったのに、なぜ復古しない!? 発掘しない!? 倉庫を漁らない!? お前のその口だけなのが俺はずっーっと納得できなかった!」
「――ゼクス、うん、これは俺が悪かった。俺てっきり、正座の仕方とか扇の振り方とか箸の持ち方とか敬語とかの話だと思ってたんだ」
「……そんなの別にいらないだろ。華族っぽいイメージ構築に必要で、まぁそれならな、花道とか茶道とか笛の吹き方くらいは覚えてもいいかもな。けど、そんなのよりも、儀式の中で、こうPKを高めたり、戦闘時の足の動きの練習とか、きちんと意味があるやつを覚えて、武力をあげていく! こっちが重要だ!」
「な、なるほど、意味が有る儀式があるんだ……」
「うん。華族も色だけは服装、合ってるだろ? それと同じように、意味が有る儀式はとっても多いから、意味をきちんと理解して、修行! その中の扇の振り方とかは、今日渡した扇の使い方とか、そういうのを覚えるためで、普通の扇をひらひら振っても無意味だからな? ちゃんと各自、自分にあった儀式を覚えるように。お前は代表としてそれを教えないとダメなんだ。良いか?」
「ごめん。俺、今日までゼクスは、IQと学歴だけの無能な朱の若宮だと思ってた」
「まぁ歴史研究が専門で古文書を沢山読んでいるという部分では、みんなには見えにくいしそう思われても仕方がないだろう。なにせ、俺は真剣に仕事をしているのに、みんな爆笑しながら、俺をゼスペリアのヤブとか呼ぶからな!」
その言葉に橘と時東が吹き出した。
それからふと思いついたように橘が言った。
「まぁさ、華族と万象院の服装に厳しいっていうのはわかったけど、宗教院はどうなんだ? ゼスペリア教会の聖職者は良いのか? あと、貴族の社交とか服は?」
「ん? まず、貴族には挨拶という概念が存在しないようだから、教える必要はないだろう。きっと理解できないんだ。彼らには、同様に服装という概念も存在しない」
「「「「「ぶは」」」」」
「ゼスペリア教の聖職者は、服装という概念は無いが、布という概念はあるようだ。なにせ、使徒ゼストの聖骸布といって、百円ショップの雑巾以下の、ゼストが着ただけのPSY融合繊維でもなんでもない布のボロい切れ端を崇拝しているんだ。原初文明の月信仰の月はまだ天体だし神秘的だから納得できなくもないが、ボロ切れを崇拝して祈っている。つまり原初文明の人間未満、類人猿ということだ。つまり、猿だ。猿は動物だ。動物には優しくしなければならない。だが、俺は猿に服を着せる趣味はない。だが、アルト猊下は動物には優しくすべきだというから、きっと猿回しの道を歩むのだろう。歴代ゼスペリア猊下もおそらく猿回しをしてきたのだろう。だから俺はアルト猊下と動物に優しくすることについて常に話し合っている!」
「「「「ぶは」」」」
「動物に優しくってそういう意味なのかよ? え、法王猊下とか配偶者猊下とかアルト猊下自身は?」
「きちんと受け継いだ人間の衣装を身につけている」
「「「「ぶは」」」」
「他に人間らしいのは、ギルドの黒色のみだ。彼らだけは、きちんと使徒イリスの黒いPSY融合繊維の聖骸布を受け継いで製造方法も受け継いで服を着ている。だから俺、裁縫が得意だから機能をつけたし、常に最新版を動機していて、一番優れた人類最先端の服だ。貴族とか華族とか以前に、黒色以外、まともな服を着ている人がこの国にはいない。黒色のローブ着用者以外、俺は全裸で暮らしているのと変わらないと思っている。だが、華族は色だけはあってるし、万象院も継承だけはしているから、本尊本院の袈裟の下の和服部分のみちょっと人間に近づいている。よって、俺は彼らには布よりはマシな服という概念があると願っているから、服装をきちんとしろってずっと言っているのに理解しないんだ」
「「「「「ぶは」」」」」
これには全員が大爆笑した。ゼスペリア側への優しさは動物愛だったのだ。
しかも黒色のローブはゼクスの自作らしいし、現在の匂宮の服もそんな感じ。
