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 所変わって宗教院。
 こちらでは、月に一度、枢機卿議会が行われる。
 その後――もうここの所、常に恒例行事のようになっているのが、法王猊下の元へ、出席者である孫三名、法王猊下特別補佐枢機卿のラクス猊下、王都直轄枢機卿兼内密にギルドからの代表であるレクス伯爵、そして最後――ゼスペリア十八世実子であるリュクス猊下が揃うのである。周囲の認識として、ゼスペリア十九世という後継は、このリュクス猊下だ。

 だが『ゼスペリア十八世長子は重病につき安定するまで即位儀式は執り行わない』とされ、未だにゼスペリア十九世は、公的には立っていないのである。よって継承するはずの聖遺物の類なども、あれはOtherを強めるので、病気が理由でリュクス猊下には渡されていないとか、病気の詳細を特異型Other過剰症の青異常だと知らない人々は、昔それこそ『使徒ゼストの写し身だ』と言われていて、今も一部でそう思われている、十八世である父のアルト猊下が持っているのだろうと考えている。

 ラクス猊下も最初そう考えていた。特に、法王猊下の長子、および直系の孫が継承するだろうランバルトの青と呼ばれる銀の指輪に関しては、法王猊下が『ランバルトの正統な後継者が持っている』と言っていたので、確実にそうだろうと思っていた。

 だが先日の黙示録風の大事件の際、およびそれまでにも何度か、ゼクス=ゼスペリア牧師の左手に鎮座しているのを見て、さらにゼクスの顔と気配を見て、「なるほど、黙示録対策で秘匿していたのか」とか「リュクス猊下は、身分を隠して裏で動いていたのか」だとか、今では「リュクス猊下は代打の影武者だ」などと思っている。

 闇猫の多くもこのいずれかの認識だろうとラクス猊下は思っている。なぜならば、ゼクスとリュクスは大変よく似ているのだ。中身は百八十度違って見えるが、外面がそれであり、内面は逆にゼクスが優しくリュクスは宗教院で鍛えられた腹黒さがそれなりにあるような感じがする。

 ならびにラクス猊下が「お久しぶりです、柊猊下」と、暴露するまで榎波柊もまた法王猊下の孫である事は、なんとあの場において、榎波本人とラクス猊下しか知らず、ゼクスだけでなくレクス伯爵まで驚いていたので、あの時の反応的に、ゼクスは自分がゼスペリア十九世だと知らない可能性もあるとラクス猊下は思っていた。しかし法王猊下を含めて周囲は誰も教えてくれない。レクス伯爵もだ。

 というか、レクス伯爵も実は詳細を知らないのだ。自分自身にはOther青が無いが、ゼクスには完璧にアルト猊下と同じ青があるのを突き止め、逆側の遺伝子的にもう一人の父親がハーヴェスト侯爵であることを突き止め、よって最低限異母兄弟であるはずだと父に言い、

「まぁ鑑定してそれ以外の事実が出ていたら私は無論、アルト猊下を許さないだろう」

 と言われた上に、ゼクスの左の中指にはギルドのその当代における一番の守護対象である使徒イリスの直系の末裔がつける指輪がはまっているし、手首にはハーヴェスト家の長男が受け継ぐ円環時計がはまっているのだから、ハーヴェスト側には疑う要素は一切ない。だからレクスは、小さい頃から気づくと呼ばされていたというのもあるが、今も『ゼクス兄上』と呼んでいるし、実際にそう思っている。血縁関係があるかどうかを考えずにそう思っていてそう呼んでいたのだが、ゼクスの青があんまりにも多かったのと、アルト猊下よりもゼスペリアの青というにふさわしい純度だったこと、法王猊下よりもすごいこと、および――王都直轄枢機卿になり、リュクス猊下を見て、鑑定した結果、こうなったのである。

