【十八】地獄以外は無い(SIDE:リアス)
――どうやって捨てようか、と、考えていたが、ゴミ捨て場が見つかった。
なんでも? 既に天国は存在するらしい? が?
天国になんか行かせてやると思っているとは。行き先は、地獄一択だと分からないほど蒙昧としているとは。これだから物語想像者など、たかがしれていると言うほかない。
「どういう関係だ?」
「無関係です」
「また嘘をつくのか。学ばないのだな」
鞭を振るえば、ムメイが呻いた。跪かせて、何度も何度も俺は鞭打つ。
蒙昧しているといえば、現皇帝の父上と皇太子の兄上も大概だ。
このご落胤などと言われて俺が見つけた末の第三皇子を、帝国皇族に迎えるなどと言っている。王国の驚異をなんだと思っているのか。甘いあの二人も、時期に俺はあの世に送るつもりだ。しかし今は、この末の愚弟の処分が先だ。
「当ててやろうか?」
「……ッ」
「恋仲なのだろう?」
毎朝毎夕、あの者がムメイを恋焦がれるように見ていた事には、実を言えば前から気がついていた。身元もとっくに探らせてある。セギという名の、新進気鋭の物語想像者らしい。
「違……」
「また嘘か?」
「本当に、違――」
「違う? では、奴の片思いか? それは尚更傑作だ。良い事を思いついたぞ」
俺は一人で吹き出した。
「あやつの話によれば、あいつの家がお前の天国なのだろう? ならば、気が変わった。あの世はそことしよう。天国を地獄とすれば良い。どちらもあの世、すぐに叶えられる」
そう言って鞭打てば、ムメイが崩折れた。俺はそのまま拷問部屋の棚の前へと向かう。二段目の棚には、快楽拷問用の薬品と玩具が入っている。アンプルと注射器を取り出して、俺はムメイの前に立った。
「!」
ムメイの首に針を突き立てる。
「ぁ……」
媚薬だ。
「さながら俺は、愛を交わす恋人達にとっての天使だな。送り届けよう、お前の地獄に」