【二十】天国か地獄か?(SIDE:セギ)
家に帰ると鍵が空いていて、俺は嫌な予感を覚えつつ、中へと入った。
「……」
「やぁ、神様」
俺の家のソファで、シックスナイン体勢の、リアスとシノン。
シノンがリアスのものを、熱心に舐めており、その後孔を指でグチュグチュとリアスが弄っている。俺を神様と呼んでニヤニヤ笑ったのはリアスだ。ベルトを緩めて、下衣をわずかに下ろした姿だ。一方のシノンは、シャツだけ羽織った状態で、恍惚とした表情をしている。
「あ、あ、っ、ふぅッ」
「随分と上手くなってきたな、シノン」
「あ、ハ」
「神様にじっくり見てもらうと良い」
「フ、んン――っッ」
まず俺は現実逃避した。
これは俗に言う、NTRである。俺が抱いた時、シノンは初体験だったのだから、俺が寝取ったわけではないだろう。自分を主人公としなければ、男前が寝取られて快楽堕ちして泣いているというのは――言っては悪いが、俺はそこそこ好きだ。
しかし俺自身と、その好きな相手であるシノンの問題だ。沸々と怒りがわいてくる。
「で? ここが天国なのだろう? 神様、幸せか?」
「――シノンを置いて出て行け」
「ああ、そのつもりだ。ここに捨てる。次ぎにムメイがこのエリアーデの街から帝国へ一歩でも足を踏み入れたら、今度はその首を切り落として、こちらへ届けるとも決めている」
「生涯帝国には返さない」
「それを期待しよう」
リアスはそう言ってから、荒く吐息した。射精した様子で、シノンが苦しそうに咳き込んでいる。
「では、な」
清浄魔術で体を綺麗にし、服を着直したリアスが、シノンをソファに置き去りにして立ち上がった。俺の隣を歩いて出て行く。俺は不愉快さに吐き気すら覚えながら、扉を閉めて鍵をかけた。
「シノン」
「……」
「大丈夫か? いや、愚問だな」
歩み寄って、俺はぐったりとしているシノンを見た。陰茎の根元には、輪がはめられている。張り詰めているその先端からは、タラタラと液が溢れている。俺がそれを外した瞬間、どろどろと白液が出た。
「う、あ」
「シノン?」
「あ、あ、熱い、や、あ、あああ、あ……兄上、もうやめ」
「兄上?」
「リアス兄上、やめ、やめてくれ」
「……鬼畜すぎるだろ。安心しろ、もうやつはいない。シノン、俺を見ろ」
「……あ、あ」
「シノン。ここにいるのは、俺だ。もう、大丈夫だから」
俺が優しく髪を撫でていると、シノンの瞳に、僅かに光が宿った。
そして――気づいたように俺を見ると、シノンが息を飲んだ。
「神様……」
「セギで良いって言ってるだろ」
「……――あ、あああ……見ないでくれ、や、嫌だ」
「いいから、大丈夫だって言ってるだろ」
起き上がって逃れようとしたシノンを、俺は正面から抱きしめた。すると俺の腕の中で、ガクガクとシノンが震えた。
「あ、あ、セギ……」
「そ。セギ」
「俺、っ、あ、ああ、体が熱、う……ああああ」
「なんか盛られてんだな」
俺がシノンの耳の後ろを撫でた瞬間、再び彼の陰茎が持ち上がったのが分かった。
「や、や、抱いて」
「――言うように覚えこまされたのか?」
「抱いて、あ、あ、あああ」
「誰に抱いて欲しいんだ?」
「や、あ――あああ」
何やら様子がおかしいのは、分かった。だが辛そうな媚薬をとりあえず抜いてやる事に決める。治癒魔術を展開しつつ、俺はシノンを抱き寄せて、寝室へと移動した。
この状況で、俺はリアスを鬼畜だと罵りきれないと思うのは、シノンを見てしっかり俺もまた反応してしまったからである。可哀想だとは思うのだ。そもそも、シノンは俺を好きではないのだろうし。だが――俺は、好きだ。そしてシノンが欲しい。