 時計類は、事件が起き始めてから見た。周囲にそれとなく聞くと、昔から付けていたと言われた。本人は、ギルドの副総長などの持ち物だと思っているらしく、いつかはレクスが付けるのだと言う。この副総長をしている事に関しては、前総長であったザフィス神父しか知らなかったし、ハーヴェスト侯爵すら知らなかった。

 それはともかく――だとして、リュクス猊下はなんなのだろうか? 最初はレクス伯爵も偽っている同一人物の可能性を考えたが、初めましてと初対面時に挨拶されたので、その対応を自分もしながらこちらも鑑定したのである。結果、リュクスとゼクスには兄弟判定が出た。自分とリュクスには出なかった。

 ならば、リュクス猊下とはアルト猊下側のみの血をひいているのだろうか。とすれば血縁的には兄ではない。というより、ハーヴェスト側の血をリュクス猊下がひいていないというのが正しいだろう。赤と緑の色相が、絶対原色から外れていて、補色複合非分類というごくごく平均的な色相なのだ。アルト猊下もそうだ。

 ただアルト猊下は法王猊下の紫系統の赤PK、ランバルト紫と、英刻院家の絶対黄金系の黄系統緑ESPを持っているので、そのどちらとも違うリュクス猊下の場合、少なくともランバルト直系および英刻院直系の三世代目以降あるいは兄弟関係で血が薄い。それを考えると、青を大量に持っているしアルト猊下の実子だとしても、その青もまたゼクスが濃くこちらは若干水色よりで完全単色ではなく一部非分類もあるのだから、弟か何かとなる。

 だが、ラクス猊下は自分に聞くほどであり、リュクス猊下は「はじめまして」であり、法王猊下夫妻もアルト猊下とハーヴェスト侯爵も、何か知っていそうなザフィス神父も念のため聞いたラフ牧師――こちらはどうやら鴉羽卿だとレクスは知っていた(伝説の前の代での黙示録風出来事を阻止した人物だとされている)――も、教えてくれない。

 彼らは知らないとは言わない。その点を問い詰めると『それは時が来れば分かるだろう』だのなんだのと言うのだ。なおゼクスに至っては、ハーヴェスト侯爵がハーヴェスト侯爵であること以外は全員の身分すら知らないときている。よって、おそらくラクス猊下も同じ考えなのだろうが、この定例とかしている議会後の挨拶にリュクス猊下と一緒に来るのである。

 さて、このリュクス猊下、いつも同じ事を言い始める。

「――所で法王猊下、ゼスペリア十九世の即位の件ですが」
「「「……」」」

 また始まったと三人とも思ったし、周囲に控えている闇猫や黒色、本物の聖職者達も思った。とはいえ人払いされているので、最低限の口の堅い人々しかいない。

「僕の体調は万全でいつでも即位し正式に仕事をすることが可能です。いつまでも空けてはおけません」
「……」
「さらには現在、『まさに使徒ゼストそのもの』と噂される、人々を偽の神の御業で惑わしているがごとき人物まで存在するようですので、これは急務だと思います」

 法王猊下は沈黙したまま聞いている。
 これがゼクスを指している事は、ラクス猊下にもレクスにもわかった。

「もしもその者が偽ゼスペリアだったらどうなさるおつもりですか? 現在は黙示録のような事態が頻出しているのです」
「――闇猫が黙示録の対応に出ている」
「その闇猫達もまた惑わされているのか、『使徒ゼストの写し身の可能性があると思う』と話しているようであり、僕には所在すら報告を拒否していますが」
「捜索指示を出したのかね?」
「当然です」

 頷いたリュクス猊下を見て、何度か闇猫がゼクスを殺しに来た事をレクス伯爵は思い出した。しかしゼクスが強すぎたり、観察してリュクス猊下より神聖だと判断したのか最終的には寝返ったし、現在の状況では、闇猫は全員ゼクスを崇拝していてリュクスに売るような闇猫は内部で撲殺されるだろう。

