W:運命の番い<2>




 獰猛な瞳をした燃燈は、引き裂くように雲中子の服を全て開けた。
 燃燈の指先が、雲中子の肌を這う。そうされると、触れられるだけで、雲中子の体の熱もまた酷くなり始めた。そう思った直後、燃燈が雲中子のうなじを噛んだ。瞬間、雲中子の側からも理性が消えた。

「あ……」

 じわりじわりと雲中子の体の内側から、αとの性交渉を易くする体液が零れ始める。それは燃燈が雲中子のうなじを噛む度に、そして舐めては、再び噛みつく度に、溢れていった。

「あ、あ、あ」

 痛みは無い。代わりに、噛まれる度に、尋常では無い快楽がせり上がってくる。

「ああァ――!!」

 うなじを再度強く噛まれた瞬間、それだけで雲中子は放った。抑制剤の効果が出ていない。番い同士の交わりでは、事前の抑制剤は効果を失う。しかしそんな理屈を、既に雲中子は思い出せなくなっていた。

 飛び散った雲中子の白液が、燃燈のひきしまった腹部を濡らす。雲中子に触れているだけで、既にこちらも昂ぶっていた。張り詰めた巨大な剛直の先端を、迷わず燃燈は雲中子の後孔へと宛がう。そしてそのまま一気に貫いた。

 始めて他者に穿たれる感覚に、必死で泣きながら息をしつつ、雲中子が背を撓らせる。そんな雲中子の体に両腕を回した燃燈は、より深くグッと陰茎を進めた。膝を折った雲中子に覆い被さった状態で、燃燈は根元までを突き立てる。

「あああ、あ、あ……や、っ、息が出来な――ああああ!」

 燃燈の肉茎から、白液が放たれる。ビクビクと脈動する巨大な質量が、雲中子の中を精液で染め上げていく。長い間、燃燈は射精し、結果二人の結合箇所からは白い液が零れ落ちた。獣のような一度目の交わりを終え、燃燈が荒く吐息する。体内を染め上げられた雲中子は、必死で燃燈にしがみついていた。

 僅かに理性を取り戻した燃燈は、しかしもう、雲中子を逃がしてやる自信など何処にも無い。そんな余裕は欠如したままだ。再び雲中子のうなじを舐める。

「ひ、ぁ! ひゃっ、う、うあ」

 交わったままで、燃燈の陰茎が硬度を取り戻す。

「動くぞ。悪いな、余裕が無いんだ」
「ああああああああああ!」

 燃燈が今度は激しく雲中子の体を貪り始めた。肌と肌がぶつかる音が響き、先程燃燈が放ったものと雲中子の体液が混じった水音と共に室内を埋めていく。雲中子の右の太股を持ち上げた燃燈が、斜めに貫くと、雲中子の感じる箇所に燃燈の先端がダイレクトに当たり、尋常では無い快楽が響いてきて、雲中子はもう泣く事しか出来なくなった。

 太く長く硬いもので、激しく抽挿される度、雲中子は自分の体が自分のものでは無いような恐怖に駆られた。けれど、それが嫌では無い。燃燈と一つになれた事、繋がっている事が、無性に幸福感を齎す。

「あ、ああ……っ、あ……あ、ぅ、ひぁア!!」

 雲中子は、思わず燃燈の背に爪を立てた。伸ばしているわけでは無く、よく整っている爪だが、つい力がこもった結果だ。その小さな痛みに、燃燈が舌打ちする。ただでさえ理性が再び断絶しそうだったわけだが――ブツンとかき消えた。煽られているような心地になった。杏の匂いがより深く濃く変化し、燃燈には室内中が甘く感じられさえする状況下でもある。

「あ、あ、ダメ――っ、イく……あああ!」

 その後、一際強く突き上げられた瞬間、雲中子が前から放った。同時に内部でも果てる。それが思いっきり燃燈の陰茎を締め付ける結果となり、再び燃燈も放った。今度の射精も長い。雲中子は熱い飛沫を、内側で感じながら受け止めていた。

「あ、ハ……っ、ぅ……」

 ぐったりとしている雲中子を、燃燈がじっと見据える。全く体の熱が退かない。それは雲中子も同様だった。一度陰茎を引き抜いてから、燃燈が雲中子を抱き起こす。そしてうなじを噛むと、雲中子がすすり泣いた。気持ちが良すぎて、体がおかしい。

「燃燈……っ、う」
「辛いか? 悪いな」
「違う、私は……ン」

 好きだと、雲中子が口走りそうになった時、燃燈が雲中子の唇を奪った。そのまま舌を挿入し、深く深く口腔を貪る。

「今は何も聞きたくはない。もう、止められん」

 ――この日。
 いいや、夜が明け、次の昼が来てもなお、そうして次に月が昇り、沈むまで。
 約三日間、二人は交わり続けたのだった。