そういえばクライス侯爵いわくアクセ作りが趣味というのもきっとそれなのだろう。
指輪の復古とかだ。
「さて、まぁとりあえずこんなものとして、最後に一番重要な、匂宮関係者心構えだ。いいか、『目の前の敵を全部殲滅する』これだ。教えとしては『高貴な朱の光で周囲を照らし出す』と書いてあるが、つまりそれは、赤いPKで全ての敵を殲滅していくということだ! ちょっとでも不審者がいたら100番か処刑だ。社会的以前に生命的に抹殺! 良いな? そして、医療、政治、これらを持っている人々がいるから、例え匂宮一族以外が滅亡しても人類は滅ばない。何があっても生き延びる! そして最優先の守るべき人は政治の専門家の英刻院! 今回無事に復古したから黒曜宮! 分家2つの仕事と高砂と朱本家はそいつらを生き延びさせる。朱が後見人になったやつらもそうだからな! で、政宗家は黒曜宮の、榛名家は英刻院の、若狭は高砂のお手伝いをする。これが匂宮だからな! そして、匂宮総取りというのは、それを眺めて日記を書く係りだ。これを忘れず生きていくように!」
「「「「ぶは」」」」
「笑い事じゃない! なぜ基本的な教えさえ誰も古文書で読んでいないんだ? 理解ができない。自分の家の本くらい読め! 当主だろう!?」
「ごめん俺、ゼクスと解釈が全然違ってた」
「高砂……しっかりしてくれ」
「いや、っていうか、ゼクスと同じ認識の匂宮家ゼロだよ? 絶対」
「はぁ!? つまり全員古文書を読んでいないのか!? なんということだ……」
ゼクスは世界が滅亡したような悲しそうな唖然とした顔をしている。
本気で言っているのがよくわかる。
匂宮の人々は笑うしかなかった。
「さて、匂宮はとりあえず、これで良いだろう。続いて、本日俺が来た本題だ。ちゃんと着なかったら、全員戸籍剥奪だし、高砂には列院をやめてもらうからな!」
そう言いながらゼクスは緑羽の御院を見て、頬を膨らませて目を細めた。
緑羽の御院は予想外過ぎて、優しく微笑していた。
そして何が出てくるのかわくわくしながら頷いた。
「まずな、基本的な心構えをきちんと理解しているのか、俺は疑問だ。『世界は個』であり『存在が寺』なんだぞ? これがもしかしたら難しいのかもしれないと思って、列院亜空間倉庫にわかりやすく経文を書いておいた。これは現在の言葉で言うと、『国内最有事の際、たった一人だけで良いから生き残って万象院を再建して知識を世界に広めろ』という意味なんだ。何書こう緑羽を守らなければとかいう誤解をしている人々が多いがそんなわけがない。寺は緑羽も列院も寺! そして嘗て緑羽が尊ばれたのは、ESP記憶貯蔵庫でいっぱい覚えられたからだが、文明は進歩し、紙もロステクモニターもあるんだから、一人生き残ればいいんだ。まずこれだ。これをしっかり覚えろ。お前らの仕事は『自分を守って、たった一人でいいから、全力で逃げて生き残ること』なんだ。これにつきる! 武力は寺、つまり自分を守るために身につけるんだ。いいか?」
「「「「「ぶは」」」」
「だから笑ってる場合じゃないんだって! で、その中で、列院総代のみ、一人でも多く生き延びさせるため、自分を守りつつ戦い、分家もそれに協力をしたり医療とかをやるんだ。緑羽は勝手に逃げるから大丈夫!」
「「「「「ぶはっ」」」」
「で、寺! 建物として建ってる寺を見てみろ! 周囲に森とか柵とか防衛システムの昔バージョンがある。だが、ここにいる誰一人として自分の周りに柵、防衛システムを身につけていない! 王宮に展開されている防衛システムの中に居れば良いってもんじゃないんだ。かつ朱が後見人だし、今からその最低限の防衛システム的柵をパチンと他全員、正面のやつらは目の前に出現させるから受け取れ。以後、言葉には出さないがそうする。まぁ琉衣洲様と時東先生は、ここからは任意だ」
「やる」
「俺もやらせてください」
それに頷いて、バチンとゼクスが指を鳴らした。
そして目の前に現れたものに、高砂と桃雪が驚愕した顔をした。