 ――これを考えるに、あれは黙示録風の事件の前から時々あった出来事だから、リュクス猊下は、ゼクスの存在を知っていて、即位に邪魔だから葬ろうとしているようにもレクスは思う。このまま秘密裏にゼクスを葬れば、ゼスペリア十九世は、リュクス猊下だ。

「いつだね?」
「それは……」
「リュクス猊下。質問を変えるが、仮にその者が偽ゼスペリアだとしたならば、即位するというのだから、自分が使徒ゼストの本当の写し身だと確信していて、全闇猫および使徒を指揮して、黙示録に記された各種の厄災に自ら立ち向かうという宣言だと考えて良いのかね? 例えば先日の生体兵器の群れ。あれにも即位済みだったら全面に出て、自分で対処したのかね? そうであるならば、即位は兎も角非常に心強いので闇猫訓練を始めてもらう」
「……それは、その」
「ゼスト家は守護対象とされるが、私もアルト猊下も闇猫の教育を望んで受けたが、病弱である事を理由にリュクス猊下は受けなかったわけであるが、もう万全というのならば、今からでも遅くはないだろう。その気概があるのならば、今すぐにでも――」
「お待ちください。そこまで体調が万全なわけでは……」
「悲しきことだ。早く治すと良い」
「ならばせめてランバルトの青を」
「あれはランバルト大公爵家の当主あるいはそうなる者が持つ品だ。即ちそれは持ち主として正統な私への苦言かね? 私では当主に不足があるという。さらに、渡す相手は私が決めるのであり、通常であればアルト猊下となるが、アルト猊下もまた相応しくないと?」
「そういう意味ではないですし、アルト猊下はご病気で……」
「アルト猊下はリュクス猊下よりも重い病状だと私も思うが、軽いはずのリュクス猊下が闇猫訓練をできずアルト猊下は可能なのだから、見た目だけであり、尚更重病のリュクス猊下がランバルトの青を手にして大丈夫とは思えないが?」
「……」

 リュクス猊下が沈黙した。この姿を見ると、リュクスの認識として闇猫が自分達を守る下等な存在であるという宗教院の表面的に出世してきた連中どもと同じ認識だというのがよくわかるし、ランバルトの青の所在も知らないし、黙示録対策どころか自ら卑しい闇猫になる気もなければ、自分は保護され守られる立場だと確信してくるのが分かる。

 そしてランバルト大公爵という爵位と、ゼスペリア十九世猊下という地位を欲しがっているのも分かる。使徒ゼストの写し身が、そんな俗世の爵位や地位に興味を示すだろうか? 闇猫の総指揮もまた、リュクス猊下は知らないようだが使徒ゼストだ。

 その闇猫を蔑ろにするのだろうか? これは闇猫教育を受けないと知らない事実ではあるが。また現在はゼスト家とランバルト家は婚姻の結果ほぼ同じだが、ランバルトの青は本来は使徒ランバルトの末裔がゼストの末裔を守るためにはめておくものであるし、つまりそれの所有者はランバルトが認めたその時々の末裔なのだ。よってランバルト家当主がはめる形になってはいるが元々の意味合いは、大公爵位の証でもなんでもない。

 廊下を走る音と、激しいノック、その上許可無く扉を開け放った人物が訪れたのは、その時だった。いつも冷静沈着で、法王猊下に仕事をするように諭す、枢機卿議会の議会議長――ハルベルト・ゼスペリア枢機卿が汗をダラダラ流しながら、息切れをそのままに入ってきて、他には構わず、目にも入らない様子で、法王猊下の机の上にダンっと両手をつき、法王猊下へ叫んだ。

「法王猊下! ゼスペリア十九世猊下の正式即位および婚約発表をするというのは事実なのですか!? しかもお相手が、裏の黒若葉だとか!!!! 本当ですか!? 本当なのですか!? どうしてもっと早く行ってくれなかったのだ、ローランド猊下の馬鹿者!!!!!」
「……お、落ち着け」
「落ち着いていられるか――!!!!! ラクス猊下もまたご存知だったのならば私目に何故申してくださらなかったのだ!!!! あるいはレクス伯爵!!! 可能性としてレクス伯爵は、法王猊下がご存知ならば、さらに以前よりご存知だったはずです!!!」
「「!?」」

