【三】






 その後、二人は、雲中子の寝室へと移動した。あっさりと雲中子の服を脱がせた燃燈は、自分の纏う衣も脱ぎ去った。そして少し強引に、寝台へと雲中子を押し倒した。それから噛みつくように、雲中子の首元に吸い付く。

 ツキンとその箇所から走った鈍い痛みに、キスマークをつけられた事を理解し、雲中子は微苦笑しながら吐息した。燃燈の首に手を回す。燃燈は雲中子の胸に手を這わせ、脇腹までなぞってから、利き手の指を口に含んだ。寝台の上で白い膝を立ててながら、雲中子は、燃燈の人差し指が、己の中に入ってくるのを感じていた。

「きついな。久しぶりなのか?」
「そうかもしれないねぇ。経験があったのかすら、思い出せないよ」

 実際の所、雲中子はこの時、いくら考えてみても、誰かと交わった記憶が無い事に驚いていた。考えてみれば、あっさりと同意したが、雲中子は人と体を重ねる事自体、初めてだった。過去に、恋人がいた事も無い。恋をした事すら無かった。

「っ」
「ならば、酷くはしない」
「経験豊富だったら、酷くするの?」
「そうかもしれないぞ」

 燃燈がどこか残忍な瞳をした。意地の悪い笑顔の中で、その瞳には獰猛な色が宿っている。燃燈は第一間接、第二関節と実直に指を進め、すぐに数を二本に増やした。押し広げられる感覚に、雲中子が息を呑む。

「ぁ……ァ、あ」

 その時、燃燈の二本の指先が、雲中子の前立腺を掠めた。すると愉しそうに笑った燃燈が、意地悪くそこばかりを刺激し始める。

「あ、あ……ッ」

 次第に指の動きが速くなる。すると雲中子の陰茎が、まだ一度も直接触れられていないのに、反応を見せた。緩やかに勃ちあがった陰茎を、燃燈が一瞥している。それに羞恥を覚えながら、雲中子は目を細めた。

「早く」
「慣らさないと辛いのは、お前だぞ。雲中子」
「良いから……っ、ぁ……」
「そうか。悪いが今日の私には余裕が無い。初めてであっても、容赦出来るか不明なほどだ」

 燃燈は雲中子に対してそう告げると、己の陰茎の先端を宛がった。既に張り詰めていた燃燈の肉茎が、雲中子の後孔へとめり込むように挿ってくる。

「っ、あ……く……ンん」
「やはりまだ辛いんじゃないのか?」
「あ、あ……ッ、ぅ……べ、別に良いから」

 雲中子は、己の体を気遣われる事に、あまり慣れていなかった。だから燃燈の優しい手つきが怖い。だがそれ以上に、交わっている箇所から浮かび上がってくる熱の方が恐ろしかった。やはり、こんな経験は、過去には無い。

「あああ!! あ、ア」
「挿りきった」

 巨大な先端が入りきった後は、比較的スムーズに根元まで入った。気遣うようにゆっくりと進めた燃燈だが、容赦なく貫いた。決して、穿つ事を止めなかった。最奥まで満杯になってしまった感覚に、雲中子がギュッと目を閉じる。眦から、生理的な涙が零れる。

「動くぞ。もうこちらも我慢が利かない」
「あ、ああ! 待って――うあ、あ」

 燃燈が一度腰を揺さぶってから、抽挿を開始した。その動きは荒々しく、まるで犯すかのように、雲中子を貪っている。雲中子の片方の太股を持ち上げ、もう一方の手では腰を引き寄せて、激しく燃燈が打ち付ける。そうされると引きつるような痛みと――強い快楽が襲いかかってきて、雲中子は息をする事にすら必死になった。

「あ、あ……く、ッっ、ん、ぅァ……――ああ! 待って、そこは嫌だ」

 雲中子の中の感じる場所を、意地悪く燃燈が突き上げる。そこばかり嬲るように強く突かれると、雲中子の頭が真っ白になる。

「ダメ、ダメだ。うあ、あ、燃燈……ああああ!!」

 そのまま内部を刺激されて、雲中子は前から放った。しかし燃燈の動きは止まらない。

「やぁ、ァ、まだ、待ってくれ、うあ、あ、燃燈、燃燈!」
「余裕が無いお前というのも新鮮だな。征服欲が煽られる」
「あ、あ、もう無理、ぃ、ぅ――ああああ……!!」

 そのままその夜雲中子は、燃燈に抱き潰されたのだった。