【3】
そして検査が始まり――時東の顔がどんどん険しくなっていった。そんなに悪いのかと一同はハラハラした。さて、二時間後、時東が言った。
「――非常に重大な結果が出た」
「もったいぶらないで、俺の病状を教えてくれ」
「お前はゼスペリア十八世アルト猊下と全く同じ病気――特異型PSY-Other過剰症、単体青異常だ」
「……?」
誰もピンと来なかった。
「これは、ゼスト血統保持者以外はかからない。理由は、ゼスト血統保持者しか、単体の青を持たないからだ。つまり、ゼクスは、ゼクス猊下となる。榎波よりは言わずもがな、ラクス猊下よりもユクスよりも、さらに言うなら、メルディ猊下よりも非常に濃いゼスト血統保持者だ」
「……? その検査、間違ってないか?」
「俺を誰だと思っているんだ。さらに、だ。その対処点滴が必要だから、ESP-PKも調べた。結果から言うと、緑羽色相と朱匂宮色相だった。つまり原色の緑と赤だ。どういうことかわかるか?」
「孤児だから、色々な血が入っているということだな?」
「バカヤロウ。お前が、途絶えたはずの緑羽家直系かつ朱匂宮家直系という事だ」
「え」
「さらにこれらを両立させるには、必要因子がいくつかある。そちらも鑑定した結果、一番重要な血核球は、混雑型PSY血核球だった。レクス伯爵と同じだ」
「兄弟だからかな」
「あのな、ハーヴェストの血統にしか出ないんだ。逆だ。お前は異母じゃなく異父か同父兄弟だ」
「え」
「このことから算出すると、どうなる?」
「――?」
「……」
「え、高貴な血に関連した医薬品がいるとすると……やはり、医療費か?」
「だから! お前は、ゼスペリア十九世であり緑羽であり朱匂宮である可能性が高いという話をしているんだ!」
この結果に、ほぼ全員が、ぽかーんとなった。だが、神聖さや、指輪が持てる理由はわかる。
「そういうことなら、俺が護衛につくよ。俺はもともとは、万象院と匂宮で護衛だから」
「ああ。高砂、その方がいいだろうな」
「待ってくれ。何から護衛するんだ? 王宮だぞ?」
「「「「……」」」」
この内部にも扇がいるのは暗黙の了解だった。今、あぶり出し中なのだが、闇猫は信用されていないので、話を聞いていないのである。
「しかも俺がゼスペリア十九世猊下だとしたら、俺は死ぬんだろう? どうなるんだ、そうなると……?」
「全力で助ける」
「……俺がゼスペリア猊下だと最初から思っていて、お前、そんなに必死に?」
「あ? 俺は医者だ」
時東がイラっとした顔をした。ゼクスが怯えた顔をする。しかしこれは、普通の見解といえば、そうである。
「とにかく治療を受けろ」
こうしてゼクスへの治療が始まった。補色点滴などが用意されていき、ゼクスの周囲はお花畑のようになった。こうやってみると、本当に重病だとみんな理解させられた。
「な、なぁ、時東……こんなことは言いたくないが、点滴を始めたら、体の力が全部抜けて、俺は今、起き上がれない」
「当然だ。お前の体が今まで無理やり自己治癒Otherと痛覚遮断コントロールをしていたのを、解除したからだ。点滴がなければ、お前は今頃あの世だ」
「……」
ゼクスが真っ青である。なお――レクスもこれを見て青ざめた。
ひっそりと、レクスが時東に声をかけた。
「兄上は、その……治るか?」
「――生涯付き合う事になるだろうな。よくは、なる」
「……ベッドに一生か?」
「いいや。月に一度の点滴程度で他は自由になる程度の回復を目指している。本人の治療姿勢次第だ」
レクスが少しほっとした顔をした。時東が白衣に両手を突っ込む。
「全力は尽くすし、慢性疾患だからな――怪我等とは違う」
「そうか。よろしく頼む」