 ラクス猊下とレクスは意味が分からずぽかんとした。
 リュクス猊下のみが息を飲んでいる。

「――ならば、体調が治ったということですか?」

 その言葉に、法王猊下と、我に帰った様子の枢機卿議会議長以外が息を飲んだ。どういう意味だ? そう思いながら見守る。すると法王猊下がため息をついた。

「リュクス猊下。まあそういう意味合いで良いから、猊下が知っている事柄を皆に伝えよ。その間に、私は私で話すべき事柄を頭の中で整理する」
「――これまで混乱を防ぐために公表されてきませんでしたが、僕には同じ年の兄がいます。異父兄弟と聞いていて、アルト猊下の長子であり、僕が次男です。本来のゼスペリア十九世猊下ですが、重病のため公に姿を現すことができない状態とのことで、全てを僕が代行してきました。そして僕は、このままその兄が代行不能ならば、ゼスト家およびランバルト家の存続を考えて、体調が比較的良好である僕が代行し、もしもそちらに最低限子息が生まれるのであればそちらに続いて全てを譲渡しようと考えていました。僕の病気情報は全て、あちらのデータです――が、そうですか。快癒したならばなによりですし、後継も期待できるというならば、僕としては大歓迎です。良かった」

 リュクス猊下が、民衆に振舞う微笑をした。しかし慣れている全員が、それは作り笑いであり上辺のものだと知っている。

「重病で起き上がる事も無理であり、黙示録的な意味ではなく、実力的にゼスペリアの医師と呼ばれる存在が常に診察していると聞いていますが」
「――誰がそのようなことを?」
「兄である人物が心配で所在も気になり調査に出した闇猫の報告です。そのため、お姿を見せる事は困難ですが、まさに使徒ゼストの写し身のような優しいお方であり、全力で保護補佐するので何も心配はいらないと。治療の都合で所在は教えられないと、また、いつお亡くなりになるかも不明なのであらゆる敵も葬るような真似はしないだろうと」

 おそらく殺してこいと言われた闇猫がそういったのだろう。全員が納得した。
 そして実力的にも、どころか現状が間違いなく黙示録ならば、その本物のゼスペリアの医師である時東は常にそばにいるし、主に診察する場合も担当している。なにせ近所の救済事前診療所で闇医者まがいの事をしているのだ。

「まぁ良い。その人物が――……体調は、以前より良好なのであるが……果たして即位してくれてかつ婚約というか結婚して私の孫をきちんと設けてくれるのかが疑問であり、私としては、全闇猫・黒色・黒咲・院系譜・猟犬の全てに、『ゼスペリア十九世を説得して即位式と婚約宣言をさせる事』を指示したいと考えておる。無論生まれながらにゼスペリア十九世はその者である。また当人の親戚関係もあるが、今回は『当代の裏の黒若葉』であるから――つまり、黒咲内部における最高権力者であり、黒咲における匂宮を覗いた場合の、橘宮のまさに逆のポジションにあたる総指揮であるし、黒咲……およびこの二名とも猟犬でもあるので猟犬、さらに院系譜と関連が深いため院系譜の万象院列院僧侶にもまた協力を仰ぐべきであろう。私としては、その『黒若葉』の方も、同じように結婚する気があるのか不安でならないから、これが成立したら、一気に二つの悩みが完全解決することになるので全力で応援したいのだが……その場合、黒若葉にランバルト大公爵位は譲ろうかとも考えておる」
「「「!」」」

 リュクス猊下、ラクス猊下、レクス伯爵が目を見開いた。
 黒若葉とは、どこの誰だ? そしてランバルト爵位?

「場合によっては、そちらは、『ゼスペリア十九世と結婚したらランバルト大公爵位を贈与する』といえば、同意する可能性があるが」
「――そのような世俗的な人物がお相手でゼスペリア十九世猊下は大丈夫なのですか?」
「ランバルト大公爵位は、僕でなくともせめて、アルト猊下が無理な場合も、ラクス猊下の方が……」
「状況的にもう一人の従兄弟であるとラクス猊下により判明した榎波柊男爵か? ロイヤル護衛隊の隊長の? 全条件に該当している上に、法王猊下のお悩みの種の結婚問題も抱えている孫であるし、ランバルト大公爵位の相続に不思議はなく、ゼスペリア十九世猊下がランバルトの青などを所持していてもご結婚なさるのならば同じ家にそれらが揃うし、本来の意味合いもそれで通るが……榎波が結婚!? どちらがどういう形態でそういう形に持ち込んだんだ!? ありえないだろう、その二人!? あきらかに両者共に向こうから来られなければ動かないタイプだろうが! 榎波は面倒で、ゼスペリア十九世猊下は頭の中身がお子様で! それぞれ違った意味だが恋愛なんていう概念はないだろう!」
「レクス伯爵はご存知だったの?」
「――榎波隊長と、ですか……あ、ああ、なるほど……確かに想定外ですが、逆にそこ以外はもっと想定外でもありますね。言われてみると並んでいて不思議とあそこなら納得は行くようにも……」
「ラクス猊下までご存知なのですか? 僕の兄はどこにいるのですか? しかも従兄弟がいるのですか? 全て僕は初耳です!」
「お前達は、少し黙っておれ。それで議長、その件はどこから聞いた?」
「私の直属の闇猫が涙ながらに喜んで報告・質問してきました。ロードクロサイト卿が直属にいらして法王猊下とお話をしていたそうだと。そしてその命令内容を、あちらにひかえていた黒色と話したとのことでした。黒色の話によると、ハーヴェストクロウ大公爵と共にその事態にお気づきになられたロードクロサイト卿がこちらに、ハーヴェストクロウ大公爵は、先代の朱匂宮様および緑羽万象院様の元へとそのまま走られたとか……そして法王猊下達がお話の最中には、その黒色の元へは猟犬側からの事実確認、闇猫側には黒咲からの問い合わせがあったと聞いています……! なんということだ! 既にほぼ全ての闇猫・黒色・黒咲・万象院列院僧侶いわゆるガチ勢・なにより猟犬に伝達されているようで、知らないのはむしろ私だけかもしれないとすら! なぜ教えてくださらなかった!」
「……その者達の情報伝達速度が異常に早いのだ。卿が来たのは午前中だぞ。私が把握したのもその時であり、まだ指示はひとつも正式伝達はしていない。即位可能性のみ同席した一部の闇猫と黒色に伝えただけだ」
「なんですと!?」
「だから私も知らなかったのだ、黙っていたのでは――」
「そこではありません! この機会を逃せば逃げられる可能性もあれば永久に即位拒否される可能性もあり、結婚話も両名消え、さらに両名とも二度とそういう話がでなさそうな人間だ! さっさと通達しなければなりません。ラクス猊下! レクス伯爵! 闇猫と黒色に正式通達を。その他全てには私から通達します! 『ゼスペリア十九世即位および婚姻したものをランバルト大公爵とし、この両名の即位および婚姻成立に全員で動くように』と!」
「わ、わかりました」
「――承知した」
「では私は宗教院のその他一切の処置も全て行ってまいります! では!」

 こうして頼りになるのかならないのか不明だが使えるか使えないかでいうなら使える議長は出て行った。ラクス猊下は最寄りの闇猫に指示を出し、レクスは目を伏せ、頭の中で直接通信による指示を出した。これで全ての黒色に伝わったはずだ。『黒色全名当人およびゼスト家関連とハーヴェスト関係者以外準備済みです』との嬉しそうな返事が返ってきて、レクスは複雑な心境になった。伝達済みだというのは本当だったのだ。やつらはゼクスの信者なのだから当然だろう。